質問主意書

第80回国会(常会)

答弁書


答弁書第三二号

内閣参質八〇第三二号

  昭和五十二年六月十四日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員近藤忠孝君提出福井県若狭湾地帯における原子力発電所の重大な危険から住民を守るための施策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員近藤忠孝君提出福井県若狭湾地帯における原子力発電所の重大な危険から住民を守るための施策に関する質問に対する答弁書

一について

 国民の理解と協力を得つつ、原子力開発利用を進めていくためには、原子力に関する広報活動が極めて重要である。
 原子力発電所は、事前にその安全性が十分審査された後に、設置が許可され、また、建設中及び運転開始後も、国の厳重な監督によつて安全の確保が図られている。更に、原子力発電所の安全性、放射能の特性等についても積極的な広報が実施されるとともに、関係機関における所要の防災訓練が実施されることによつて、地元住民の一層の理解と協力が得られるものと考えている。

二について

(一) 原子力施設の概要については、原子炉設置許可申請書等の縦覧及び原子炉設置者、地方公共団体等が行う原子力施設のモデルの展示、パンフレットによる説明等を通じて、広く地元住民への周知が図られている。
(二) 原子力発電所の安全性についての説明の中で、放射能の特性、原子力の潜在的な危険性等についても十分述べられている。
(三) 原子力災害発生時の留意事項としては、災害状況のは握及び伝達、汚染状況の調査、一般住民の退避及び立入制限、汚染飲食物の摂取制限等が挙げられる。これらは、福井県及び市町村が作成している地域防災計画に織り込まれており、一般にも周知が図られている。

三について

 関係機関による通信連絡訓練が実施されているが、地元住民と一体となつた防災訓練は、実施されていない。

四について

(一) 原子力発電所については、まず異常を起こさせないように、また、事故が起こつても、その影響を最小限に食い止め、周辺住民に被害を及ぼさないように設計上の配慮がなされており、安全審査の結果においても、周辺住民に対して放射線障害を及ぼすような放射性物質の放出は考えられないし、現在に至るまで原子力発電所において周辺住民に被害を及ぼした例はない。
 なお、原子炉の安全審査においては、念には念を入れた安全対策を講じるという観点から、実際には起きると考えられない事故を想定し、その場合にあつても、安全防護施設の機能を評価して、周辺住民との間の離隔距離が十分であることを確認している。
(二) 各原子力発電所において、平常運転時に放出される放射性物質の影響を評価することを主目的として、風向、風速、降雨量等の気象の観測が行われている。また、気象庁の敦賀測候所及び福井県において、風向、風速等の気象について観測が行われるとともに、気象庁の舞鶴海洋気象台等において潮流等の海象について、定例的に観測が行われている。
(三)から(九)まで 避難用道路、避難場所、避難経路、避難時の指示、誘導その他の避難体制については、地域防災計画に織り込まれ、その徹底が図られている。
 万一、災害の発生について通報があつた場合には、直ちに、テレビ、ラジオ、有線放送、広報車等により、地元住民その他の一般人に対し避難命令等を徹底することとされているが、避難についての実地の訓練は、行われていない。