質問主意書

第80回国会(常会)

答弁書


答弁書第一八号

内閣参質八〇第一八号

  昭和五十二年五月二十四日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員矢原秀男君提出絹織物業及びその関連業種に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員矢原秀男君提出絹織物業及びその関連業種に関する質問に対する答弁書

一について

(一)

1 協議結果の内容

(1) 大韓民国

ア 生糸・絹糸については、我が国は、一九七六年四月から一九七七年三月までの一年間に、三万六千俵を輸入する。
イ 絹織物については、一九七六年四月から一九七七年三月までの一年間に、大韓民国側は、一九七五年の実績水準で輸出自主規制を行う。

(2) 中華人民共和国

ア 生糸・絹糸については、我が国は、一九七六年四月から一九七七年三月までの一年間に、五万四千俵を輸入する。
イ 絹織物については、我が国は、一九七六年一月から同年十二月までの一年間に、千九百万平方米を輸入する。

2 履行の状況

(1) 大韓民国

ア 生糸・絹糸については、我が国は、協定期間において三万六千俵を輸入した。
イ 絹織物については、大韓民国側は、一九七五年の輸出実績千二百万平方米に対し、協定期間中千百万平方米の絹織物につき船積を許可した。

(2) 中華人民共和国

ア 生糸・絹糸については、我が国が、協定期間中に輸入措置を講じた数量は五万四千俵であつた。
イ 絹織物については、我が国は、協定期間において千九百万平方米を輸入した。

(二) 大韓民国との協議は、過去四回最近時点では五月二十日からソウルにおいて行われた。
 中華人民共和国との協議は、過去一回行われたが、今後継続されることになつている。
(三) 絹織物については、大韓民国及び中華人民共和国との協議において、我が方は、我が国絹織物業界の窮状を十分説明し、できるだけ抑制した水準で合意に達するよう努力している。
 絹縫製品(着物)については、主要輸出国である大韓民国からの一九七六年の輸入は、一九七三年の輸入量を下回つており(一九七三年一三千ダース、一九七六年一二千ダース)、輸入水準はいまだ低い。

二について

(一) これまでに、仮撚業等について設備共同廃棄事業の実績はあるが、絹織物業については、まだ実績はない。しかし、昨年十二月の日本絹人繊織物工業組合連合会の報告によれば、丹後、石川、兵庫等の七組合が設備共同廃棄を希望しており、現在、その具体的進め方について組合内部で検討中である。
 なお、そのほかいくつかの組合も実施を検討していると聞いている。
(二) 本制度については、融資比率(事業規模の九〇%)、返済期間(一六年)、金利(無利子)などの融資条件が一般の高度化融資に比べ特段に有利な内容となつている点からみて、その活用により十分成果が上がるものと考えている。
(三) 絹製品の需要は、最近における景気の停滞に加えて、和服着用層の縮小や生活様式の変化等の構造的要因から減退傾向を示してきている。今後の需要については、景気対策の推進により回復していくことを期待しているが、構造的要因もあることから、当面横ばいないし弱含みで推移するものと思われる。
 政府としては、今後とも絹製品の需要振興に努めていきたい。

三について

(一) 景気の停滞等による需要減退を反映して、最近の絹織物の在庫は、昭和五十一年六月のピーク時よりは若干減少しているものの依然として高水準で推移し、市況も低迷している。
 このため、現在中小企業団体の組織に関する法律に基づく生産数量調整を行い、減産による在庫調整に努めている。
(二) 運転資金について長期低利融資を行うことは困難であるが、政府系中小企業金融機関の既往特別融資の返済条件緩和、返済期限の延長等について配慮するとともに在庫金融の円滑化など資金調達の円滑化を図るよう関係機関を指導している。
 また、既に昭和五十二年四月一日以降、中小企業信用保険法に基づく倒産関連業種として指定し、信用補完の面でも十分配慮している。
(三) 昭和五十二生糸年度の基準糸価は、繭糸価格安定法の規定に基づき生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情を総合勘案し、蚕糸業振興審議会の意見を聴いて、昭和五十二年三月三十日に標準生糸一キログラム当たり一万三千百円に決定した。
(四) 蚕糸業振興審議会繭糸価格部会の委員については、蚕糸業振興審議会令の規定において学識経験者をもつて構成する同審議会の委員の中から会長が指名することとされており、その指名は、関係各方面の意見が適正に反映されるよう留意して行われている。
(五) 国際糸価として公認されているものはないが、例として御指摘のあつた中華人民共和国のヨーロッパ向け輸出生糸の建値と我が国の国内生糸価格の二か年にわたる推移は別表のとおりである。
(六) 輸入生糸の実需者への売渡しについては、生糸の需給、価格の動向等を勘案しつつ可能な限り多くの数量を計画的に行うこととしている。
(七) 蚕糸業及び絹業の調和ある発展に資するため、これまでも関係各省間で十分連絡をとりつつ施策を進めているところであるが、今後とも長期的視野に立つて検討を行つていきたい。

別表 中華人民共和国のヨーロッパ向け輸出生糸の建値と我が国の国内生糸価格 1/2

別表 中華人民共和国のヨーロッパ向け輸出生糸の建値と我が国の国内生糸価格 2/2