質問主意書

第84回国会(常会)

質問主意書


質問第二三号

水資源の開発と利用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十三年六月十六日

藤原 房雄   


       参議院議長 安井 謙 殿


   水資源の開発と利用に関する質問主意書

 水は、日常生活や産業活動に欠かせない資源であり、しかも有限である。昭和五十二年の三月、アルゼンチンのマルデルプラタで開催された国連水会議においても、世界の限りある水資源の開発、管理のあり方等について討議されたところであり、水問題はまさしく世界的な問題となつている。
 わが国は世界でも有数な多雨地帯に属し、水資源は平均的には豊かにみえる。しかし、人口一人当たりの降水量は世界平均及びアメリカ、ソ連などの約五分の一にすぎず、決して恵まれているとはいえない。
 しかも、降雨期が季節的にかたより、国土の面積は小さく、地形が急峻で河川の流路が短いため、年間を通じて取水できる流量は比較的に少ない。
 さらに、わが国の水需要は、経済の発展、生活水準の向上等により増大してきている。特に都市用水の需要の伸びは著しく、首都圏等大都市地域においては、渇水時における安定的供給が困難になつている。昭和四十八年夏の高松、松江等の地方都市及び今回の九州北部地域における給水制限にみられるように、これらの地方都市においても潜在的な水不足のあることが浮彫りにされたといえよう。したがつて今後とも水資源を開発し、水利用の合理化等を促進することは重要な課題である。
 以上の観点から次の諸点について質問する。

一 水価値観の高揚の必要性について

 今日、省資源、省エネルギー対策の緊急性が叫ばれているが、水資源の有限性、水の貴重さ等水に対する価値観を高めることの必要性がある。特に膨張の著しい都市用水については、水源としてのダムや給配水施設等、長期的にわたる年月と巨額な設備投資によつて生産される高価な資源であることを認識するよう一般に啓蒙を行い、水の浪費を防止することについて国民の協力を求める必要があると考えるが、これに対する具体的な施策を講じてきているか。もし講じていれば、その内容、方法等を明確にご説明願いたい。

二 水需給に関する長期計画の早期策定等について

(1) 水は限られた資源として、将来、社会、経済発展の制約要因となるものと思われる。水を無視した都市の膨張は、そういつまでも許されていいはずはない。したがつて、水が国民生活及び国民経済の基本的資源であることにかんがみ、既成の過大都市に水を集めるのではなく、むしろ水のあるところに人口、産業を誘導し集積するなど、水資源の面からガイドラインとなるべき長期的な全国水需給計画及び地域的水需給計画を早急に策定すべきであり、全国計画は閣議決定すべきである。
 このことは、昭和五十二年五月、行政管理庁が「水資源の利用に関する行政監察結果に基づく勧告」の中で指摘しているところであり、また、すでに水資源供給可能量調査、全国水需給動態調査など水開発利用に関する調査も実施されているところであり、その内容を公表すべきである。
(2) 現在、長期的な水需給に関する計画としては、水資源開発促進法に基づく、利根川、淀川など指定水系について水資源開発基本計画が策定されてきたが、全国的な視点による長期的な水供給計画は前にふれた通り未だ策定されていない。しかしながら冒頭でも述べた通り、水問題は、もはや大都市地域のみならず、全国的な問題となつている。したがつて、第三次全国総合開発計画、国土利用計画等国土の開発利用に関する諸計画との適合性を図りながら、水資源の需給に関する総合的かつ基本的な計画を策定して、総合的な施策を推進すべきと考える。それ故に、水資源開発促進法に基づく指定水系の拡大が必要であると思うがどうか。

三 地下水の利用について

 地下水は、取水が容易で、しかも良質であるため、ともすれば安易に利用されてきた。特に都市用水における地下水利用は、その割合が漸減してはきているものの、絶対量としては、昭和五十年には、四十年の約一・五倍程度にまで伸びている。
 しかし、この地下水利用の増大は、地域によつては過度の汲み上げとなり、地盤沈下、地下水の塩水化、地下水位の低下等の障害を惹起しており、全国で約五〇地域が地盤沈下等の障害問題を起している。
 このため、工業用水法、建築物用地下水の採取の規制に関する法律等によつて、地下水採取規制が行われている。しかし、今後、地盤沈下等の地下水障害を防止していくためには、地下水採取の規制措置を強化しつつ、代替水源の確保、水利用の合理化を図るなど、総合的な地下水対策の推進を図り、地下水の利用の適正化に努めることが必要である。具体的な対策を説明願いたい。

四 農業用水の合理化の推進について

 わが国の年間水使用量の約六割が、農業用水として使用されており、今後の需要予測でも全国的には、ある程度の増加が見込まれている。しかし、大都市周辺を中心に農地の宅地化が進み、水需要が減少している地域も多く見うけられる。このような都市化の著しい地域においては、上水、工業用水のような都市用水は逆に増大を招き、一般に需要逼迫地域である。
 建設省は、昭和四十七年に「農業用水の転用に関する取り扱いについて」という河川局長通達を出し、農業用水の転用の促進に努めている。農林省も同年から土地改良法のなかで都道府県営事業として農業用水合理化事業を実施しているとしている。
 両省の農業用水転用水転用事業箇所名、転用水量、転用先並びに転用を進めるうえでの問題点はなにか。
 また、現在、農業用水の合理化、転用は必ずしも十分な進展をみていないといわれており、さらに積極的な転用促進の措置を講じていく必要があると思うがどうか。

五 廃水の再生利用について

  近年、下水処理水をはじめとする再生水の利用が注目されるようになつている。
公共下水道、流域下水道からの処理水の利用法として、開放系多種利用方式と直接再利用方式、及び閉鎖系多重利用方式といつた類型に分けることができるが、いずれの場合も緒についたばかりである。
 今後の水需給安定のための有力な手段となるものだけに、その促進については一層の努力が必要とされる。これには、再処理水の水質問題、高コスト問題等解決されなければならぬ問題が多い。
 このためには、上水道及び工業用水道の料金体系のあり方に検討を加えるとともに、水需給の逼迫地域における再利用の義務づけ等に関する法制度の整備などの問題が残るところであるが、すでに実用化されている直接再利用方式並びに閉鎖系多重利用方式のほか、昭和五十二年度から建設省で実施する「荒川調整池緊急水利用高度化事業」等を見たうえで、積極的に取り組む姿勢が必要であると思われるがどうか。
 また現在の法制だけでは問題が生ずると思われるので、新たな法制化に向つて検討しておく必要があると思うがその用意はあるかどうか伺いたい。

  右質問する。