質問主意書

第71回国会(特別会)

質問主意書


質問第一七号

灯油の値上げ及び売惜しみの防止対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十八年八月十七日

竹田 現照      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   灯油の値上げ及び売惜しみの防止対策に関する質問主意書

 灯油は重要な生活関連物資であるが、北海道、東北などの寒冷地にあつては、その重要性はひとしおである。その灯油の価格について前記の地方では最近急激かつ相当の上昇の動きが見られ、これに伴つて、販売業者の売惜しみが目立ち、消費者に著しい不安を生じている。このような事態を解消するため、この際、早急に適切な対策を講ずる必要がある。
 よつて、次の点について政府の見解を明らかにされたい。
 「生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」に定める特定物資は、さる七月十四日同法施行令によつて指定された。その際、灯油は、当初指定を予定されながら、(イ)まだ需要期になつてないため、値上がりしておらず、指定は時期尚早である。(ロ)灯油貯蔵タンクの容量は明らかであるため、灯油の買占めや売惜しみは不可能である、という理由によつて、特定物資としての指定は行なわれなかつたといわれる。しかし、日本生活協同組合連合会の調べによると、北海道においては灯油一キロリットルあたりの卸価格が四十七年の夏に九千円であつたのが、最近ではすでに一万二千円と三十パーセントも値上げされており、十月以降の需要最盛期にはさらに値上げが行なわれそうだといわれる。そのほか、青森、岩手、山形等においても灯油の値上げがすでに行なわれ、あるいは行なわれようとしている。
 加えて、これら寒冷地においては、需要期を前にして、生活協同組合など消費者団体が灯油販売業者との間に購入契約を締結する時期に達しているが、例年とちがつて、業者が生協との話し合いに応じようとせず、消費者の困惑・不安を招いている。
 また、「生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」の第二条によると、特定物資の指定要件は、「生活関連物資の価格が異常に上昇し又は上昇するおそれがある場合」であつて、「当該生活関連物資の買占め又は売惜しみが行なわれ又は行なわれるおそれがあるとき」である。
 そこで、「異常に」という判断の基準であるが、同法の審議過程における政府委員の答弁によると、ケース・バイ・ケースで考えることを原則としながら、例示として、海外原料価格が非常に暴騰したときには、国内価格がある程度はげしく上昇しても、それが合理的である場合もあるが、国内価格の上昇が不合理であると判断できる場合には同法第二条の構成要件になるという判断基準が述べられている。
 そこで、このほど石油連盟が明らかにした石油精製二十九社の四十七年度下期経理概況によると、輸入原油価格の上昇というマイナス材料はあつたものの、(イ)一般の景気回復に伴つて、販売量が著増したこと、(ロ)需給が窮屈になつたことによつて石油製品市況が堅調となり、ガソリンの値上げも可能となつたこと、(ハ)さる二月のドル切下げおよび円の変動制移行によつて二百一億円の為替差益を計上できたこと、などの好材料が重なつてマイナス材料を完全に消した上に、四百八十四億円の純利益(前年同期比五〇・四%の伸び)という記録的な好決算となつた。このような決算内容を見る限り、灯油の値上げは合理的とは考えられない。
 以上の事実に徴するとき、灯油を「生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」の特定物資として指定することを妨げる積極的理由はなんら存しないのみならず、これの指定は一刻を争うべき急務であり、あわせて、各地における灯油の値上げおよび売惜しみの事態を速かに解消すべきであると考える。
 よつて、次の諸点について政府の回答を求める。

一、「生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」に定める特定物資として、灯油をいつ指定するか。

二、灯油の値上げ防止のためどのような措置をとつており、また今後とろうとするか。

三、灯油販売業者が消費者団体等に対して灯油購入契約の締結を拒み、あるいは灯油供給を妨害している現状に対して、どのような措置をとるか。

  右質問する。