質問主意書

第83回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

大都市財政の危機打開に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年十二月九日

神谷 信之助   


       参議院議長 安井 謙 殿


   大都市財政の危機打開に関する質問主意書

 地方自治体財政はこの三年来、二兆円をこえる財源不足がつづき、昭和五十三年度も自治省の試算でさえも、三兆円近い不足になるといわれており、地方自治体の財政危機は、ますます深刻なものとなつている。
 指定都市など大都市の財政もまた例外ではない。政府の大企業優先の高度成長下にとりのこされてきた生活環境や教育施設の整備、福祉の充実、大都市交通その他の都市機能の維持など市民のために欠かせない事業にたいする財政需要はいつそう増大している。加えて、「石油危機」以降の人件費、用地費、建設費の膨張と不況対策など支出要因は増大しているにもかかわらず、不況、インフレにともなう税収の急減で、大都市の財政危機も深刻となつている。しかも、最近の円高、不況はこれに拍車をかけている。
 従来から地方自治体の財政構造は、「三割自治」ともいわれてきたように、国と地方の関係でいえば、七割の仕事をする地方が三割の税源しか配分されていないという全く自主財源の保障のない状態におかれてきている。
 こうして、今日の地方財政の危機は、主として政府によつてもたらされたものであることは明白である。したがつて、現在の緊急課題となつているこの危機打開は、政府の責任で行われなければならないことは当然である。以下、つぎの諸点について、政府の明確な見解を求めたい。

一 根本的な解決について

 こうした地方財政危機への政府の対応策は法律にもとづく地方交付税の引上げなど必要な措置をとるのでなく、一部に「返済なし融資」をふくむとはいえ、その大半を借金財政で穴埋めするというその場のがれの糊塗策に終始してきた。しかし、このようなやり方は根本的解決をさけ、巨額の借金をさらに地方自治体に負わせて、危機打開どころか、危機をいつそう激化するものにほかならない。
 この数年来、全国知事会、全国市長会をはじめ多くの地方自治体や団体から、地方行財政制度の改革案が提起されている。わが党も、昭和四十九年「地方財政危機打開のための提案」の発表以来、数次にわたる改革案を示し、今年六月には「日本経済への提言」のなかで「地方自治の復権と拡充、地方財政の確立」を訴え、抜本的改革と当面の緊急対策を提起してきている。

1「地方財政再建緊急措置法」の制定

 国と地方との事務、権限の民主的再配分と、税財源の地方移譲が行われるまでの時限立法として、地方交付税率の四〇%引上げ、超過負担の計画的解消、総合補助金制度の導入、政府資金による地方債引受け率八〇%の引上げ等を骨子とする「地方財政再建緊急措置法」を早急に制定すべきであると考えるがどうか。

2 「地方行財政委員会」の設置

 現在の中央直結型になつている地方行財政のあり方をあらため、税財源の移譲、自主課税権の強化、事務・権限の大幅な地方移譲など、住民本位、地方自治尊重型の地方行財政への転換が必要である。
 そのため、地方自治体代表、国の機関代表、国と地方自治体が推薦する学識経験者の三者同数で構成され、抜本的な改革案を準備し、制度改革と重要施策の立案等を分担する「地方行財政委員会」を早急に設置するつもりはないか。

二 当面の対策について

 さきに、札幌、川崎、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡の各市は、五十三年度の施策にむけて、「大都市財政の実態に即応する財源の拡充についての要望」を発表し、その実現方を訴えている。
 そこで次の事項について政府の対策を具体的にうかがいたい。

1 超過負担の解消と補助基準の適正化

 補助基準単価にかかる超過負担の完全解消をはかるとともに、補助対象の範囲及び基準数量等の補助基準についても社会経済情勢の推移等に即して適正化をはかること。

2 高率国庫補助金制度の確立と実質補助率の引上げ

(イ) ごみ処理施設の整備、市街地高層住宅の建設、小・中学校用地の取得等投資的事業について高率補助金制度を確立すること。
(ロ) 下水道の整備、都市公園の整備は、補助採択の枠を拡大し、実質補助率を引上げること。

3 大都市交通に対する財源措置

(イ) 高速鉄道の総建設費の七〇%相当額を公共負担することとし、その国と地方の負担割合は、街路事業に準じて国三分の二、地方公共団体三分の一とすること。
(ロ) 交通事業への一般会計の補助及び負担金に対しては、国において十分な財政措置を講ずること。

  右質問する。