質問主意書

第71回国会(特別会)

答弁書


答弁書第二六号

内閣参質七一第二六号
  昭和四十八年十月九日

内閣総理大臣臨時代理                
国務大臣 三木 武夫      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員藤原房雄君提出畜産経営危機の緊急対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤原房雄君提出畜産経営危機の緊急対策に関する質問に対する答弁書

一、について

(1) 加工原料乳の保証価格については、去る三月末に保証価格が決定されて以降、賃金その他の諸物価の上昇に加えて最近は配合飼料価格が更に値上げされる等保証価格を引き上げる要因はあるものの、他方乳廃牛価格の高騰及び子牛価格の上昇がみられる等保証価格を引き下げる要因もかなり認められる実情にある。
 現在入手可能なデータをもとにこれらの諸要素をすべて織り込んで考えれば、配合飼料価格の値上がりによつても保証価格の引き上げを必要とするとは断じ難いところであるが、可及的に最新時点のデータを収集しつつ慎重に検討する所存である。
(2) 豚肉の安定基準価格については、九月末における豚肉卸売価格がキログラム当たり四七〇円前後で推移しており、今後においては、同水準をやや上回る水準(キログラム当たり四七〇円ないし五〇〇円)で推移すると見込まれ、畜産振興事業団が「畜産物の価格安定等に関する法律」に基づき豚肉の買入れを行う際の基準となる安定基準価格(キログラム当たり三八〇円)を大幅に上回つているので、これらの諸事情を勘案して慎重に検討する必要があると考えている。

二、について

(1) 飼料の購入等の資金は性格的には運転資金であり、運転資金に対する融資は通常ごく短期で実施されている。しかし、今回の配合飼料価格の値上がりの畜産経営に及ぼす影響を緩和するための低利資金の融通措置を講ずるに当たつては、畜産経営の急激な負担増を分散緩和するという考え方のもとに償還期限を二年以内としているところである
 なお、貸付利率については末端金利が四パーセントとなるよう国及び都道府県が利子負担軽減措置を講ずることとしている。
(2) 昭和四十八年十月以降、配合飼料価格安定基金は、新たに特別積立基金を設け、畜産農家に対して昭和四十八年十月から昭和四十九年三月までトン当たり平均三、〇〇〇円の補てんを行うこととしているが、補てんに必要な特別積立基金の資金のうち補てんの時期までの積立金ではなお不足する額については、国において措置することとし、現在その措置の内容について検討しているところである。

三、について

(1) 鶏卵価格の安定を図るため引き続き鶏卵の生産調整を実施してまいりたい。
 また、全国液卵公社の鶏卵の買入れについては、既に飼料価格の値上がりによる生産費の上昇等を考慮して、本年五月に買入れ価格の引き上げが行われるとともに、買入数量についても拡大が図られたところであり、更にその拡大を図ることについては、今後検討すべきものと考えている。
 なお、鶏卵については、価格の安定を図るため、鶏卵価格安定基金による補てんや全国液卵公社による買入れ等とあいまつて「畜産物の価格安定等に関する法律」に基づき鶏卵価格の低落時に生産者団体が調整保管した場合保管経費の一部が畜産振興事業団から助成されることとなつている。
 ブロイラーについては、歴史も浅く、規格格付が行われていない等流通条件が未整備であるので、「畜産物の価格安定等に関する法律」の対象とすることは現段階においては問題が多いと考えている。
(2) 飲用乳価については、地域の需給に応じて自由に形成されるべきものであり、国民生活審議会消費者保護部会の勧告もあつて、従来行つてきた行政当局による価格指導は昭和四十二年以降行つておらず、基本的には生産・処理・販売の各段階相互の話合いのうえで形成されるべきものであると考えている。
 しかしながら、酪農の健全な発展と消費者に対する牛乳等の適切な供給を図るため、飲用乳価値上げの動きに対してもこれを注意深く見守るとともに、無用の混乱によつて酪農家や消費者が迷惑をこうむることのないように配意してまいる所存である。

四、について

(1) 飼料自給体制の強化については、草地開発事業等を拡充するとともに、稲作から飼料作物への転換の促進をはじめ既耕地における飼料作物の生産利用の促進を図つているところであるが、なお一層その充実につき検討してまいりたい。
 また、飼料作物に対する生産奨励金については、昭和四十九年度予算編成の段階で検討してまいりたい。
(2) 我が国は濃厚飼料の大半を海外に依存しているため、国内の飼料需給は海外諸国の生産輸出動向によつて影響を受けやすくなつており、一国に対する依存率が極めて高いことは、飼料原料を安定的に確保するうえで問題があると考えている。
 従つて、今後、輸入先の多元化等輸入飼料原料の安定的確保の方策についても検討してまいりたい。
(3) 政府操作飼料については、飼料需給動向を勘案しつつその需給の安定を図るよう配慮してまいりたい。
 また、備蓄等輸入飼料原料の安定的確保のための方策については、今後の国際需給動向をも見極めつつ検討することとしたい。
(4) 山村、農村等の山林原野等の低位利用地を開発しで草地の造成や利用施設の整備を進めるなどこれらの地域における酪農の振興を図つているところであり、今後ともその充実強化に努めてまいりたい。

五、について

 防衛庁は、ナイキ及びホーク各ミサイルの射場施設を国内に設置するため、昭和四十六年十二月、青森県西津軽郡車力村内の用地を購入し、現在まで地元との間で調整が続けられているが、いまだに見通しが立たない状況にあり、同庁においては、現在、設置計画の再検討をしているところである。
 青森県及び車力村から養豚事業その他の地元の産業振興のため前記の用地を同村に払い下げられたい旨の要請があるが、この要請については、前述の防衛庁による再検討の結果をまつて対処してまいりたい。