質問主意書

第84回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五号

内閣参質八四第一五号

  昭和五十三年三月二十二日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員玉置和郎君提出尖閣列島の帰属に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員玉置和郎君提出尖閣列島の帰属に関する質問に対する答弁書

一について

(一) 尖閣諸島は、我が国固有の領土であり、我が国は、現にこれを実効的に支配している。したがつて、尖閣諸島の領有権についていずれかの国と話合いを行うべき筋合いのものではなく、政府としても今そのような話合いをいずれかの国と行う必要があるとは考えていない。
(二) 三月十日の参議院予算委員会における外務大臣の発言は、中華人民共和国の方から我が国に対して何らかの異論を申し入れてくれば、我が国は、中華人民共和国に対し、尖閣諸島が我が国の領土であることを明確に示してその誤解を解き、その異論の不当性を明らかにする必要があるとの趣旨を述べたものであり、我が方から中華人民共和国に対し尖閣諸島の領有権についてすすんで話合いの申入れを行うというような意図を表明したものではない。
(三) なお、以上に述べたほか、日中平和友好条約は、日中両国間の平和友好関係を強固にし、発展させることを目的とするものであるから、この交渉に際して、日本の固有の領土であり、現に実効的に支配している領土に関して言及することは、無用であるばかりでなく、得策でないと考える。

二について

(一) 御指摘の文献(「釣魚台事件真相」)は、香港の民間出版社により出版されたものであり、中華人民共和国政府の公的見解とは直接関係のあるものではない。両国の国交が正常化されて以降、中華人民共和国政府と関係のある文献その他にこの種の誤りを発見した場合には、これまでも機会をとらえ、常に注意を喚起してきている。
(二) 我が国固有の領土である尖閣諸島に対する中華人民共和国の主張は、全く根拠のないものである。したがつて、そもそも御指摘のような約束をさせるまでもないことである。

三について

(一) 尖閣諸島が、我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も明白であり、かかる事実を無視して仮に尖閣諸島の領有権の主張を行うものがあつても、政府としては、その真意をただすまでもなく、これを認め得ないことは当然である。
(二) 他方、政府としては、従来より、尖閣諸島が我が国固有の領土であることを内外に宣明し、また必要ある場合には、かかる事実について誤解が生じないよう所要の措置を講じてきているところであり、今後ともこの方針には変わりはない。
(三) なお、民間組織たる交流協会は、我が国を代表する政府機関としての性格は有しないが、尖閣諸島が我が国固有の領土たる事実についての誤つた認識を改めさせる等のため、同協会が台湾に対し所要の説明や反論を行う等のことについては、政府としてこれを妨げる考えはない。