質問主意書

第78回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一二号

林野雑産物補償に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十一年十一月四日

鈴木 力   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   林野雑産物補償に関する質問主意書

 林野雑産物損失補償に関し、つぎの点をあきらかにされたい。

一 林野雑産物損失補償金の支払状況について

 林野雑産物損失補償金の支払がなされてきた演習場および射爆撃場について、昭和四十年度分以降現在に至るまでの右補償金の支払金額および対象者数を関係演習場、射爆撃場別、各年度別にあきらかにされたい。

二 林野雑産物補償に関する処理方式について

(1) 北富士演習場にかかわる林野雑産物損失補償金の支払については、「北富士演習場関係林野雑産物補償に係る過年度分(昭和四十二~四十四年度分)処理要領」(昭和四十八年二月十七日横浜防衛施設局)によつて、従来の処理方式を変更し、昭和四十二年度分以降は、所属入会組合長を代理人とし、北富士演習場対策協議会長を復代理人として、林野雑産物補償の申請及び契約の締結並びに補償金の請求、受領に関する一切の件を委任した者でなければ補償申請を受付けないとの処理方式を採用している。
 このように本人の自由意思によらず、一方的に第三者に白紙一任しなければならないとする処理方式は全国同一の処理方式か。
(2) もしその処理方式が全国同一でないとすれば、その各々の処理方式のちがいごとに、その補償申請者、申請手続、委任の方法、委任事項、支払手続、契約当事者等を、具体的に、それぞれの処理要領、委任状、補償申請書、補償契約書等を付してあきらかにされたい。
(3) また、もし林野雑産物補償の処理方式が全国同一でないとすれば、なぜ異つているのか、それぞれの演習場、射爆撃場でとられている処理方式につき、なぜ当該演習場、射爆撃場に妥当しているのか、その採用している積極的理由、妥当とする根拠をそれぞれあきらかにされたい。
 その場合、とくに、北富士演習場関係において、昭和四十八年二月の時点で、所属入会組合長を契約当事者とする従来の処理方式を変更して、現行の「処理要領」にしなければならなかつた合理的必要性、すなわち、従来の実務処理方式ではなぜいけないのか、さらにまた、同じように入会組合長を契約当事者とするところとくらべて、北富士関係では、どのような不都合が補償金の支払に関してあつたのか等を、具体的に明記されたい。

三 林野雑産物補償の受給資格等について

 林野雑産物補償は、一定地域の住民が一定の山林、原野で事実上収益してきた行為が、その林野を駐留軍及び自衛隊の用に供することにより阻害されたことから現実にこうむる損失をてん補する必要があることを政府が認めて「林野特産物損失補償額算定基準」(昭和三十六年八月四日調達規第三十七号)を規定し、実施しているものと解されている。
 右に関連して、つぎの点をあきらかにされたい。

(1) 林野雑産物を採取できる条件が客観的にすべてみたされているにもかかわらず、現実には林野雑産物の採取をまつたくおこなつていない場合は、右「林野特産物損失補償額算定基準」第四条の「林野雑産物の採取が阻害され、減収が生じた場合」に該当せず、そもそも林野特産物損失補償額算定基準そのものが適用される余地がないから、たとえこれまで補償を受けてきた者であつても、補償は受けられないと解するがどうか。
(2) 右条件のもとで、林野雑産物の採取がおこなわれたか、まつたくおこなわれなかつたかを認定する方法は、申請にもとづくだけか、あるいはそれをさらに国において調査確認するのか、野草、ソダ等別に具体的にあきらかにされたい。
(3) 米軍接収時まで、従来から継続的に事実として当該林野に立入り収益をおこなつてきた者で、林野雑産物補償の支払をうけてきた者でも、その後農業経営をはなれて立入り、収益していない場合は、林野雑産物補償の支払を受けられないと解するがどうか。
(4) 右変化を認定する方法を(2)と同じ要領であきらかにされたい。
(5) 現実に林野雑産物の採取をおこなつていないことがあきらかであるにもかかわらず、林野雑産物補償の支払をなしうる場合があるとすれば、その合理的な根拠をあきらかにされたい。
(6) 現行「林野特産物損失補償額算定基準」にしたがえば、現在、農業経営をおこなつている者でも、米軍接収時まで、継続的に事実として当該林野に立入り収益をおこなつていなかつた者に対しては、林野雑産物補償の支払をなしえないものと解するがどうか。
(7) しかるに、米軍接収時までまつたく立入つていなかつた者にも、林野雑産物補償の支払をなしうる場合があるとするならば、林野特産物損失補償額算定基準の第一条、「駐留軍の用に供することによつて」「こうむる損失」という文言、第二条の「使用開始時(占領期間中から使用中のものについては、接収開始時)」という文言、第三条、第四条の「林野の使用により」「阻害され減収が生じた場合」という文言、および第四条の「平年の採取量とは、林野の使用による林野雑産物の採取阻害がない場合の採取量をいい、使用前の平均年間採取量」という文言と関連して、その理由をあきらかにされたい。
(8) そもそも農業経営をおこなつていない者には、林野雑産物補償の支払を絶対になしえないものと解するがどうか。もしかりに、なしうる場合があるとするならば、その法的根拠および理由をあきらかにされたい。
(9) もしあきらかに林野雑産物損失補償金を受ける資格を有しない者が、これを受けている事実がある場合、これを受けた者およびその情を知りて支出の認証をした支出負担行為担当官は、それぞれどうような法的責任を問われるのか、また国はこれをどう処理するのか、関連諸法令に照らして、具体的にあきらかにされたい。

四 北富士演習場関係の林野雑産物補償について

 北富士演習場関係の林野雑産物補償の支払に関連してつぎの点をあきらかにされたい。

(1) 昭和四十二年、同四十三年、同四十四年の野草の平年採取量は、九・八二八・七九二キログラムとされているが、その算定はどのような方法でおこなつたのかをあきらかにされたい。
(2) 右の算定方法が平年採取量を算定するうえで、客観的かつ合理的である根拠を具体的にあきらかにされたい。
(3) 昭和四十五年以降の野草の平年採取量は右(1)の数字と同じなのかどうか。ちがつている場合はその数量、算定根拠、および変更した合理的根拠をあきらかにされたい。
(4) 昭和四十年度分以降現在までに支払われた林野雑産物損失補償金の野草、ソダ別の各年度額、およびその基礎となつた野草、ソダの各年度採取量、同損失量を、各入会組合別にあきらかにされたい。
(5) 右認定のためには、採草、採薪の跡地面積調査等の実態調査が必要不可欠であると思うが、これらの実態調査について、いつ、どのような調査を、各何回、各何人でおこなつたかを、各年度分ごとに、跡地面積とあわせてあきらかにされたい。
(6) 昭和四十年度分以降現在までに支払われた林野雑産物損失補償金に関連して、各入会組合ごとの申請者数、受給者数を各年度別にあきらかにされたい。
(7) 右に関連して、申請をおこなつた者のうち、支払をなさなかつた者があるならば、どのような調査およびいかなる理由をもつてそのように処理したのかを具体的にあきらかにされたい。
(8) 山中湖村平野部落は、同村の他の部落にくらべ農業経営の占める割合がより高く、しかも平野入会組合長以下連署で林野雑産物補償の受給を願いでているにもかかわらず、林野雑産物損失補償金の支払対象にはされていない。林野雑産物の採取をおこなつていない点では同じなのに、同村の他の入会組合には損失補償金が支払われ、一方、同じ旧十一ケ村の入会団体である平野入会組合には、その対象でないとして支払われない理由とその根拠をあきらかにされたい。
(9) 富士吉田市の上吉田入会組合では、藤井徳次組合長以下十六名が、昭和四十八年度分、同四十九年度分合計七六万六、九六九円の林野雑産物損失補償金を、組合員所属の上宿、中宿、下宿、中曾根の各自治会に昭和五十一年二月二十三日に寄付している(朝日新聞山梨版昭和五十一年三月二十四日付)。その理由は、入会権等にもとづく集団補償であれば別だが、野草、ソダ等を採つてもいないのに損失補償金を個人で受けとるのは良心に反するし、後ろめたい金は受けとれぬからだという。
 右であきらかなように立入り収益の事実がないにもかかわらず、現に損失補償金が支払われていた事実に関連して、当然、国は上吉田を含む北富士演習場関係の林野雑産物補償の申請、支払等に関して再調査したものと考えるが、その調査内容およびその結果はどうであつたのかを具体的にあきらかにされたい。なお調査をおこなつていない場合は、その理由をあきらかにされたい。
(10) 忍野村忍草部落における昭和四十一年度分の林野雑産物損失補償金の個人別補償額を、個人別の田畑別面積、牛馬別頭数および家族数、ソダ使用箇所数を付して、野草、ソダ別にあきらかにされたい。
(11) 右と同じ要領で、横浜防衛施設局作成の「処理要領」にもとづいて支払われることになつた昭和四十二年度分以降現在までの、忍草部落の各個人別補償額等を各年度別にあきらかにされたい。

  右質問する。