質問主意書

第74回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二号

当面する中小企業の不況対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十九年十二月十三日

峯山 昭範   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   当面する中小企業の不況対策に関する質問主意書

 昨年来の総需要抑制策とそれに伴う金融の引き締めの浸透により、特に従来から体質の弱い中小企業は、深刻な不況のしわ寄せを受けており、在庫急増、操業率の低下、売上げ不振及び支払条件の悪化等、まことに憂慮すべき事態となつている。特に繊維産業等においては、不況カルテルの申請や四十パーセント前後の操業短縮を余儀なくされ、さらには人員の縮小など雇用情勢も悪化してきている。
 企業の倒産件数も例年になく増加しており、その負債総額においても著しい増加を示している。金融引き締め政策が今後とも堅持されるならば、中小企業がさらに大きな打撃をうけることは避けられない情勢である。
 このような事態に対処し、長い間日本経済を支えてきた中小企業の危機を克服するためには、中小企業者の自助努力を重んじながら、これを積極的に援助する政府の機動的、弾力的な政策運営が望まれるところである。このために次の諸点について政府の回答を求める。

一、総需要抑制策と景気見通しについて

 物価高騰に対処するための総需要抑制による金融引き締めは、日本経済に深く浸透してきており、その中にあつて資金力に乏しく、信用力の低い中小企業の事業活動は停滞傾向がかなり強まつている。そのため売上げ、受注の減少傾向が依然続いており、製品在庫においても、操業短縮による在庫調整にもかかわらず、過剰傾向は一段と強まつている。特に下請け関連企業は親企業からの発注量の大幅削減、取引の一時打ち切りなどを求められており、不況の波をもろにかぶつている。
 三木新内閣は誕生の際の政策宣明においても、物価安定の実現を強く打ち出しているが、そのために、今後、総需要抑制策をいつまで堅持していこうとするのか。さらに当初、十~十二月に景気は底入れするという予想が行われていたが、現実には、景気回復については悲観的な見方をとる者が大部分を占めている。
 政府は来年以降の景気動向について、どのような見通しをもつているのか。

二、中小企業の倒産状況とその対策について

 中小企業の倒産件数(東京商工リサーチ調査)は、この十一月に一千百二十三件と、四十三年三月の一千百九十六件に次ぐ戦後二番目の数字を記録、十月に続いて、一般に危機ラインといわれる一千件を突破し、年間倒産件数は史上最高の一万二千件前後に達すると見られている。また、負債総額においても、一件あたりの負債金額においても、大型化傾向を強めている。
 このような現状に対し、政府はどのような施策をもつて対処しようとするのか。

三、金融対策について

 繊維・建設業をはじめとして、ほぼ全業種にわたつて不況が深刻化しており、政府はそのため、年末の緊急融資対策として七千億円を追加したが、そのうち、二千五百億円は第一、第二・四半期に先食いをした形になつており、実質的には、決算、ボーナス資金等、年末季節資金の需要時期にあたる第三・四半期においては、四千五百億円である。しかし、景気回復の気ざしもない現時点では、これだけでは中小企業者にとつては十分な対策資金量とはいえない。よつて政府は次の諸点について、そのすみやかな実現をはかるべきではないか。

1 政府関係中小企業金融三機関の第四・四半期貸出枠をさらに増額すること。
2 経営が著しく圧迫されている中小企業者に対して、既往債務の償還をできるだけ猶予すること。
3 都銀、地銀、信託銀行の民間金融機関による「中小企業救済特別融資制度」の融資枠等について、その運用を機動的に行うこと。

四、輸入急増対策について

 繊維業界にあつては、消費者の需要減退や発展途上国からの製品輸入の急増により、自主操短、減産態勢をとらざるをえなくなつたが、それには自ずと限界がある。よつて、政府は次の諸措置をとるべきではないか。

1 従来、輸入に関しては、統計が不備であり、特に先行指標となるものがないという現状にかんがみ、早急に輸入統計の整備をはかり、きめ細かな実態をは握すること。
2 「秩序ある輸入」体制の概念を明確化するとともに、現在行つている行政指導を強めていくこと。
3 輸入貿易管理令による数量等の規制や、関税定率法による関税面からの規制などについて、弾力的運用をはかること。

五、下請関連中小企業対策について

 不況が今日のように長期化してくると、親企業による下請中小企業への締めつけは以前にも増して厳しさを加えており、親企業からの支払現金比率の低下や手形サイトの延長などにより、下請け関連中小企業は「イモづる式」に連鎖倒産をおこすことにもなりかねないので、下請代金支払遅延等防止法による取り締まり体制の強化をはかるべきではないか。

六、小企業経営改善資金融資制度の拡充について

 中小企業のうち、その大部分を占める小規模企業は、一般に企業体質が弱く、大企業との経営格差が著しいこと、環境の変化に適応することが困難であること等、経営上の困難性において共通の問題をかかえており、これら経済変動に対処して経営改善を図る零細小企業者に対しては、無担保、無保証の融資制度を拡充、改善する必要がある。よつて、政府は早急に次の諸点の実現をはかるべきではないか。

1 貸付限度額を現行二百万円から大幅に引き上げること。
2 貸付期間を延長するとともに、貸付利率においても小規模企業者の負担が過重にならないよう配慮すること。
3 四十九年度融資枠(一千二百億円)を大幅に拡大すること。

  右質問する。