質問主意書

第78回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二号

ローマ字教育及びローマ字使用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十一年十月四日

内田 善利   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   ローマ字教育及びローマ字使用に関する質問主意書

 ローマ字が、戦後、小学校教育に取り入れられたことは教育上、大きな意義のあることであつた。しかし、ローマ字の使用方法及びローマ字教育のあり方に混乱が生じたため、昭和二十二年十二月、ローマ字調査令準備会が発足し、五年半の歳月を費し、最後に国語審議会で結論がまとまり、昭和二十九年の内閣訓令のつづり方に結論をみた。しかるにその後、長期にわたる審議の結果が尊重されているとは思われない点が多々見受けられる。かかる現状から、ローマ字使用及び教育上の問題点を早急に掌握し、その対策を緊急にこうずる必要がある。
 以上の理由から政府は以下の質問事項について具体的に答弁をされたい。

一 義務教育におけるローマ字教育について

 現在義務教育段階では小学校四年生からローマ字を教えている。この場合のローマ字のつづり方は内閣訓令第一号(以下訓令という)によるものである。
 しかるに中学校以上で英語を学ぶ段階になると、ヘボン式等が数多く見受けられるが、このことに対する教育上の混乱をどう考えているのか。

二 内閣訓令の目的について

 ローマ字使用にあたり、訓令の解釈に疑義が生じたる場合には、内閣訓令の中に、「今回、国語審議会の建議の趣旨を採択して」と明言してあるので、建議の趣旨の確認をすべきと思うが、当局のこの点に関する見解はどうか。

三 内閣訓令の解釈について

1 昭和五十一年五月十一日の参議院文教委員会で私の質問に対して、安嶋文化庁長官は、「訓令式の中に一表、二表、二つの表がございまして第二表はいわゆるヘボン式が基本、そういうものの使用も認められるということでございますから-以下略-」と答弁しているが、この意味はどういう場合にも、どちらを使つても良いという意味なのか。
 この答弁のとおりであるとするならば、訓令の「ローマ字のつづり方の統一、単一化」という当初の目的はどうなるのか。
2 内閣告示では、「まえがき2」において

(1) 「国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合に限り、第2表に掲げたつづり方によつても差支えない」とあるが、その「改めがたい事情にある場合」に該当するかどうかの判断は、誰が行うのか。
(2) もし、前項の判断が直接当事者の判断に、任せられるとするならば、当事者が、第1表を好まない、慣れない、などのなんら客観的理由がなくとも、第1表に改めることを拒否しつづけることができることになるが、それでも可とするのか。
(3) また「にわかに」とある以上、何年か準備のための猶予期間をおいて後、第1表に統一すると判断すべきと思うがどうか。
(4) 「にわかに改めがたい事情」であるから従来第2表でやつてきた出版物などが継続している場合などに適用されるとしても、新しい別の事項の発生にあたつては第1表によるべきものと解釈すべきと思われるがどうか。

3 内閣訓令が各官庁に命令している「ローマ字で国語を書き表わす場合にはこのつづり方による」という表現の内の「この」の指示するものが第1表であるのか、又、告示の全体を指すものかは、意見のわかれるところであると思われる。しかし、ローマ字統一を主眼とする訓令のなりたちからみるならば「この」は第1表を指すと考えるのが当然と思うがどうか。もし全体を指すと考えるならば、まえがき2の「にわかに改めがたい事情にある限り」という限定の文句も厳重に守られなければならないと思うがどうか。

四 今後の内閣訓令の趣旨の徹底について

 政府は内閣訓令第一号にあるように、この訓令制定の趣旨が徹底するように努める義務があると思われる。
 五十一年五月十一日の文教委員会で私の質問に対し、文化庁長官と文部大臣は、官庁におけるローマ字使用の実態につき調査を約束されたが、その後の経過を報告されたい。
 又、訓令制定後二十年余になるが、政府が訓令の趣旨徹底に努力された施策の実績を具体的に示されたい。

  右質問する。