質問主意書

第75回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇号

沖繩県の文教施設整備等の格差是正に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十年五月三十日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   沖繩県の文教施設整備等の格差是正に関する質問主意書

一、沖繩県の公立文教施設整備五カ年計画の完全実施について

 沖繩県は、二十八年間の行政分離によつて学校施設の整備が遅れ、今なお大きな格差が生じ、校舎不足をきたしている。その格差是正のために復帰特別措置法が制定され、それに基づいて沖繩県の公立文教施設整備五カ年計画が作られ、昭和五十一年で終了することになつているが、計画通り実施できるかどうか、完全実施のための施策を示して貰いたい。

二、危険老朽校舎、不良鉄筋校舎の解消について

 沖繩戦で校舎はほとんど破壊されたが、校舎の割当てがないため、今なお老朽校舎を使用している学校がある。また、コンクリートの剥離、亀裂、鉄筋の腐食を生じたいわゆる不良鉄筋校舎も多い。その他トタンぶき、老朽化した木造、石造、レンガ造等危険度の高い校舎の使用を余儀なくされている。暴風の多い沖繩県の状況を考えると、これらの危険校舎は、戦災復興という立場から、新築同様十分の九の補助率をもつて校舎建築の割当てを行う考えはないか。

三、校地取得のための補助金特別措置について

 沖繩県は、全国の米軍基地の五三%を占め、沖繩本島の一八・八二%は軍用地である。また、これら軍用地は、人口密度の高い那覇市、沖繩市等に集中している。したがつて学校用地が必要なのに得にくい状態である。また那覇市の場合、借用校地の借地料が地価の値上がりで市財政を圧迫し、市財政でまかなえない状態に陥つている。そこで、軍用地に広大な土地が接収されている沖繩県の特殊事情を考え、校地取得のため、国庫補助と借用校地の買上げ措置を講ずる考えはないか。

四、公立幼稚園職員の給与半額国庫負担及び園舎の補助率引上げについて

 復帰前の沖繩では、公立幼稚園は小学校に附設され、幼稚園職員の給与を小学校に準ずる給与にするために幼稚園教育振興法が制定され、給与の半額を琉球政府が負担していた。 しかし復帰後は、給与は市町村への交付税措置となり、そのために市町村間に給与のアンバランスが生じている。これを是正するため、復帰前の制度と同様に、公立幼稚園職員の給与の半額国庫負担の特別措置を講ずる考えはないか。また、園舎施設を各県並みの水準に引き上げるため、小中学校と同様十分の九の補助率に引き上げる考えはないか。

五、児童・生徒の交通安全施設の整備について

 沖繩県の交通は自動車に頼らざるを得ないため、自動車の増加が著しい。しかし、道路は軍用道路を単に国道に名義変更したにすぎないため、その整備や交通安全施設が不十分である。そのため、子供の交通事故死傷者が全国平均より高い。そこで、児童・生徒を交通事故から守るため、交通安全施設を早急に整備する必要がある。これについての政府の現在及び今後の施策を示して貰いたい。

六、混血児問題について

 沖繩県にも混血児が多数いるが、これら混血児の社会福祉対策はどうなつているか。また、特に外国籍をもつている混血児は、日本の各種年金制度、国民健康保険、児童扶養手当制度等から除外されることになるが、これら混血児の問題は、米軍基地が長期間存在したことが原因であり、保護者(母親)が日本人であることからも、政府として、児童が心身共に健やかに成長するために何らかの措置をとる必要があると思うがどうか。

七、社会教育施設、社会体育施設の整備について

 沖繩県の社会教育施設及び社会体育施設は、九州各県と比べて極度に悪い。現行の二〇%程度の補助率では、その振興は遅々として進まず、本土各県との格差は大きくなるばかりである。したがつて、文教施設と同じく十分の九、或いは三分の二の国庫補助率をもつて整備に力を入れる考えはないか。

八、県立総合文化センタターの設立について

 沖繩県には、総合文化センターがないため、復帰前からその建設が叫ばれて来たが、ようやくそれが具体化され、那覇市内の県有地にその設立の準備が進められている。その建設費への国庫補助をする考えはないか。

九、へき地教育の振興について

 沖繩県は離島が多く、へき地指定校も多い。二個学年の複式をもつ学校が小学校三十八校、中学校十一校もあるし、複式学級数からすれば小学校百八学級、中学校十一学級もある。教育効果の面から、複式は解消すべきではないか。また二個学年にわたる複式学級は全面的に解消すべきではないか。政府の考えを伺いたい。解消すべきであるというのであれば、その施策を示して貰いたい。また、へき地教育を振興するために、複式学級の編成基準を改める必要はないか。さらに、へき地勤務年数を加算するように年金上の勤務年数を改める考えはないか。

一〇、学校給食物資の無償供与の延長について

 沖繩においては、米軍統治の時代から学校給食物資は無償であり、また復帰後も特別措置をもつて父兄負担を軽くして来たことは、復帰後の経済の混乱・不安定な状況の中で極めて喜ばしいことである。沖繩県のように、経済開発が遅れ個人所得が他府県を下回る所で、もし右措置が打ち切られたなら、父兄負担が増大し、給食の辞退が出て、学校給食を廃止せざるをえないような事態が生ずるおそれがある。これを避けるため、右措置を適当な期間延長する考えはないか。

一一、私学援助について

 沖繩県の私立学校は、戦後設立されたものばかりで、自力で経営されて来た。国や県の助成が行われたのは最近であり、そのため基盤が弱く、施設設備は公立に比して一般的に劣悪である。
 そこで、他府県の平均基準まで引き上げるため、他府県以上の助成策を講ずる考えはないか。

  右質問する。