質問主意書

第76回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質七六第三号

  昭和五十年十月三十一日

内閣総理大臣 三木 武夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員三木忠雄君提出羽田国際空港内における土地所有権に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員三木忠雄君提出羽田国際空港内における土地所有権に関する再質問に対する答弁書

一、について

 国が東亜港湾工業株式会社から購入した土地の登記が有効な登記となつたのは、先の答弁書(内閣参質七五第一三号)一、で述べたとおり実体的権利に合致することとなつたからである。
 なお、一六〇八番及び一六〇九番は別の土地であつて事実関係を異にするから国の主張に矛盾はない。

二、について

 昭和四年度ないし昭和七年度の予算決算上いかなる科目で支出したかは、現在では資料がないため不明である。

三、について

 御指摘の日本銀行の原簿複写資料によつては、飛島文吉に対する支払状況を明らかにすることはできないが、国が飛島文吉から土地を購入した事実は、先の答弁書二、において述べたとおり明らかである。

四、について

 不動産登記法第三十条及び第三十一条の規定は、所有権移転の登記のように登記権利者と登記義務者が存在する場合に、官庁又は公署が登記権利者又は登記義務者として登記を嘱託するときの規定であつて、もともと登記義務者の存しない所有権保存の登記を官庁又は公署が所有者として嘱託する場合には、全く適用の余地がない。
 なお、当時の不動産登記法によれば、官庁又は公署が所有者として所有権保存の登記を嘱託する場合には、同法第百十条の規定により同法第百五条の規定の適用が排除されており、登記官吏は、何らの証明を要せずして嘱託書記載のとおり所有権保存の登記をすべきものとされていたのである。

五、について

 御指摘の羽田国際空港調査図は、先の答弁書五、に述べたとおり東京調達局が業務処理上の必要から当該土地に係る土地所有申告者の主張を確認するために作成したものであり、土地の所有権を確認したものではない。
 なお、先の答弁書において「国は無効としているわけではない」というのは、関係者の主張を確認したという意味においては無効ではないということである。

六、について

 御指摘の土地については、運輸省航空局長からの右各土地の表示の登記の抹消の申出に基づき、登記官において不動産登記法第五十条第一項の規定により職権をもつて、右各土地に関する分合筆等の経過を示す資料、右各土地の分筆に先立ち分筆前の土地につき野本治平から提出された昭和二十八年十二月十四日付け地積訂正の申告書に添付された図面及びその他の書面、地積訂正及び分筆当時における右各土地区域の現況を明らかにする航空写真並びに埋立てに関する資料等の各種資料を慎重に調査した結果、右各土地の区域は、地積訂正及び分筆の当時においては、海面下にあり、東京都の埋立て予定区域内に存在するものであつて、埋立て未竣功であることが判明し、右の各登記は、土地が存在しないにもかかわらずされた無効なものであることが明らかとなつた。
 このような場合には、不動産の表示に関する登記の一つとして、不動産登記法第二十五条の二の規定により職権をもつて表示の登記の抹消をすべきものとされているので、登記官は、同条の規定により右各土地の表示の登記を抹消したものである。
 なお、土地が不存在であるにもかかわらず誤つて登記されたものであることを登記官において確認できる以上、右のような職権抹消をするに際し、登記簿上の所有名義人立会いのもとに実測確認をする等の措置をとることを要しないものである。

七、について

 御指摘の表示の登記を抹消した理由は六、において述べたとおりであり、1ないし6の事項はいずれも右抹消の処分と矛盾するものでない。

1 御指摘の地図「穴守」を調査したが、同地図が当該地を陸地として表示しているものとは認められない。
2 御指摘の土地登記簿は戦災により焼失し、回復登記の手続もとられていないため、御指摘の認証が相違ないかどうかは確認できない。
3 御指摘の登記が存在したことは事実であるが、登記が存することとこれに対応する区域が陸地として存在するか否かとは別個の問題である。
4 固定資産税は、登記簿上の所有者を固定資産課税台帳に登録し、その登録名義人を納税義務者として課税するものであるから、御指摘の地番の土地について固定資産税が賦課されたとしても、それは3に御指摘の登記が存することからくる手続上当然の結果であつて、昭和二十八年当時に陸地であつたと認める直接の資料となり得ないことは3に述べたとおりである。
5 六、に述べたとおり、表示の登記の抹消は御指摘の土地区域が昭和二十八年十二月当時海面下であつたことを理由としてなされたものであり、登記簿上の地目とは直接関係がない。
6 御指摘の土地について、国の埋立て工事は昭和三十五年から昭和三十六年の間に施工されたものであるが、御指摘の街区図は右工事施工後に作成されたものである。
 したがつて右街区図は、昭和二十八年当時当該土地区域が海面下であつたことを否定する資料とはなり得ない。
 なお、航空局長が表示の登記の抹消を申し出た理由は六、に述べたところと同様である。

八、について

 運輸大臣としては、東京都との折衝の過程において主として問題となつたのは、漁業補償金相当額の負担の点であつたことでもあり、埋立て自体については異議がないものと判断したものである。
 なお、国は東京都副知事から御指摘のような回答を受けたことはない。

九、について

 羽田空港調査図は、五、で述べたとおり関係者の主張を確認したにすぎず、もとより公図でもない。
 また、野本治平の主張する一六〇八番の六及び一六〇九番の六に該当する部分の土地は、国が埋立て造成により所有権を取得したものである。