質問主意書

第71回国会(特別会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質七一第七号
  昭和四十八年七月十七日

内閣総理大臣 田中 角榮      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員鈴木強君提出不動産登記法第百五条についての法務省民事局長通達に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員鈴木強君提出不動産登記法第百五条についての法務省民事局長通達に関する質問主意書に対する答弁書

一について

1及び2 仮登記に基づく本登記と両立し得ない登記を利害関係人の承諾のもとに抹消して、登記簿による公示の混乱を防止するためである。

二について

1 同一不動産につき登記簿上所有名義が二重に併存する事実があつた。
2 所有権の登記名義人が二人以上存在することになると、第三者からみていずれが真正な所有者か不明になる等公示上の混乱を生じていたが、現行不動産登記法第百五条が設けられた後は、そのような混乱がなくなつた。
3 公示上の混乱がなくなり、取引が円滑になつている。

三について

 第百五条による第三者の権利の登記の抹消は、仮登記に基づく本登記と両立し得ない登記の抹消である。

四について

1 登記簿上存在する。
2 一般的には、不当利得にはならないと考える。
3 第三者は、不測の不利益を受けることにはならない。

五について

1 抹消されないものはない。
2 1で了承されたい。

六について

 公示上の混乱を来す。

七について

 そのような取り扱いはできないと考える。

八について

 仮登記に基づく本登記を効力発生要件とは考えていない。

九について

 利害関係人が正当な事由なしに承諾を拒むときは、承諾を求める訴えを提起することができると考える。

一〇について

 効力に変更を加えたものではない。

一一について

 仮登記権利者が本登記をする条件を備えるに至つたときは、仮登記のままで第三者に対し承諾の意思表示を求めることができるという意味において対抗的な効力があると考える。

一二から一四までについて

 御指摘の通達は、昭和三十六年二月七日付法務省民事局長回答を指すものと思われるが、同回答は、不動産登記法第百五条の解釈をそのまま示したものである。

一五から一八までについて

 東京法務局世田谷出張所の登記官がした具体的な処分の当否については、現在、裁判所において係争中であるので答弁を差し控える。

一九について

1 固定資産税の納税義務者は、固定資産の所有者とされている。この場合の所有者とは、登記済の家屋については、建物登記簿に所有者として登記されている者をいうものである。従つて、登記簿上所有者として登記されていない新所有者については納税義務は生じない。
2 当該家屋は登記済のものであるので、賦課期日において建物登記簿に所有者として登記されている者に対して課されるのであり、新所有者に対しては課されない。
3 旧所有者が、賦課期日において建物登記簿上所有者として登記されている限り納税義務を負うこととなる。

二〇について

 登記上利害関係を有する者の承諾書の添付は、公示上の混乱を防止するという公共の福祉の実現を図るための必要かつ合理的な制約であり、その添付のないものの不受理処分は、憲法第二十九条に違反するものではなく、また、不動産登記法第四十九条第八号及び第百五条第一項の規定に該当するものであるから、何ら法令に違反するものではない。なお、不動産登記法第百五条第一項が憲法第二十九条第一項に違反するものでないことは、昭和四十六年四月二十一日最高裁判所大法廷判決の示すところである。