質問主意書

第80回国会(常会)

答弁書


答弁書第四四号

内閣参質八〇第四四号

  昭和五十二年六月二十一日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員沓脱タケ子君提出公害健康被害補償法の補償給付改善に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員沓脱タケ子君提出公害健康被害補償法の補償給付改善に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 公害健康被害補償制度における障害補償費については、中央公害対策審議会の答申に従い、本制度が裁判による損害填補と同様の性格を持つと同時に、裁判に先立ち、因果関係についての割切りを含め画一定型的要件に従い、迅速に給付を行うものであること等を考慮して給付水準が定められ、また、四日市判決の例にならつて障害等級別の給付率が定められているところである。給付水準及び給付率に関するこの考え方を変更することは考えていない。
(2) 障害補償費及び遺族補償費等については、全労働者の性・年齢階層別平均賃金を基礎として標準給付基礎月額を定めているところであり、現実の男女間の平均賃金に差がある結果として、障害補償費等の額に男女間の差が生ずることは、やむを得ないものと考えている。
(3) 御指摘の過去分の補償については、本制度創設の経緯にかんがみ、給付を行うことは考えていない。

二について

(1) 遺族補償に係る給付水準については、中央公害対策審議会の答申に従い、慰謝料的な要素、当該被認定者が死亡しなかつたとしたら要したであろう生活費の控除の要素等を勘案して定めたものであり、現行の考え方を変更することは考えていない。
(2) 自殺の場合は、一般的には指定疾病に起因する死亡であるとは言い難いが、個々の事例につき慎重に検討して判断すべきものと考えている。

三について

 児童補償手当の額は、指定疾病にかかつた児童の生活上の支障、精神的、肉体的な苦痛等に着目した慰謝料的な要素を中心とする給付にふさわしい額として、社会保障制度における給付の水準を勘案して定めているところであり、このような現行の考え方を変更することは考えていない。

四について

 療養の給付を受ける者の医療上必要な入院に際し、支障が生ずることはないものと考えている。

五について

(1) 慰謝料については、本制度にもある程度その要素を折り込み、給付の種類及び水準を設定しているところであるが、精神的損害の評価が困難であることにかんがみ、慰謝料を補償給付の種類に加え、定型的な給付を行うことは考えていない。
(2) 移転費用の補償については、定型化に困難な問題があること等のため、新たな給付として追加することは考えていない。

六について

 本制度に基づく補償給付の生活保護における取扱いについては、給付の趣旨、類似の給付の取扱い等を勘案し、療養手当及び葬祭料はその全部を、遺族補償一時金は受給世帯の自立更生のための費用を、また、障害補償費、遺族補償費及び児童補償手当はその一部を、それぞれ収入認定から除外している。
 御質問のように補償給付についてその全額を収入認定から除外することは考えていない。