質問主意書

第84回国会(常会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質八四第八号

  昭和五十三年二月十日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員安恒良一君提出三菱金属株式会社・日本電子金属株式会社の労使紛争に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員安恒良一君提出三菱金属株式会社・日本電子金属株式会社の労使紛争に関する質問に対する答弁書

一について

 三菱金属株式会社(以下「三菱金属」という。)は、現在、日本電子金属株式会社(以下「日本電子金属」という。)の株式の百パーセントを保有していると承知している。
 また、役員関係については、両社の役員を兼務している者は二名であると承知している。
 なお、三菱金属と日本電子金属との取引資金関係については、三菱金属が日本電子金属に対し、債務保証及び融資を行つていると承知している。

二について

 警視庁は、昭和五十二年十二月十三日、国民春闘共闘会議・東京春闘共闘会議が行つた「一二・一三秋闘第四次統一行動」に際し、総評全国金属労働組合東京地方本部日本電子金属支部(以下「全金日本電子金属支部」という。)の組合員等約百二十人が、同日九時三十分ごろ、東京都千代田区大手町一―五―二所在の三菱金属本社に押しかけ、同社社長に面会を求め、警備に当たつていた同社の管理者等の制止を振り切り、これに体当たりするなどの暴行を加え、更に事務所入口ドア、ロッカー等に突き当たるなどして、これらの物を損壊した事件につき、昭和五十三年一月十一日、被疑者四人を、建造物侵入罪及び暴力行為等処罰ニ関スル法律違反で逮捕した。

三について

 政府は、労働運動に関し不介入の方針であることはいうまでもない。
 しかしながら、労働運動に伴うものであると否とを問わず、違法行為が行われる場合は、法の定めるところに従つて必要な取締りを行うことは、警察の責務である。
 本件の場合、当日(昭和五十二年十二月十三日)、全金日本電子金属支部の組合員等約百二十人に及ぶ多数の行う集団行動に伴い、違法事案の発生が予想されたので、警視庁は、二人の警察官を派遣し、警戒に当たらせたものであり、警察が組合員を挑発した事実はない。

四について

 東京都地方労働委員会に対する不当労働行為救済申立てについては、全金日本電子金属支部等から、昭和五十三年一月十八日には、三菱金属を被申立人として、同社が日本電子金属の小金井工場の閉鎖問題に関する団体交渉を拒否したとして救済申立てが行われ、また、同月二十三日には、三菱金属及び日本電子金属を被申立人として、両社が日本電子金属の小金井工場の閉鎖等に関連して労働組合の運営に対する支配介入を行つたとして救済申立てが行われており、両事件とも、現在、同地方労働委員会において審問前の手続を進めているところであると聞いている。

五について

 本件紛争は、昭和五十二年十月五日、会社が約二十三億円に達する累積赤字と内外経済環境の変化等を理由として、同社小金井工場を閉鎖し、昭和五十三年一月一日を期して東洋シリコン株式会社と合体して新会社を設立し、同工場の従業員は、千葉県野田市の新会社の工場に移動させるとの「シリコン事業の再編方針」を全金日本電子金属支部に提示したことに起因するものと聞いている。
 政府としては、労使が雇用問題をはじめとする今日の厳しい情勢を十分認識し、相互信頼の上に立つて話合いを続け、問題の合理的な解決を図ることを期待しつつ、東京都当局とも連絡の上、関係者に対して必要な助言、指導等を行つてまいる所存である。