質問主意書

第75回国会(常会)

質問主意書


質問第一三号

羽田国際空港内における土地所有権に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十年六月十一日

三木 忠雄   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   羽田国際空港内における土地所有権に関する質問主意書

 日本の空の玄関である羽田東京国際空港の中に、全体の約八分の一に当る二十万坪の敷地の所有権をめぐり、国と民間人が争つているものに関し、国の所有と主張する根拠を、次の諸点につき政府の明確なる見解を問う。

一、東京都大田区鈴木御台場一六〇七番の二外七筆を昭和二十八年六月三十日に、同じく一六〇五番外二筆を昭和三十四年七月二十五日の二回にわたつて、運輸省航空局が国際空港用地として、東亜港湾工業株式会社(旧東京土地埋立株式会社)よりひそかに購入した事実がある。
 この東亜港湾工業株式会社の土地は、権利移転経過からして内務省登記の系列であることは明らかである。
 従つて、国は内務省登記を認めていると判断すべきといえるが、国はこの内務省登記を認めるか、もしくは否認するか明確にされたい。なお否認する場合はその理由を示されたい。

二、東京府荏原郡羽田町大字鈴木新田字江戸見崎北の方、敷地十六万坪を昭和五年一月十七日逓信省航空局が東京飛行場用地として、二百一万六千円の金額で飛島文吉より購入したとしているが、当方の調査によると右予算は計上されておらず、決算においても右購入の金額はないのである。更に日本銀行支出官逓信局長の支出金もないのであるが、右土地の購入を証明する明確なる回報を頂きたい。

1 飛島文吉より昭和五年一月十七日右土地を購入した予算に関し、昭和四年度の事業費からか、もしくは昭和二年度、三年度の予算より支出されたのか、具体的数字で明らかにされたい。
2 右記土地買収に関する国庫金支出官職氏名、支出金額、支払年月日、予算年度別款項目を、日本銀行に保存されるマイクロフィルム資料に照会し、報告されたい。

三、昭和二十八年九月九日運輸省航空局長により、東京法務局大森出張所に対し、土地所有権保存登記嘱託書を提出して、登記を受けるべき不動産の表示を別紙の通りとし、土地の表示を東京都大田区羽田江戸見町一五九二番の一逓信省用地五三三、三一〇外五筆として、不動産登記法第一〇五条により登記を嘱託しているが、当時の不動産登記法によれば、官庁よりの嘱託は第一〇五条の規定によることを要せざる旨規定し、また同法三〇条によれば官有不動産等に関する権利の登記は、登記権利者の請求により、官庁もしくは公署より遅滞なく嘱託書に登記原因を証する書面を添附し、これを登記所に嘱託することを定め、なお三一条は右書面と同時に登記義務者の承諾書を添附すべき旨定めているのである。右の場合同法四九条八項により登記官吏は、右申請を却下すべき旨定められているが、これらの規定に照らし、本嘱託書を受理し登記手続きを完了したとすれば、右法規の根拠を示されたい。なおこの登記は二重登記の疑いがあり、私人の所有権を侵すものであると思料せられるが、詳細を明快に答弁されたい。

四、昭和三十五年八月二十五日空飛第一九四号をもつて東京都知事に対し、運輸大臣より東京国際空港拡張に伴う公有水面埋立法第四二条により埋立承認方を申請されたが、東京都副知事より当該地域に民有地ある理由により、承認せずとの回答あり、且つ昭和三十九年四月三十日付にて右埋立は承認していない証明書を野本治平に交付している。にもかかわらず七年九ケ月を経過し、昭和四十三年五月四日に承認され、しかも昭和四十三年八月十日で僅かに三ケ月余にして竣工したことになつているのは大いなる疑問である。
 従つて、右埋立は都知事の承認なくして埋立を施行したものと推定される。
 よつて、公有水面埋立法違反の疑義がある点、並びに禀議内容に基づく埋立申請から承認に至るまでの経過と、未承認のまま埋立に着手した理由を具体的に回報されたい。

五、昭和二十八年三月二日東京調達局、航空局、太田区役所と共同主催にて、羽田空港土地調査班を設置し、地主六七名を招集して現地実測による公図の通り各地主の確認を求め、野本治平以下各地主が調達局不動産部長宛の確認書に署名捺印し、相互で確認した事実があるにもかかわらず、これを無効とする政府の理由を詳細に伺いたい。

六、東京都大田区羽田江戸見町一六〇八、一六〇九の土地に関して、特別調達庁の調査により所有者を野本治平と認め、土地借上契約書を昭和二十年九月二十一日より同二十四年十二月三十一日の期間取りかわしている。
 更に、蒲田税務所、大田税務事務所より固定資産台帳に基づき、地租(国税)、固定資産税(都税)を賦課しているにもかかわらず、これを無効とする政府の見解理由を明確に回答願いたい。

七、昭和十三年二月七日航空局長官藤原保明と京浜電気鉄道株式会社(現京浜急行電鉄株式会社)社長生野團六との間に、大田区羽田江戸見町一五九二番の五敷地四、八一四坪四合外数筆について、総額九八八、二六六円四五銭の売買契約が締結されているが、右土地は国が飛島文吉から昭和五年一月十七日に購入した十六万坪の範囲に入つており、既に購入し国のものとなつているならば再び買入れる必要はないのである。
 何故、二重に購入したか具体的に説明されたい。
 なお、右土地購入に関する契約書は、京浜急行電鉄株式会社に現存している。

八、東京都大田区江戸見町一六〇八番の六、一六〇九番の六の民間人所有の土地に関して、昭和四十七年五月九日運輸省航空局長より東京法務局大森出張所に対する右土地の土地表示登記抹消の依頼によつて、大森出張所の登記官が、右土地に関し係争中にもかかわらず、職権により土地表示登記抹消をした事実がある。
 右土地は昭和四十年一月十二日付で現所有者が、国の定める法律に基づき合法的に不動産を取得し、同時に国も正式にこれを認めた(土地登記簿記載)にもかかわらず、数年後に実測もせず、境界線の立合いもなく、所有者の承認も得ずして、職権により「不存在」の理由により個人の財産を抹消したことは、不動産に関する諸般の取得、所有、移転、相続、売買等に重大な問題点を残すことになると思料されるが、この職権抹消に関する理由と法的根拠を詳細に示されたい。

  右質問する。