質問主意書

第85回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第六号

内閣参質八五第六号

  昭和五十三年十一月七日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員藤原房雄君提出宮城県沖地震及び地震災害対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員藤原房雄君提出宮城県沖地震及び地震災害対策に関する質問に対する答弁書

一について

 宅地造成等規制法(昭和三十六年法律第百九十一号)では、同法施行前に造成された宅地で同法施行後宅地造成工事規制区域として指定された地区内にあるものについてもその安全保持義務が課されており、例年、災害を生ずるおそれのある宅地については現地点検を実施するよう都道府県知事等を指導しているところである。都道府県知事等は、同法に基づき宅地所有者等に対して必要に応じて改善のための勧告又は改善命令を行えることとなつており、これらの措置により宅地災害の未然防止を図つているところである。
 今後とも、これらの措置の強化を図るとともに、住宅金融公庫の宅地防災工事資金融資制度の活用等を行うことにより、宅地災害の防止に努めてまいりたい。

二について

 現行の建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)及び同法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)においても地盤の状況に応じた設計を義務付けることにより建築物の耐震性の確保を図つているところであるが、近年、ピロティー型の建築物等地震に対する余力の少ない建築物が増加しているため、これらが今回の地震において軟弱地盤地域で地震力に耐えられなくなり被害を生じたものと考えられる。政府としては、この経験を踏まえて、今後、特に建築物に余力を持たせること、地盤の状況をよりきめ細かく考慮すること等の観点から、耐震設計の技術基準の改正について検討を進めてまいりたい。

三について

 建築物が地震に対して安全であるためには、適正な設計とともに適正な施工が不可欠であるため、これまでも建築主事等が建築基準法に基づき必要な検査等を実施してきたところであるが、今後ともこの充実を図るとともに、工事監理者等関係者に対する指導を強化する方針である。

四について

 防災のための集団移転促進事業については、移転促進区域、移転戸数等について要件が定められているが、この要件の緩和については、他の防災に関する財政援助措置との関連、再度災害の防止等の観点から慎重に検討する必要があると考える。
 また、がけ地近接危険住宅移転事業については、現行制度の運用により必要な危険住宅の移転に対応できるものと考える。

五について

 分損担保の問題については、保険制度の原理からして既発生災害に遡及適用することは考えられないが、今後の問題としては、契約者の保険料負担、国の財政力、損害保険業界の担保力等を考慮して慎重に検討を行つているところである。
 災害による住宅被害の救済制度としては、住宅金融公庫の被災住宅の復旧及び補修に係る資金についての貸付制度の外、一定の災害により滅失した住宅に居住していた低額所得者のために公営住宅を建設する災害公営住宅制度等がある。住宅金融公庫の融資については、本年九月災害復興住宅資金貸付けの貸付限度額を引き上げたところであり、今後とも災害による住宅の被害対策として、これらの制度の的確な活用を図つてまいりたい。

六について

 災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律(昭和四十八年法律第八十二号)に基づく災害援護資金の貸付けは、被災世帯の生活の立て直しに資するためのものであり、その限度額は、かかる見地から定めたものである。
 なお、災害援護資金の貸付けについては、その限度額及び対象となる世帯の所得の基準額につき、本年三月及び七月にそれぞれ引上げを行つたところであり、当面制度の改正は考えていない。