質問主意書

第77回国会(常会)

答弁書


答弁書第九号

内閣参質七七第九号

  昭和五十一年四月二十七日

内閣総理大臣 三木 武夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員野末陳平君提出ロッキード事件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員野末陳平君提出ロッキード事件に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 ロッキード問題については、目下、検察・警察両当局において、その真相を解明すべく鋭意捜査を続行中である。
 すなわち、検察当局は、児玉誉士夫に対し、去る三月十三日昭和四十七年分の所得税法違反により公訴を提起し、引き続き昭和四十八年及び四十九年分の同法違反事件について国税当局と協力して捜査を行つており、また、検察・警察両当局は、関係被疑者の外国為替及び外国貿易管理法違反事件についても、鋭意捜査を続行しているほか、本問題の全ぼうの究明に全力をあげており、現在まで、既に押収した多数の証拠品や米国司法省から入手した資料について十分な検討を加えるとともに、多数関係人の取調べを行つている。
 捜査が続行されている現段階において、その内容を明らかにすることは、関係人の出頭や供述をしゆん巡させる結果を招来し、あるいは証拠隠滅を招くなど、捜査活動に悪影響を及ぼし、事案の真相解明に重大な支障を生ずるおそれがあることは明らかであるので、捜査の内容を公表することはできない。

三について

 過般行われた国会の証人喚問における証人の証言の真偽については、現に行われている捜査の内容にかかわる事柄であるので、一及び二についての回答において述べたとおり、これを明らかにすることはできない。

四について

(イ) 刑事訴訟法第四十七条本文は、訴訟関係書類の公判開廷前における非公開の原則を定めているが、これは、訴訟関係人の人権を保護し、また、捜査及び裁判に対し不当な影響が及ぶことを防止しようとする公益上の必要によるものである。ところで、同条ただし書は、「公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」と規定しているが、これは、非公開とすることによつて保護される右の公益に優先する他の公益上の必要があると認められる場合における例外的な取扱いを認めたものと解される。
 この判断は、訴訟関係書類の保管者である検察官等が行うこととなる。
 なお、内閣総理大臣ないし法務大臣が報告に基づき捜査結果の公表の当否を判断する場合においても、同条の規定の趣旨に従うことは当然であり、特に、同条が元来司法権の公正独立を保障しようとする趣旨にでた規定であることにかんがみれば、十分慎重な態度で臨むことが要請されていると言わなければならない。
(ロ) 特別の手続を要しない。
(ハ) (イ)に述べたところにより了知されたい。

五について

 政府は、両院の決議を尊重して三木首相親書を発し、米国大統領の特段の協力を要望し、その結果、フォード大統領返書が寄せられたものである。同返書は、要するに、調査の公正、個人の権利の尊重をたて前とする米国の法制及び慣行に照らし、提供する資料については、秘密扱いとすることを条件としたものであり、その趣旨は十分理解できるとともに、我が国法制の基本原則にも合致するので、三月十二日、政府は、本件真相の解明を図るべく、右の米国側の条件を受諾し、米国側資料の提供を受けることとする旨の閣議決定を行つた。これに基づき、日米の法執行当局者である法務省と米国司法省との間において、相互に提供する資料は法執行当局以外には開示しないとの条件の下に、実務取決めが締結されたものである。したがつて、米国側から提供を受けた資料の内容を公表することができないことは明らかである。
 なお、いわゆる高官名の公表については、事態の推移を見ながら、刑事訴訟法の立法趣旨をふまえて判断すべきものと考える。