質問主意書

第71回国会(特別会)

質問主意書


質問第二六号

畜産経営危機の緊急対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十八年九月二十七日

藤原 房雄      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   畜産経営危機の緊急対策に関する質問主意書

 わが国の畜産は、果樹とならんで農基法農政のもとで成長部門と目され、過去いくたびかの危機にさらされながらも、技術の発達や畜産農家の犠牲的な努力にささえられ、ようやく今日の段階まで発展をみせるに至つている。
 しかし、本年初頭からの飼料価格の急騰は、近年の労賃、諸物価の値上がり、畜産公害の増大、後継者不足等の諸問題とも相まつて、わが国の畜産農家に決定的な打撃を与えつつある。
 この現状は、政府が生産、流通、価格等、総合的な観点からの施策をおこたり、なかでも飼料政策に至つては、米国偏重の外国飼料に依存し、わが国の畜産を加工畜産化へ指向させてきたことに起因するものと考える。しかもなお、政府は、いまだに糊塗的な応急策に終始しようとしている。
 もしも、このままで放置されるならば、畜産農家はもちろん、牛肉、牛乳、豚肉、鶏卵、ブロイラー等々、国民の食生活に不可欠な食糧の安定確保を損うばかりか、インフレで悩む国民経済にも重大な影響を及ぼすことは明白である。
 この意味から、わが国畜産の総合かつ抜本的な改革は緊要な課題といわねばならない。
 よつて、次の諸点について政府の見解を明らかにされたい。

一、加工原料乳保証価格ならびに豚肉安定基準価格の引上げについて

 政府は、最近の激しい経済変動に対処し、「畜産物の価格安定等に関する法律」及び「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」の規定に基づき、早急に畜産振興審議会を開催し、生産者団体等の要求内容に従い、加工原料乳ならびに豚肉の再生産確保を図るため、加工原料乳保証価格および豚肉安定基準価格の大幅な引上げを実施すべきであると考えるが政府はいかに対処する積りか伺いたい。

二、政府決定の飼料緊急対策の改善について

(1) 政府は、先般、四十八年九月から四十九年三月までの間、畜産農家が購入する配合飼料代の一部として四百十億円の資金を融資することを決定したが、この措置は、今でさえ多額の負債に苦しむ畜産農家にとつては歓迎されるものとなつていない。これをより実効あるものとするためには、据置期間と償還期間は長期に延長し、金利も国庫で負担すべきであると考えるが、これに対し、政府は改善の用意はないか。
(2) 四十八年十月以降、配合飼料価格安定基金は、新たに特別積立基金制度を設け、畜産農家にトン当り平均三千円の補てんを実施することとなつているが、この補てんに必要な資金のうち、同期間においてメーカー及び団体が行なう積立によつてなお不足すると見込まれる二百十一億円に対しては、政府が直接助成方式による方策をとるべきである。
 しかも、飼料価格は、今年にはいりトン当り二万円近い値上りをみせ、その総額は、一千億円を越すことが予定されているが、この現状を認識するならば、前述の二百十一億円では到底、価格安定基金としての効果はあがらないことは明らかである。
 よつて政府は、配合飼料価格安定基金への助成については、二百十一億円にとどまることなく、さらに大幅に引上げ、全額国の直接助成方式とすべきであると考えるが、どうか。

三、鶏卵、鶏肉、飲用乳の価格引上げについて

(1) 鶏卵については、需給見通しに基づき、生産調整を考慮すると同時に、市場価格の維持のため、液卵公社による買入れ価格の引上げと買入れ枠の大幅な拡大を実施し、これによつて生ずる売買差損は、全額国が助成すべきである。また、これらの措置に関連して、鶏卵、鶏肉等の価格についても、「畜産物の価格安定等に関する法律」の体系の中に組みこまれるよう早急に検討すべきであると考えるが、政府の考えはどうか。
(2) 政府は、現在、生産者とメーカーによつて行なわれている飲用原料乳価の自主交渉に対しても、大幅な価格引上げが実現されるよう強力な行政指導を実施すべきと考えるが、政府はこれにいかなる方針でのぞむのか伺いたい。

四、飼料の自給体制強化と安定輸入等について

(1) 飼料の自給体制を強化するため、全額国庫補助による大規模な草地開発事業の促進や、裏作、輪作、間作、ならびに集団的栽培方式の育成など、抜本的方策を講ずべきである。そのためにも、政府が予定している飼料作物栽培に対する特別生産奨励金は、より一層強化することが重要と考えるが、政府はいかに考えるか。
(2) 飼料の輸入先は、現在の米国一辺倒の体制を改め、多元化すべきであると考えるが、政府はいかなる方針でこれにのぞむか。
(3) 飼料の輸入に当つては、政府操作飼料の枠を拡大するとともに、不時の事態に対処し得るよう備蓄体制をも強化すべきと考えるが、どうか。
(4) 自給体制の抜本対策とし、また、わが国酪農の抜本的転換対策として広大な潜在適地を有する山地酪農振興の有効性が見込まれるが、政府はどのように考えるか。

五、車力村の国有地払い下げについて

 防衛庁は、先程、青森県西津軽郡車力村における、ミサイル試射場建設計画を断念する旨を発表したが、これに対し、地元車力村では、当該地域を活用し、五十万頭の養豚団地、開畑プラン等にあてるため、強い払い下げの要請を行なつている。
 当該地域は、本来、同村民の入会地であつた経緯からしても、早急に同村へ払い下げるべきであると考えるが、政府はいかに対処する方針か、また、払い下げるとすれば、いつ頃を予定にしているか。

  右質問する。