質問主意書

第76回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二四号

水俣病に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十年十一月十五日

内田 善利   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   水俣病に関する質問主意書

 水俣病が発生して二十年を経過した。水俣病像の明確な解明もなく、具体的な完全な治癒方法もないまま、今や三千人を超える水俣病申請患者が不安のうちに放置されている現状であり、水俣病の恐しさ、深さ、広さに驚くばかりである。政府は現在の検診力、審査力で救済できると考えているのか。水俣湾内及び周辺の水路等の水銀汚染は、今尚、極めて濃厚であり危険な状態にある。
 この際、水俣病の実態を明かに把握し、今後の対策を緊急に推進する必要を痛感するので、政府は、以下質問事項について責任ある具体的な答弁をされたい。

一、本年九月末現在で県別に水俣病について次の事項を報告されたい。

1 検診者総数
2 申請者総数
3 審査総数
4 未審査数
5 認定者総数
6 保留数
7 棄却数
8 審査会の審査回数

二、水俣病像について

 水俣病は微量のメチル水銀によつて、内臓や血管系等も侵される全身病であることが明確にされつつある。したがつてそれらの学説に応じて、認定要件の拡大を図るべきではないか。

三、認定について

 申請者の審査が大幅に遅れている理由について、政府はどう考えているのか、またその遅れを回復するため政府は如何なる対策をもつているのか。

1 審査の遅れの理由とその回復対策
2 審査委員の拡充及び審査会の回数拡大等、審査能力を大幅に強化すべきではないか
3 このままの審査能力では、申請者の検診及び審査が終了するまで約二十年間位かかるといわれているが、三千人の申請者の審査計画と時期について政府の見通しはどうか
4 申請者を水俣病患者ととらえて、早急に審査し、認定して、被害者の早期救済にあたるべきではないか

四、水俣湾内堆積汚泥(ヘドロ)の処理について

 水俣湾内のヘドロは、水銀濃度二五PPM以上約一五〇m3であるといわれる。極めて危険な状態にある。地域住民の健康を保護するため、緊急の処理が迫られている。

1 ヘドロ除去工事着工の見通し
2 除去ヘドロを水銀濃度二五PPM以上に限定した理由、及び二四PPM以下のヘドロ対策
3 工法と二次汚染防止対策
4 事業費負担(具体的に)

五、目前に不知火海の美しい海があり、魚がおり、貝がいながら、いつまでもその環境を享受できない住民に対する政府の責任。

六、国立水俣病治療センターについて

 三木総理は、昭和四十八年五月、水俣市でこのセンターの構想について公約している。

1 検討委員会のメンバーに、公約どおり、患者代表を入れるべきではないか
2 センターは研究機関とするのか、患者の治療救済機関とするのか
3 規模と予算

七、カナダに於ける水銀汚染事件について単なる外国での出来ごととみるわけにいかないのではないか。

1 政府はどのように把握しているか
2 調査しているか
3 無機水銀汚染問題の再検討が必要ではないのか
4 典型的水俣病の一歩手前の水銀中毒症についての政府の見解は如何

  右質問する。