質問主意書

第82回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質八二第七号

  昭和五十二年十一月八日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員森下昭司君提出特許権等の迅速・適確な付与ならびに特許情報問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員森下昭司君提出特許権等の迅速・適確な付与ならびに特許情報問題に関する質問に対する答弁書

一について

(1) SDC社の日本での事業に関し、関係行政機関が必要な認可申請を受けた事実はない。しかしながら、今後の可能性もあり、また、民間における特許情報の円滑な利用を推進する必要があることにかんがみ、(財)日本特許情報センターに対する機械検索システム開発国庫補助等所要の育成策を講じており、今後とも同センターの拡充強化に努めていく方針である。
(2) (イ)から(ハ)まで 全文公開であることによる検索の困難性については、例えば要部公開とする方法が考えられるが、これが十分な発明の開示といえるか否か等について問題があり、引き続き検討することとしている。写真製版に伴う見にくさの問題については、現行方法を全面的に変更した場合、公報発行期間及びコストとの関係等で問題があり、引き続き検討することとしている。なお、公報の要約の作成については、検討の結果引き続き関係公益法人を指導・育成していくことが現実的解決方法と考えられる。
(ニ) 特許分類問題については、その重要性にかんがみ、分類審査官の増員、分類付与基準の作成等を行つている。
(ホ)及び(ヘ) 同センターは、特許情報の機械検索を中心に民間に対する特許情報提供業務を行つてきたところであるが、今後とも、電算機処理を中心とする特許情報の中核的センターとして発展していくことが必要である。なお、同センターは、最近、電算機の導入等作成期間の短縮に努め、公開特許公報の和文抄録を公報発行後一か月程度で発行している。
(ト) アブストラクトとは、発明の要約のことである。審判の審理に当たつては、願書、図面、明細書等に基づいてその内容をは握しているが、発明の技術内容が難解なもの、明細書の量が膨大なもの等特に必要なものについては、処理促進を図るための補充的な手段として、請求人に対しアブストラクトの提出を求めることとしている。
(チ) 特許公報等の利用については、従来から特許庁及び各地方の閲覧施設において閲覧サービスを行つてきている。他方、同センターにおいては、大量の特許情報から必要な情報を迅速に取り出すことを目的として、特許情報の機械検索業務を行つており、必要な範囲において検索システムの開発及びリスト等の整備に努めている。
(リ) 主に、次のような技術分野(日本特許分類による)を対象に出願四百件(昭和五十一年度実績)について、英文抄録を作成している。
第一二類(金属加工)、第二五(五)類(可塑物の成型加工)、第五九類(一般的電気部品)、第六六類(弁、コック)、第八六(一)~(七)類(土工、土地の保全、建造物の構造等)また、各通商産業局及び地方閲覧施設(都道府県の図書館等百十八か所)において我が国の特許公報類の閲覧サービスを行つている外、中小企業振興事業団においては、(財)日本特許情報センター等を利用して、特に、中小企業者に対し特許情報サービス等を行つている。

二について

(1) 先進主要諸国の例等にかんがみ、当面、特許・実用新案審査期間については二年程度、特許・実用新案審判期間については審判請求日から二年程度を目標としている。昭和五十一年度末における平均要処理期間は、特許・実用新案審査二年六月(昭和五十年度末三年二月)、特許・実用新案審判四年九月(昭和五十年度末五年四月)である。
(2) 昭和五十二年十月末現在の査定不服審判係属件数は、特許二万七千二百七十八件、実用新案一万九千五百七十件であり、このうち昭和四十六年以前の出願の件数は、それぞれ二万千七百七十二件、七千八百八十件である。
(3) 東京高等裁判所に係属中の査定不服審判事件数は、次のとおりである。
特許百九十九件(うち、昭和四十六年以前の出願に係るもの一九九件)、実用新案四十一件(うち、昭和三十九年以前の出願に係るもの二件、昭和四十六年以前の出願に係るもの三六件)、意匠八件、商標十一件である。
(4) 三月程度である。
(5) 昭和五十二年十一月一日現在次の表のとおりである。

図 表

(6) 所要の機構の拡充及び増員、出願人等に対する事前評価・事前調査の徹底による特許・実用新案の出願・審査請求の適正化、事務処理等機械化等である。
(7) 職員研修の拡充強化、審査審判資料整備の拡充、審査基準の統一・整備、業務処理体制の整備等である。
(8) 審査基準説明会は二十三回、工業所有権説明会(一日特許庁)は九回であり、前者は、審査基準を一般に周知徹底させるための説明を内容とし、後者は、工業所有権制度に関する説明及び相談を内容とする。
 なお、開催地は、全国から均等に選定している。
(9) 登録業務の電算機化が遅延したのは、その時点では、漢字処理及びオンライン・システムがまだ十分に開発されていなかつたためである。
 その後の技術の進展に伴い、現在、所要の準備を進めており、昭和五十三年度から本格的に実施していくことを予定している。
(10) 次の表のとおりである。

図 表

(11) 出願等の件数の累増に加え、昭和五十三年度から登録事務処理の機械化を開始するため、電算機の容量を増大する必要が生じたことである。機種の選定は、処理時間の短縮性、各種プログラムへの順応性、設置に必要なスペース等を総合的に勘案し行つた。
(12) 次の表のとおりである。

図 表

(13) 審査官が必要に応じ利用しており、その回数等について統計的は握は行つていない。
(14) 所要の準備が完了し次第速やかに実施し得るようにあらかじめ、金額を定めており、この額は、他の記録書類に関する手数料の水準、その後の物価水準等に基づいている。
(15) 特許法第二十七条第二項にいう磁気テープには、磁気テープに準ずる方法により一定の事項を確実に記録して置くことができる物を含むので、磁気ディスクも含まれる。道路運送車両法第六条の電子情報処理組織には磁気テープ、磁気ディスクが含まれる。
(16) 機械処理のためのプログラムによるチェックが可能となるため、事務を一層正確化することができることとなる外、庁内外へ対するサービス内容が多様化し、その提供も迅速化される。なお、磁気テープによる原簿は、紙原簿に比べて耐久性に乏しいため、原簿保管環境の整備、磁気テープによる副原簿の完備等により対処していくこととしている。
(17) 原簿、特許証、登録料納付書の各様式等の改正について検討を進めている。
(18) 登録原簿を電算機で管理することとした場合に登録事項にミスが生じるのは電算機への入力をミスした場合が考えられる。この場合は特許登録令第四十一条の過失に該当する。ミスの予防については、数段階にわたるチェック体制を整えることとしている。
(19) 次の表のとおりである。

図 表

(20) 特許法第二十七条第一項に規定する特許庁の一部である。
(21) 「氏名」、「名称」、「住所」、「居所」は含まれる。
(22) 適正化指導は、昨年秋以来実施しており、今後とも、この指導により、出願の質が向上し、発明の権利付与の迅速化及び企業における特許管理の効率化が期待される。
(23) 昭和四十九年度以降、漸次データ蓄積、機械検索を行つている。