質問主意書

第84回国会(常会)

質問主意書


質問第一四号

身体障害者にかかわる年金制度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十三年三月六日

前島 英三郎   


       参議院議長 安井 謙 殿


   身体障害者にかかわる年金制度に関する質問主意書

 今国会において、年金に関する論議が盛んに交わされている。わたしは、早急に年金制度の抜本的改善を図るとともに、それまでの間の施策として、当面、五十三年度において、老齢福祉年金を少なくとも月額二万円まで引き上げる等の措置をとるべきと考えるものであるが、論議の重複をさけ、障害者にかかわる年金制度について以下の諸点を質問するので、懇切なる答弁をされたい。

一 障害年金に対する基本姿勢に関して

 政府は、年金制度の抜本的改善を図るため、年金制度基本構想懇談会、社会保障制度審議会等の意見を聞いて検討中であるとしている。しかるに、昨年十二月、年金制度基本構想懇談会は「中間意見の要約」を発表し、また、社会保障制度審議会は「皆年金下の新年金体系」を建議した。これらの中において、障害年金については意見を述べておらず、特に社会保障制度審議会は「今回の建議においては障害年金についてふれなかつたが、検討を要する問題である」と付言している。ついては、年金制度の抜本的改善を図るにあたり、障害年金の在り方をいかに考えるか、また、今後いかに検討していく方針であるか、政府の基本姿勢を明らかにされたい。

二 障害福祉年金の性格及び給付額の増額に関して

 政府は、福祉年金及び五年年金等の経過的な年金について、今年いつぱいをかけて検討を加え改善を図る旨、衆議院予算委員会においてくりかえし答弁している。これに関連して次の二点につき伺いたい。

(1) 福祉年金は、経過的又は補完的な性格の年金とされているが、障害福祉年金についてはその考え方を改めるべきと考える。障害福祉年金の受給者は、その大部分が収入のない人々である。しかも、年齢は各層に広がつており、世帯主である人も少なくない。また、障害のために余分な支出を強いられる部分もある。このような実態を見れば、これらの人々は最も年金の支えを必要としていることは明らかである。加えて、将来において年金制度が成熟した後であつてもこうした状況におかれる人々がなくなることはない。以上の見地から、障害福祉年金は、基礎的年金の性格を持つものとして取扱うべきものと考えるが、政府の見解を示されたい。
(2) 右の見地から、障害福祉年金の給付額を大幅に増額すべきと考える。政府の調査においても、昭和五十二年四月における標準生計費は、東京の場合、一人世帯で六万五千円である。これに対し、障害福祉年金は、一級の場合その三分の一、二級の場合は四分の一以下という低額である。政府は、来年度において十パーセントの増額を図るとしているが、その程度ではとうてい最低限の生活をさえ維持することは出来ない。受給者の生活実態に鑑み、当面、拠出制の障害年金に近い水準まで引き上げる考えはないか。また、現行の給付額算出の根拠をあわせて示されたい。

三 福祉年金を受けられない人々の救済措置に関して

 拠出制の障害年金受給者と同じ障害の程度にある二十歳以上の人で、拠出制の年金に加入せず、かつ、障害福祉年金の受給要件を満たさないため、どこからも給付を受けていない人が少なからず存在している。福祉の見地から、こうした人々の実態を把握し、何らかの救済措置を講ずる必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 支給制限に関して

 障害福祉年金等に定められている所得制限、併給制限等の支給制限は、法目的を実質的に損うようなものであつてはならないと考える。ついては次の三点を伺いたい。

(1) 障害福祉年金の本人所得制限は、受給者の年齢が各層に広がつており、それぞれに自立への努力をしているところであるから、大幅に引き上げるべきと思うが、如何。また、現行の所得制限金額算出の根拠を示されたい。
(2) 現行の所得制限の定めによれば、前年の所得が制限額を超えると一年間支給停止となる。これは、制限額をわずかに超える所得のあつた人が、福祉年金支給停止により、制限額を超えない所得の人に比較してかえつて不利になる。自立のため少しでも多くの所得を得ようと努力する者の意欲を殺ぐことのないよう、所得が制限額を超えた金額の二分の一を福祉年金から減額する等の方法に改善すべきと考えるが、その意思はないか。
(3) 併給制限に関しても右のような問題がある。併給制限の額をさらに引き上げるか、制限の方法を改善する等の措置をとる考えはないか。

五 生活保護との関連について

 障害福祉年金は、生活保護との関係において収入と認定されている。これに対し、生活保護法において福祉年金と同額の障害者加算を行うことによつて補填するという方途が講じられていた。ところが、昭和五十一年一月より、加算額が福祉年金を下まわることとなつた。障害者は、その障害の故に様々な余分の出費を強いられる現状に鑑み、従前通り同額加算とするか、もしくは、障害福祉年金と加算額との差額を収入認定からはずす等の方策を講ずべきと考える。障害補償の観点から政府の見解を伺いたい。

  右質問する。