質問主意書

第71回国会(特別会)

答弁書


答弁書第二五号

内閣参質七一第二五号
  昭和四十八年十月二日

内閣総理大臣臨時代理                
国務大臣 三木 武夫      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員鈴木強君提出不動産登記法第百五条についての法務省民事局長通達に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員鈴木強君提出不動産登記法第百五条についての法務省民事局長通達に関する再質問に対する答弁書

一、について

 Bの本登記がされると、その登記の順位は、仮登記の順位によることになるので、仮登記後に所有者がAであることを前提としてされたC、Dの仮差押、X´の任意競売申立て及びZの賃借権設定の各登記は、Bの本登記とは両立し得ない登記となる。なお、X´が二番抵当権者Xと同一人であり、X´の任意競売申立ての登記が二番抵当権に基づくものであれば、X´の任意競売申立ての登記は、Bの本登記と両立し得ると考える。

二、について

 Bの本登記とは両立し得ない登記の登記名義人だからである。
 不動産登記法第百五条は、公示上の混乱を防止するため、このような利害関係人の登記を抹消すべきものとしているが、利害関係人の利益が侵害されるのを防止するため、仮登記に基づく本登記の際に、その承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本の提出が必要であるとしている。従つて、Bとしては、利害関係人に対する本登記の承諾請求という形でその権利を行使すべきである。

三、について

 Bの本登記がされるとAが所有者であることを前提としてされた登記と、これと両立し得ないBの本登記及びこれを前提とする登記が混在し、公示上混乱を生ずることとなる。

四、について

 E、Fの登記がないときには、Bの本登記についての登記上利害関係を有する者が存在しないこととなるので、Bは利害関係人の承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本なしに本登記をすることができる。

五、について

 例えば、Bが本登記をする前にB´の本登記がされていたとすると、BとBの所有名義が併存することになるという趣旨である。

六、について

 Eは、Aから所有権移転を受け、Fは更にEから所有権移転を受けているので、登記簿上は、同じくAから所有権の移転を受けたBとFの登記名義が併存する。また、例えば、B、B´がともに本登記をしたとすると、B、B´及びFは、ともにAから所有権の移転を受けたものとして三者の登記名義が併存することとなる。このような状態を放置した場合これらの者の権利の優劣を登記簿に記載された受付番号のみによつて判断することは不可能であり不動産に関する権利関係を明確に公示するという登記制度の趣旨に反する。

七、について

 承諾する義務があるかどうかについて争いがある場合には、最終的には訴訟によつて解決を図ることにならざるを得ない。

八、について

 登記簿上、不動産に関する権利関係が明確に公示されることになつたので混乱が生じなくなつたという趣旨であつて、訴訟の実態について述べたものではない。
 また、利害関係人の承諾書又はこれに対抗することを得べき裁判の謄本等の件数についての統計はとつていない。

九、について

 不動産登記法第百五条の規定により、本登記の際に登記官が職権で抹消すべきである。なお裁判所がBの本登記を解除条件とする決定をすることができるかどうかは、裁判所が判断すべきことであるので、答弁を差し控える

一〇、及び一一、について

 X´が二番抵当権者Xと同一人であり、X´の任意競売申立ての登記が二番抵当権に基づくものであれば、X´の承諾書の添付を要しないものと考える。この場合には、Bの本登記により、X´の任意競売申立ての登記は、抹消されることにならない。

一二、について

 Bは売買又は代物弁済により所有権の移転を受けることができる。また、Bが仮登記に基づく本登記とは別個に所有権取得の登記をする場合は別として、C、D及びZの登記を残存せしめたままで仮登記に基づく本登記をすることはできない。
 御指摘の通達(昭和三十六年二月七日民事甲第三五五号法務省民事局長回答を指すものと思われる。)は、不動産登記法第百五条の解釈をそのまま示したものである。

一三、について

 公示上の混乱を防止し、不動産取引の安全を保護するためには、現行の制度が適切であり、法律改正の必要はない。

一四、について

 利害関係人の登記が抹消されていない場合には、第三者がその不動産について取引きをしてもその地位は極めて不安定なものであり、かえつて取引きの円滑が阻害されるという趣旨である。また、Bの本登記を直ちに受理することが仮差押債権者及び抵当権者の権利の保護になるとは考えない。

一五、について

 そのような登記をすることは、不動産登記法上認められない。また、公示上の混乱が解消できるとは考えられない。

一六、について

 仮登記のままで本登記承諾請求をすることが無理であるとは考えない。また、法律改定の必要はない。

一七、について
 具体的な紛争事件については、裁判所の判断が示されれば、それに従う。