質問主意書

第74回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質七四第一号

  昭和四十九年十二月二十日

内閣総理大臣 三木 武夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員塩出啓典君提出自閉症児・者の早期発見・早期療育体制および福祉対策の確立に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員塩出啓典君提出自閉症児・者の早期発見・早期療育体制および福祉対策の確立に関する質問に対する答弁書

一、について

(1) 自閉症の診断には、専門的知識と技術が必要であり、自閉症の早期発見のためには乳幼児健康診査、三歳児健康診査等の健診体制の強化も必要と考えている。
 しかし自閉症は、一般的に生後一~二歳頃、両親が、わが子の「言葉の発達遅滞」、「独り言」など言語の発達異常に気付き、児童相談所、医療機関等に相談し、その結果発見されることが多いので、このような相談があつた場合に、各地域において診断・判定が適正に行いうるよう配慮してまいりたい。
(2) 心身障害児の診断・判定、診断・判定後の事後指導等については、関係機関の連携が必要であるが、特に自閉症については専門的な技術を要する問題もあるので、今後、例えば児童相談所長会議等で、関係機関の連携強化につき、指示、指導を行いたい。
(3) 自閉症児は、両親を含めた他人との感情のふれあいができず、人や言葉を認知できないということが一般にいわれているが、なお学問的には、原因、症状のとらえ方の面で議論のあるところであり、単に行政的に診断基準を定めることは必ずしも適当でないと考えるので、今後学問的研究と併せて検討してまいりたい。
(4) 政府としては医師、看護婦等の医療従事者の全般的な不足の現状に対処するため、現在、計画的にその確保策を進めているところである。
 また児童精神科医療に従事する医師の資質の向上を図るための対策の一環として、昭和四十七年度よりとくに、公立病院、精神衛生センター、児童相談所等に勤務する医師に対する児童精神医学臨床医研修会を実施しているところであるが、今後ともこの面で努力してまいりたい。
(5) 診療報酬における小児加算の問題については、乳幼児に対する医療の特殊性等を考慮して、従来から初診時及び入院時の乳幼児加算等が算定できることとなつていたが、昭和四十九年十月の診療報酬の改定において更に再診時における乳幼児加算を新設したところである。今後もこの問題については、診療報酬の改善の際に検討してまいりたいと考えている。
(6) 自閉症児の態様は区々であり、その態様によつて、医療機関での処遇が適当である者もあり、福祉施設での処遇が適当である者もあることから、両面からの対策が必要と考える。
 福祉施設で処遇する場合においても、医療面で条件の整つたところで処遇する必要があると考えている。
 自閉症児のための施設のあり方については今後更に検討を進めてまいりたい。
 教育面については、施設内での学級の設置、教員派遣等で教育の機会を確保してまいりたい。
 また自閉症児の教育方法についても、国立特殊教育総合研究所及び国立久里浜養護学校において実際的研究を行つているところである。
(7) 児童精神科の病床の整備については、病床整備の一環としてその整備計画を有する地方公共団体等に対して、その実情に応じ助成に努めてきたところであり、また国立療養所においても昭和四十九年から難病病床計画の一環として、病床整備を図つているところであり、今後ともこれら施策の充実に努めてまいりたい。
(8) 自閉症児にとつては幼児期に一般児童に接触させることが療育上有効であるといわれているので、本年度から、保育所においては、自閉症児を含む心身障害児をパイロット的に保育所で保育できるよう特別な財政援助を行うこととしたところであり、私立幼稚園においても自閉症児を入園させている場合には教育費の一部を補助し、その振興を図つているところである。
 今後、これらの施設の拡充について、努力してまいりたい。
(9) 自閉症の研究は、心身障害研究費のなかで行つているが今後とも引き続きその強化を図り、自閉症の原因究明、治療体系の確立を目指してまいりたい。

二、について

 自閉症の年長者の実態については目下調査が行われているところであるが当面条件の整つた精神薄弱児・者施設で受け入れることを検討したいと考えている。
 また、自閉症単独の通園施設は自閉症の療育上適当ではないといわれているが通園による療育・訓練の必要性はあるので、精神薄弱児・者通園施設の利用を検討したい。

三、について

 自閉症研究専門委員会の中間報告は、自閉症に関しはじめてのまとまつた報告で、基本的かつ具体的な貴重な意見が述べられており、政府としては、障害児保育の実施、幼稚園での教育等を行つているところであるが、その他の具体的施策については、本委員会が引き続き進めている研究等も参考にしつつ検討を行つてまいりたいと考えている。