質問主意書

第87回国会(常会)

答弁書


答弁書第一六号

内閣参質八七第一六号

  昭和五十四年五月十八日

内閣総理大臣 大平 正芳   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員喜屋武眞榮君提出沖繩県の教育の諸問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員喜屋武眞榮君提出沖繩県の教育の諸問題に関する質問に対する答弁書

一について

 沖繩県においては、不良鉄筋校舎の改築を計画的に進めており、政府としては、それに対応した助成を行うことによりその促進を図つている。
 また、解体撤去費についても、沖繩県の特殊事情にかんがみ、昭和五十四年度から国庫補助の対象とすることとしている。
 なお、改築事業の国庫補助については、他の都道府県の場合も新増築事業の国庫補助と異なる補助率によつており、沖繩県に係る現行の補助率の引上げを行うことは考えていない。

二について

 沖繩県における提供施設に係る代替借用校地の購入費については、国庫補助を行つているが、その他の一般借用校地の購入費については、他の都道府県との均衡上からも国庫補助を行う考えはない。

三について

 政府としては、沖繩県の教育の振興を含む振興開発の推進と日米安全保障条約の目的達成との調和を図りつつ、沖繩振興開発計画の趣旨に沿い、さきに日米安全保障協議委員会において了承された施設及び区域の整理統合計画の実施を図つているところであるが、今後とも、その推進に努めていく考えである。

四について

(1) 政府としては、米軍送油管が設置されていることによる周辺住民の不安を解消するため、米軍送油管区域の返還について米側と協議を行つた結果、第十六回日米安全保障協議委員会において陸軍貯油施設(送油管区域)の大半の部分につき、移設をしないで返還し、又は移設措置とその実施に係る合意の成立後返還するとの計画が、それぞれ了承され、現在、具体的な移設の条件等について米側との間で調整を行い、逐次移設工事を実施しているところであり、今後とも、その推進に努め、早期返還を図る考えである。
(2) 沖繩県における埋没不発弾等については、特に地元の関係機関の職員から成る沖繩不発弾等対策協議会を設けて、地元住民からの不発弾等の埋没状況についての情報収集を行い、これに基づいて計画的な探査・発掘・処理を実施している。そのうち学校関係では、最近、沖繩県立糸満高等学校敷地下の壕内の不発弾等の探査・発掘・処理を行つた。
 今後は、広報活動を更に充実し、埋没不発弾等の情報のは握に一層努力してまいりたい。

五について

 政府としては、米軍の使用する飛行場等の周辺にある学校に係るその航空機の離陸、着陸等により生ずる音響が、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律に基づき定められている音響の強度及びひん度の限度を超える場合には、同法に基づき、その音響を防止し、又は軽減する工事を行う地方公共団体等に対し、その費用の全部又は一部を補助することとしている。
 また、政府は米側に対し、米軍が飛行場等を使用するに当たつては、周辺住民に及ぼす騒音の軽減について配慮するよう申し入れているところであり、米軍もこの趣旨に沿つてできる限りの措置を講じているものと承知している。

六について

 沖繩県においては、高等学校の計画的な整備を進めており、政府としては、従来から、これに対応して特別の助成措置を講じてきており、今後とも、その整備の促進を図つてまいりたい。

七について

 沖繩県における学卒者に対する職業訓練については、昭和五十四年度は地域における訓練需要等を十分勘案し、定員六百人の規模で実施することとしている。
 今後とも、訓練受講希望者数、希望訓練科等地域の職業訓練需要の的確なは握に努め、効率的に職業訓練を実施してまいりたい。
 また、このような職業訓練生を含め、沖繩県の若年者の雇用の促進を図るため、積極的に本土への広域職業紹介を推進することとし、沖繩県向けの優良求人を確保するとともに、きめ細かい職業指導、職業紹介を実施してまいりたい。

八について

 米軍は、日米合同委員会の合意により、北部訓練場の使用に当たつて、特別保護鳥及びその生息地に対し損害を与えないよう予防措置をとることとされており、これを遵守しているものと承知している。

九について

(1) 憲法第二十六条第二項後段に定める義務教育の無償の意義については、子女の保護者に対しその子女に普通教育を受けさせるにつき、授業料を徴収しないことと解している。
(2) 副読本等の副教材については、その使用は市町村教育委員会等の判断に委ねられており、種類も多種多様のものがあるので、無償化を図ることは考えていない。

十について

 公立幼稚園職員の給与費について国庫補助することは、公立高等学校職員の給与費の措置との関係を考慮しなければならないこと等の問題があり、考えていない。

十一について

 学校給食の経費については、学校の設置者と保護者との間で責任を分担する考えの下に、施設設備費及び職員給与費は設置者が負担し、その残余(主として食材料費)は保護者が負担することを原則としている。
 なお、このことは、一般の国民生活において食費が個人の負担となつていることからも妥当であると考える。

十二及び十三について

 学級編制及び教職員定数の基準については、これまで、数次にわたる年次計画によりその改善を図つてきたところである。今後の学級編制及び教職員定数の基準については、昭和五十三年五月一日現在で行つた悉皆調査の集計結果、財政状況その他諸般の事情を踏まえ、慎重に検討しているところである。
 また、教職員の宿日直に代えて学校に警備員を配置するかどうかについては、当該学校を設置・管理する地方公共団体の判断によるものであり、政府としては、教職員の宿日直が廃止される場合の措置として、昭和四十三年度から市町村を対象にして学校の施設設備の管理のための防犯用及び防火用の設備の整備に要する経費の一部を国庫補助している。

十四について

(イ)及び(ロ) 共済年金及び恩給については、毎年その改善に努め、昭和四十八年度からは現職公務員の給与の改定を指標として増額改定を行つているところであるので、増額改定の確保という点からみれば、御指摘のような改定の方式をあえて法律上規定する必要性はないと考えられる。
 共済年金及び恩給の支給について現行の年四回支給を毎月支給に改めることは、事務処理能力のほか、他の公的年金制度との均衡等種々の問題があり、現段階で実施することは極めて困難である。
(ハ) 遺族年金の給付水準の実質的改善については、公的年金制度共通の問題であり、また、財源に対する影響も大きいので、今後における遺族年金の在り方のひとつの問題として、今後、なお慎重に検討してまいりたい。
 なお、現行制度では、組合員期間一年以上の者が在職中に死亡した場合には遺族年金を支給することとしており、御指摘のような制度を新設することはできない。
(ニ) 老年者年金特別控除が適用される老年者の年齢の引下げについては、現行の年齢(六十五歳以上)は、老人福祉法の適用年齢等との均衡からみて妥当なものと考えられ、また、老年者年金特別控除の額(現行七十八万円)は、この特別控除が適用される者の所得税の課されない限度額(例えば、公的年金等以外の所得のない老年者夫婦の場合には、その収入金額が約二百二十万円以下)の水準等を勘案すれば、これを引き上げる必要性は認められない。