質問主意書

第72回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七号

内閣参質七二第一七号

  昭和四十九年六月十八日

内閣総理大臣 田中 角榮   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員塩出啓典君提出身体障害者の福祉対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員塩出啓典君提出身体障害者の福祉対策に関する質問に対する答弁書

一、について

 運賃割引の取扱いをする場合、国鉄は収入整理上、割引証等なんらかの証票が必要であるので、身体障害者手帳の提示のみで発売することは困難である。
 しかし、割引手続の簡素化について、身体障害者からの強い要望にこたえるため、昭和四十八年八月から容易に割引証が入手できるよう次のような改善措置を実施した。

(1) 割引証の有効期間を従来の六か月から一か年に改めたこと。
(2) 割引証は、従来一枚ずつ渡していたが、これを年間に必要な枚数が一度に入手できるよう十枚つづりの冊単位で渡すよう改めたこと。
(3) 割引証の交付個所について、新たに、国立更生援護機関を追加したこと。

二、について

 御指摘のように国鉄運賃法第五条の二に基づく政令は制定されていないが、事実上国鉄において身体障害者旅客運賃割引規則を制定し、身体障害者が単独で旅行する場合や急行料金をも含めて身体障害者割引を実施してきているところである。
 政令の制定については、これまでも検討を重ねてきたところであるが、極度にひつ迫している国鉄の財政事情や、国の福祉政策のあり方をもふまえて関係各省間で十分協議のうえ、できる限り速やかに措置することといたしたい。

三、について

 駐車禁止規制が行われている場所において身体障害者の使用する車両につき当該規制を除外することについては、都道府県公安委員会規則で、その対象除外車両として定める方法、都道府県公安委員会が個々の駐車禁止規制を行う際にその対象から除外する方法又は道路交通法第四十五条第一項ただし書の規定により警察署長が許可する方法により、実施しているところであるので、当該駐車禁止除外の標章についても、都道府県公安委員会が交付するもの、警察署長が交付するもの等があり、また、その様式も区々にわたつていることは御指摘のとおりであるが、身体障害者が使用する車両につき当該規制を多少とも除外することについては、前記いずれかの方法により、すべての都道府県で措置しているところである。
 これらの措置については、各都道府県警察において、それぞれの都道府県の道路交通の実態及びこれらの措置が交通の安全と円滑等に及ぼす影響等を考慮して運用されているものであるので、当該駐車禁止除外の標章を直ちに全国的に同一の様式に統一することとして、これを全国画一的に通用するものとすることについてはなお問題があり、更に検討を要するものと考える。

四、について

 労働者災害補償保険においては、脊髄損傷、頭部外傷等の傷病により常態として介助を必要とする者について、当該患者を対象として、原則として四人につき一人の割合で特別看護を認めているが、当該患者の症状いかんによつては、担当医師の意見に基づき、特別看護の担当者の配置について特別な措置を採ることとしている。

五、について

 労働者災害補償保険は、これまで数次の法律改正によつて給付改善を行つてきており、障害補償給付についても一時金の年金化、年金についてのいわゆるスライド制の実施等の措置を講じてきたところであるが、このような法改正が行われる場合に、制度改善前に支給された給付と制度改善後に支給される給付との間に格差が生じる場合のあることは、制度上やむを得ないものと考える。