質問主意書

第71回国会(特別会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質七一第一号
  昭和四十八年一月十二日

内閣総理大臣 田中 角榮      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員峯山昭範君提出水産加工団地の排水処理に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員峯山昭範君提出水産加工団地の排水処理に関する再質問に対する答弁書

一、について

(一) 塩釜の水産加工団地の排水処理施設が当初設計上の排水の水質および量と実際の排水の水質および量との間に大きな差があつたこと等の理由からその機能を発揮することができなかつたことは昭和四十七年十一月十七日付答弁書で述べたとおりであるが、実際の排水の水質および量に相応する排水処理施設としては本来、現在程度の規模内容のものが当然必要であつたと考えられる。
 現在の施設は総工費二億三千九百万円(当初建設した施設からの転用部分二千九百万円を含む。)であり、この建設に当たつて国からの委託費の支出および宮城県の助成があつたことは先の答弁書で述べたところである。
 なお、当初の施設の建設費四千九百万円のうち、前記転用部分(二千九百万円)を差引いた残額二千万円については、公害防止事業団において塩釜市との間の譲渡契約を変更し、この部分の金額をすでに減額ずみである。
(二) 当初建設した排水処理施設のうち、バッチ式曝気槽および処理水槽は、それぞれ現在の施設の調整槽および汚泥濃縮槽に転用することとしたが、その転用価値については、新しく連続式曝気槽の調整槽、汚泥濃縮槽を建設した場合の費用を四千二百五十万円と見積り、これから転用に伴なう配管、電気設備、槽改良などの経費一千三百五十万円を差し引いて二千九百万円の金額を算定したものである。なお、この点については塩釜市も了解しているところである。

二、について

 共同処理施設の中に併設した化成工場の建設に当たつては、地元水産加工業者よりなる「塩釜市団地水産加工業協同組合」建設委員会の化成部会において検討し、機種の決定もその要望に従つて行なつたものである。
 同施設は、昭和四十三年十二月同協同組合に引き渡され、その後その稼動を完全ならしめるため公害防止事業団において、数回の手直し工事を実施し、同協同組合において操業を続けてきたのであるが、昭和四十六年十二月塩釜市からその経営を魚腸骨処理に専門的知識をもつ民間の業者に委ねた方がより効率的であり、譲渡したい旨の申出があつたので、公害防止事業団もこれを承諾し民間の業者への譲渡がされている。

三、について

ア 塩釜の水産加工団地に当初建設した排水処理施設が、機能を発揮しなかつたため新たな施設の建設が必要となつたこと、その費用負担、国および公害防止事業団のとつた措置は一において述べたとおりであり、これについて市に補償を行なうことは考えていない。
イ 排水処理施設など公害防止施設の費用は先の答弁書で述べたように本来事業者が負担すべきものと考えるが、業種によつては公害防止費用を経営全体の中で吸収できないものもあり、あるいはこれを価格に転嫁することが困難な場合もあるなど難しい問題を多くかかえている。
 したがつて、この問題はひとり塩釜の水産加工団地の問題としてだけでなく、関係業種について今後の産業政策、中小企業対策等において総合的に検討すべきものと考えている。
 また、水産加工業の排水処理には、原料の腐敗しやすさ、漁獲時期および豊凶による操業の不安定、排水中の塩分、産地および加工処理方法による水質変動の多様性等からくる処理技術の困難性ならびに零細な水産加工経営体の処理経費負担能力の乏しさ等多くの問題がある。
 塩釜地域については、政府としても、昭和四十七年から水産物産地流通加工センター形成事業の調査を行なつている。
 本事業においては、市場施設、冷凍冷蔵施設、処理加工施設とともに公害防止施設も国庫補助の対象としているので、今後の加工団地の形成とこれに関連する公害防止施設の整備については十分配慮してゆく所存である。

四、について

 塩釜の水産加工団地の排水処理施設に付属する酵素分解による蛋白質回収施設は廃棄物の処理と有効成分の回収を兼ねたプラントであるが、これの設置に先だち実施したミニプラントでの回収実験では、スケソウの処理廃水から蛋白質の含有量の高い良質のフイッシュ・ソリューブルが得られている。
 また、昭和四十七年九月から十二月までは、スケソウの水揚げが例年に比較して少なく、カレイ類が多かつたこともあり、蛋白質回収施設は全期間を通じ運転されたわけではなく、回収量は予定の量には達していないが、二八トンの魚油と三九トンのフイッシュ・ソリューブルが生産されており、そのうち魚油一五トン、フイッシュ・ソリューブル一七・七トンがすでに販売されている。魚油については、当初の予定販売価格を上廻る価格で販売され、フイッシュ・ソリューブルについては予定販売価格で販売されており、商品価値のある品質であると考えられる。
 なお、蛋白質回収施設は原魚の処理状況に対応し運転条件を調整中であるため、フイッシュ・ソリューブルについては、一部蛋白質の含有量の少ないこと等による品質の変動があり、予定の品質を確保できない製品もあつたが運転条件を調整することにより品質を安定することができる見通しである。

(参考)
一 ミニプラントによる回収実験結果
(一) フイッシュ・ソリューブルの品質
   水分五〇%
   粗蛋白質七〇%(ドライベース)
   粗脂肪一二%(ドライベース)
   粗灰分 八%(ドライベース)

(二) 魚油の品質

酸価 〇・四一~一・三

五、について

 中小企業は公害防止面において様々の障害に直面している。このため政府は中小企業の公害防止対策を積極的に助成することとし、環境保全に対する強い社会的要請に応えるとともに、中小企業の健全な発展をはかることとしている次第である。
 なお、塩釜地区については、三で述べたように目下、水産物産地流通加工センター形成事業の調査を実施しているので、本事業において排水処理施設についても十分配慮してゆく所存である。