質問主意書

第72回国会(常会)

質問主意書


質問第六号

沖繩国際海洋博覧会に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十九年二月七日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   沖繩国際海洋博覧会に関する質問主意書

一、沖繩振興開発との関係

 沖繩国際海洋博は、当初は沖繩と本土の格差是正と地域開発、社会・産業基盤の整備を促進するものであり、沖繩振興開発の起爆剤として位置づけられ強調されてきた。しかし、これを推進する過程で本土にもました異常な物価上昇、第一次産業の破壊、土地買占めと乱開発、自然環境・文化財の破壊などが起こると共に、いつの間にか海洋博自体が優先され、沖繩振興開発は海洋博を補完するという内容に変質してしまつている感がある。
 そこで政府は、現在の海洋博推進の在り方が沖繩経済及び県民生活にどういう影響を与えていると考えているか。また、海洋博との関係において沖繩振興開発計画は予定どおり施行されていると考えているのか。同計画全体を再検討すべきではないか。

二、開発延期による損害補償

 総需要抑制の情勢下においても「海洋博は国家事業であり、延期も中止もしない」というのが政府の方針であつたが、これが延期されたことにより、関係業者へ与えた損害は計りしれないものがある。
 そこで、まず政府は観客宿泊施設のうち民間のホテル・旅館・民泊施設に頼る宿泊数をどれだけ見積り、そのため関係業者へその建設促進をどのように指導してきたのか。また、各業者は五〇年三月開催をメドに施設建設や宿泊予約をすすめてきたため、延期によつて銀行借り入れによる建築の金利返済、予約取消などの損害が生ずることになるが、政府はこれにたいして損害補償又は助成措置を講ずるべきであると考えるが、どうか。

三、観客数

 観客数の見積りは五〇〇万人であつたが、開催延期が冬場にまたがるうえ総需要抑制という社会情勢の変化により、その数の減少が予想されるが、見通しをどうたてているか。また、海洋博の性格からして観客は夏場の上半期に集中すると思われるが、その点、輸送(県外、県内)、宿泊等の体制をあらためて検討する必要があるのではないか。

四、労働力の確保

 四十八年度の海洋博及び関連事業における労働力の需要は五万人と算定されているが、そのうち沖繩県の供給能力が失業者等の充当を含めて四万五千人といわれ、結局五千人の不足が見込まれている。政府は、この不足分については責任をもつて県外(本土)から導入すると言明してきている。一方では、労働事情に関する諸問題が起きている。そこで、 

1 現在、本土から導入されている労働者の数はいくらか。それはどのようなルートで導入しているのか。
2 本土労働者のほとんどは技術者であるといわれているが、沖繩の同種技術者と比較して賃金・待遇内容ほどうなつているのか。導入により沖繩の労賃つり上げに拍車をかけている面があるが、その歯止め策は講じられているのか。
3 昨年、海洋博推進対策本部関連施設部会は、求人の調整及び受入態勢の整備促進のため「雇用促進協会(仮称)」を設立する考えを明らかにしたが、その後同協会は設立され業務を開始しているのか。
4 そもそも、海洋博及び関連事業だけに沖繩県内から四万五千人の労働者をかき集めようとするところに非常な無理がある。その結果、第一次産業及び中小零細企業の工場や商店からの労働者引き抜きが起り、同業の経営に深刻な影響を及ぼしている。このような引き抜きを防止し、第一次産業及び中小零細企業就業者の安定確保のための方策を明らかにされたい。
5 ホテル業界の一部において海洋博時に韓国から女子労働者を導入しようとする動きがあるが、これはパイン産業への導入例と性格を異にし、沖繩の労働市場を混乱させるものであり、断じて認めるべきではないと考える。政府の見解はどうか。
6 海洋博及び関連事業終了後の労働者転・雇用の保障は重大な社会問題に発展する虞れがある。政府の転・雇用対策を明らかにせよ。

五、工事進行及び資材確保

1 海洋博延期決定は、現地への調査団派遣、関係省庁及び地元との協議などで決められてきたと思うが、延期幅を三ケ月にした根拠は何か。
2 三ケ月延期によつても資材確保の特別割当て等の優先策を講じなければ工事に支障がでると考える。資材の特別確保についての具体的措置があれば明示されたい。
3 海洋博関連施設部会は昨年五月八日に「昭和四八年度主要建設資材の需給見通し」を明らかにしたが、その後の総需要抑制という情勢変化にあつて各種資材の生産量に大幅な減少が予想され、当時の供給見通しは当然再検討されなければならないと思う。そこで、今日の時点における各主要建設資材の県内及び県外の供給量見通しについて、あらためて数字で明らかにしてもらいたい。
4 海洋博及び関連工事の資材需要がぼう大なため学校、公営住宅、道路など県・市町村公共工事や一般住宅など民間工事が中断したり、着工できないケースが続出している。政府は、海洋博工事の影響を受けている自治体及び民間工事の資材確保について有効な対策を講ずるべきではないか。

六、伊江島への送水

 伊江島空港建設で観客輸送増強がおこなわれるにもかかわらず、同島の水確保問題がおざなりにされている感がある。当然、海洋博治水事業の一環として同島への送水工事を進めるべきではないか。

七、医療対策

 海洋博医療対策の予算は政府と海洋博協会の責任で確保することになつているが、海洋博期間中の医療体制のみが優先されたり、四十九年度政府予算案で沖繩医療関係費が大幅削減されたりしており、海洋博及び地域医療体制に大きな問題を投げかけている。そこで、政府の海洋博医療対策計画とその予算面を伺いたい。

八、環境保全

 海洋博及び関連事業の工事において環境保全対策がおろそかにされ、すでに各地の重要埋蔵文化財や沖繩の美しい自然環境が破壊されつつあり、「環境汚染なき工事、廃棄物の完全処理など環境保全に万全を期す」という政府の海洋博方針が単なるお題目になつている。政府は、直ちに県と協力して、これら工事において自然環境保全対策を強化すべきである。その施策を示されたい。その一策として、環境庁は専門官の派遣等により現地指導を行うべきではないか。

九、アンコール・フェア

 今回の開催延期にあたつて、アンコール・フェア(条約にもとづかない国内博)を数ケ月間続開したらどうかという意見があつたが、現在の政府の見解はどうなつているのか。また、開く場合どこが開催責任者となるのか。各国の出展物の維持管理費など経費はどうなつているのか。

一〇、跡地利用

 大阪万博とは異なつて、沖繩海洋博は行事終了後の各施設及び跡地利用について、今日の段階から明らかにされていなければならない。そこで、会場施設及び跡地の管理運営の主体、維持費などについて、その基本方針を示されたい。

  右質問する。