質問主意書

第72回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三号

内閣参質七二第一三号

  昭和四十九年三月二十六日

内閣総理大臣 田中 角榮   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員田中一君提出建設労働環境の改善と労働力の確保等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員田中一君提出建設労働環境の改善と労働力確保等に関する質問に対する答弁書

一、について

 建設産業は労働災害の多発業種であるため、政府としては従来労働災害防止対策の重点業種として労働安全衛生法等に基づく監督指導を進めてきたところであり、今後とも次の諸対策を推進したいと考えている。
 なお、週休二日制の普及促進等労働時間の改善についても実情に応じて段階的に推進するよう指導に努めているところであり、そのため昨年来建設業の業態の実情に即して、まず、建設労働者の休日の特定化(雨天休日の慣行を改めて、例えば晴雨にかかわらず日曜休日制を確立すること)を推進しているところである。

(一) 新工法、新技術等の採用時における労働災害防止面からの事前検討を行う。
(二) 発注者等に対し、設計、施工法、工期、工程等について作業時の労働者の安全衛生が確保されるよう十分な配慮をするよう指導し、協力を求める。
(三) 元方事業者にその下請の労働者の安全衛生をも確保するため、総合的な安全衛生活動を行うよう指導し、監督する。
(四) 職長及び現場監督者等に対する安全衛生教育の促進と必要な援助を行う。
(五) 作業主任者、就業制限業務に従事する者等の教育、育成に努める。
(六) 危険な作業箇所、設備等について安全点検制度を確立し、その普及を図る。
(七) 墜落災害、建設機械による災害等重篤な災害についての重点的な防止対策の推進を図る。
(八) 潜函作業、地下作業等、酸素欠乏症や高気圧障害などの発生をもたらすおそれのある作業場における防止体制の確立を図る。
(九) 有機溶剤等を使用する塗装、洗浄等の作業を伴う工事における作業環境面での整備と関係労働者に対する健康診断の実施の促進を図る。
(十) 粉じん作業を伴う工事における工法上の改善、設備の整備及び関係労働者の健康診断の実施を図る。

二、について

 建設業における事業別、災害別及び曜日別の死亡災害の発生状況は、別添参考資料に示すとおりであるが、これらの災害発生については、その起因として最近特に次のような点が注目される。

(一) 工事の大型化、超高層化等が急速に進展し災害の潜在危険性が増加しつつあること。
(二) 車両系の重建設機械等の使用が増加し、労働態様が変化したこと。
(三) 技能労働者が不足した結果、未熟練労働者及び高年齢労働者に依存する度合が高くなつたこと。
(四) 公共工事等の活発化により工事量が増加したことなど。

三、について

1 公共工事の発注に際し工期を定める場合、日曜及び祝日、雨天等の作業不能日数を見込んだ不稼動日数を所要作業日数に加算して決定している。また、民間工事については、建設業界に対し、日曜・祝日休日制を一層推進するよう通達し、その普及に努めている。
2 公共の土木建築工事の発注に際し工期を定める場合の月間稼動日数は、その月の日数から日曜、祝日及び雨天等による不稼動日数を差し引いた日数としている。年間稼動日数は、年間日数から同様に不稼動日数を差し引いた日数としている。
3 公共工事の発注に際し工期を定める場合、一日当たりの労働時間は、特殊な場合を除き、八時間としている。
4 建設省地方建設局、都道府県等の公共工事発注機関においては、日曜、祝日、天候等を考慮し、適正と思われる基準によつて工期を設定しているが、一部には、通達の趣旨が徹底されていない例も見受けられる。
 なお、建設業界では、日曜全休の推進については、おおむね積極的な姿勢をとつているが、建設工事現場における実施状況をみると一か月に二日曜日を休みとするところが最も多く、日曜全休を完全に実施しているところは少ない。
5 工事施工方法及び工程管理に対する発注者側の現場監督員の指導については、発注機関において研修等を行い、技術の向上に努めている。
 また、施行業者側の作業主任者については、指定教習機関が行う技能講習を修了した者を充てることになつているので、関係団体等を指定教習機関として指定し、計画的に必要な作業主任者の育成を図つている。
6 建設工事の下請契約の締結については、下請負人において労働条件の適正化及び労働災害の防止が図られるよう、適正な工期の設定、必要な安全費の積算計上等の措置を講ずるよう、建設業者に対し指導している。

四、について

 労働力需給のひつ迫基調が続く中で、労働力構成は高齢化の傾向にあり、建設業においても若年労働力及び技能労働力の不足が問題になつているところである。
 このため、政府においては、建設労働者の労働条件の向上、雇用関係の明確化、通年雇用の促進、季節移動労働者対策の充実、労働福祉の向上、職業訓練の充実等の対策を推進するとともに、建設業法による業界指導等を通じて建設業の近代化に努めているところである。
 しかしながら、建設業における雇用問題の解決に当たつては、建設産業の特殊性を含めて総合的に検討する必要があるので、昭和四十七年十一月、総理府に置かれている雇用審議会(会長有沢広己)に専門委員会を設置し、現在、建設労働問題の審議をお願いしているところである。
 政府としては、この審議結果をまつて、建設業における雇用対策の充実に一層努力してまいる所存である。

五、について

 総理府「労働力調査」によると、建設業就業者数は四四〇万人(昭和四十七年度平均)、一方出稼労働者六〇万人(労働省推定)のうち建設業へ就労する者の割合は六六%(農林省「農家就業動向調査」(昭和四十七年)による)であり、これらから推計すると、建設労働者に占める出稼労働者の割合は九%に上り、他産業に比べて高くなつている。
 しかし、出稼労働者を含む建設業の臨時・日雇労働者の割合は別添参考資料のとおり、著しく減少してきている。

六、について

 公共職業訓練及び事業内認定職業訓練の実施状況については、昭和四十八年度において公共職業訓練(養成訓練、能力再開発訓練)にあつては約九万人、事業内訓練にあつては約八万人を対象としている。
 そのうち、建設関係職種の訓練は、おおむね四割を占めている(別添参考資料)。
 昭和四十八年三月に公共職業訓練を修了した者の就業状況については、他人に雇用された者が約八割から九割を占め(養成訓練九四%、能力再開発訓練七八%)、自営又は家族従事者は一割に満たない。
 また、就業先の事業所の規模別状況をみると、三百人未満の中小規模事業所に就職する者が多く、その割合は約七割から八割を占めている。
 職業訓練修了者の職場定着状況については、公共職業訓練の場合、建設業に関してはかなり高くなつている(別添参考資料)。
 また、昭和四十八年における技能労働力の不足状況については、全職種では不足率が二〇・五%であり、事業所規模では中小規模になるに従つて不足率が高い。建設関係の業種については一般的に不足率が高くなつている(別添参考資料)。

参考資料 1/4

参考資料 2/4

参考資料 3/4

参考資料 4/4