質問主意書

第72回国会(常会)

答弁書


答弁書第六号

内閣参質七二第六号

  昭和四十九年二月十五日

内閣総理大臣 田中 角榮   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員喜屋武眞榮君提出沖繩国際海洋博覧会に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員喜屋武眞榮君提出沖繩国際海洋博覧会に関する質問に対する答弁書

一、について

 沖繩国際海洋博覧会の準備段階における御指摘のような事態については、極力そのような事態のないよう配慮しており、自然環境の保全、文化財の保護、第一次産業を始めとする地場産業の振興、物価対策等について、沖繩県とも緊密な協力体制をとりつつ、沖繩の振興開発を図る上で必要不可欠なものである海洋博関連事業の推進に積極的に対処してまいりたい。
 また、沖繩振興開発計画は、長期的な視野にたつた総合的なマスタープランであり、いま直ちに計画の再検討を行う必要はないが、今後とも計画の基本的目標である本土との格差是正、社会資本の整備等に支障を来すことのないよう、十分な配慮を払つて所要の施策を進めてまいりたい。

二、について

 海洋博開催のためには、会場周辺の宿泊施設の整備が不可欠であり、この多くを民間に期待するとともに、沖繩振興開発金融公庫からの融資等助成措置を講じてきたところである。
 海洋博の開会日の変更に当たつては、関係業者に悪影響を与えないよう十分に考慮し、延期幅を四カ月半にとどめ、昭和五十年七月二十日に開催することとしたものである。

三、について

 海洋博の観客数については、現在、関係省庁間で、その見通し及び輸送宿泊対策を検討中である。従来のアンケート調査等によれば、海洋博への参加を希望する者は、多数にのぼつているので、総需要抑制や海洋博の開会日の変更によつても、観客数の見通しを基本的に変更する必要はないものと考えているが、なお今後、新しい時点での海洋博への参加の希望者数のは握に努めることとしたい。
 また、輸送対策についても、会期の変更前から、観客輸送需要が、夏場に集中するであろうとの前提に立つて対策を検討してきたので、今回の会期の変更によつて輸送対策を大幅に変更する必要はないものと考える。

四、について

1 沖繩海洋博関連事業における昭和四十八年十二月末日現在の本土からの受入れ労働者の数は、沖繩県の調査によると、約一、七〇〇人であり、その内訳は、請負業者の雇用している労働者、直接募集による労働者及び職業安定機関の紹介による労働者である。
2 本土からの技能者の賃金は、沖繩の同種技能者の賃金と比較して若干これを上回つている状況にある。
 賃金は、本来労使が自主的に決めるものであり、政府としては賃金を抑制する考えはないが、沖繩海洋博関連事業の進展に伴い、必要な労働力の確保の円滑化に努めるとともに、沖繩県建設業雇用促進協会等関係機関の緊密な運けいにより求人秩序の確立を図る等労働力の需給関係から地元労働市場に混乱を来さないよう配慮しているところであり、今後とも最大限の努力をしてまいる所存である。
3 沖繩県建設業雇用促進協会は、昭和四十八年七月二日に設立され、労働力確保のための広報活動、労働災害防止活動、労務管理の改善指導等の業務を行つている。
4 地場産業就業者の安定確保については、沖繩海洋博関連事業の計画的実施に配意しつつ関係機関との密接な連けいをとり求人秩序の確立を図る等地元に無用の混乱を引き起さないよう十分配慮してまいる所存である。
5 我が国は全般的には労働力不足の傾向にあるが、すべての労働者の能力が十分生かされているとはいえない状況にあるので、外国人労働者の受入れは行わない方針である。沖繩海洋博開催時のホテル労働者についても、この方針に沿つて対処してまいる所存である。
6 沖繩海洋博は、沖繩振興開発計画の一環として行われる事業であり、沖繩海洋博終了後も、同計画に基づく諸事業は引き続き推進されることとなつているので、沖繩海洋博関連事業の終了により労働力の需要が著しく減少することはないものと考える。
 しかし、労働者の職業の安定には慎重な配慮が必要であるので、産業経済の振興を積極的に推進し、就業機会の増大を図る一方、沖繩振興開発特別措置法に基づく職業安定のための特別の措置その他職業紹介、職業指導、職業訓練等必要な措置を講じ、転・雇用対策に万全を期してまいる所存である。

五、について

1 海洋博の開会日の変更に当たつては、石油の供給削減及びこれに伴う経済運営特に総需要抑制策との関連、国際的な配慮等種々の要因を勘案するとともに、夏場に海洋博を開催してほしいという沖繩県の強い要望を受けて、開会日を昭和五十年七月二十日に決定した次第である。
2 海洋博関係の建設工事に伴う資材の確保については、セメント、鋼材等の主要資材について、需要量に応じて本土からの移入体制を採るとともに、電力、石油の使用制限に当たつても、特別の配慮を払い、県内生産の確保を図つてきたところである。
3及び4 復帰後の沖繩においては、海洋博関連事業・沖繩振興開発事業の本格的実施に伴う公共投資の飛躍的増大に加えて、住宅、ホテルを始めとする民間工事が活発化しているが、海洋博推進対策本部関連施設部会を中心として、国、県、市町村、民間一体となつて、海洋博関連事業のみならず、他の公共工事及び民間工事も含めてこれら事業を円滑に執行推進するため、労務及び資材の需要量の見通しをたて、これを円滑に確保するための対策を検討し実施してきた。
 昨年十一月以降のエネルギーの供給削減措置の実施に当たり、沖繩については特別の配慮を払うことにより、資材の生産及び供給に対する影響を最小限にとどめることとしている。更に、海洋博関連事業のために必要となる資材については、海洋博関連事業以外の一般の事業のために必要とする資材を圧迫しないよう出荷を配慮する旨、昨年十二月十日の関連施設部会で確認しているところである。今後も関連施設部会における検討をもとに随時適切な対策をたてることとしたい。
 昨年五月八日に決定した、昭和四十八年度の労務、資材の需給見通しは、過去のデーター不足や、事業執行の遅れ等もあつて、若干実情を上回る傾向にあるが、現在、昭和四十八年度の見直しと併せて、四十九年度の見通しについて、実績との対比を行いながら鋭意作業を行つているところである。

六、について

 伊江島空港は、海洋博の観客輸送の一環として会場に直結する隣接地に整備されるもので、乗客の大半が会場への経由地として利用することが想定されている。従つて、海洋博関連公共事業計画においても空港の設置は計画されたが、関連送水事業としては本部半島にとどめられている。
 なお、本部半島用水供給計画は、一日当たり二一、〇〇〇トンの送水計画で設計施工されており、海洋博開催期間中は同施設より更に分水する余裕はない。

七、について

 沖繩県の医療水準を向上させるため、昭和四十七・四十八両年度に引き続き四十九年度予算においても、国費による本土からの医師等の派遣及びへき地診療所への医師の派遣に対する助成の充実を図るとともに、県立病院、伝染病院隔離病舎、救急医療センター、へき地診療所の施設を整備するほか、国立病院、琉大附属病院を拡充し、更に、県立病院、沖繩赤十字病院等公的医療機関の設備の整備を促進し、沖繩県の医療体制についてその急速な整備を図つていくこととしている。
 海洋博会場内における医療の確保については、海洋博協会が中心となつてその整備を進めており、会場建設中の労働災害等に対処するため、労災診療所を設けるとともに、これを海洋博開催期間中会場内の診療所として利用するほか、併せて会場内に医師の常駐する診療所、救護所等を設置し、入場者の医療に当たることとしている。
 このほか、会場周辺における医療施設としては、前記の医療施設の整備の一環として県立名護病院及び名護保健所を整備拡充するとともに、伝染病院隔離病舎及び救急医療センターが設置されることになつている。
 また、海洋博開催時におけるこれら医療施設の医療要員の確保については、沖繩県と協議して具体策の検討を行つている

八、について

 海洋博の会場工事及び関連公共事業工事においては、海洋汚染、景観・自然破壊等を生じることのないよう環境保全の面にも留意して進めているが、今後とも十分配慮を払つてまいりたい。
 また、海洋博会場内の文化財については、これらをすべて保存し得る会場計画を策定し、これに基づいて造成工事等を行つている。
 なお、環境庁の職員の派遣については、必要に応じ、検討してまいりたい。

九、について

 国際博覧会条約に基づく会期後に海洋博会場で再び博覧会を開催するといういわゆるアンコール・フェアについては、会期後の海洋博会場の後利用及び周辺開発と関連づけて、関係者の意見を広く徴しつつ、その可否、開催する場合の開催主体、運営費の負担等について検討してまいりたい。

一〇、について

 海洋博においては、大阪万博と異なり、会場施設を本部半島に形成される国際的なリゾート・ゾーンの中核施設の一つとすることが、沖繩振興開発計画等で定められている。
 具体的な管理運営主体、管理運営費等の問題については、地元沖繩県を始め関係者の意見を十分に聴き、できるだけ早期に決定したい。