質問主意書

第71回国会(特別会)

質問主意書


質問第九号

PCB・水銀汚染等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十八年七月十六日

峯山 昭範      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   PCB・水銀汚染等に関する質問主意書

 本年の五月二十二日、熊本大学の第二次水俣病研究班報告が発表されて以来、全国各地で水銀汚染の実態が明らかにされ、深刻な様相を呈している。
 また、水産庁が、昨年末魚介類に含まれるPCB調査を行ない、その調査結果を五月に発表し、危険度が高いとみられる八水域を示したこともあつて、水銀にPCBが加わり、魚介類に対する国民の不安が一挙に高まつている。
 その結果、問題になつた水域における魚の漁獲禁止、廃棄処分にとどまらず、関係のない水域の魚介類もその影響をこうむるにいたり、一部ではその市場価格が暴落し、漁獲、販売ができない状況に追いこまれ、零細漁業者、鮮魚商は生活苦にあえいでいるのが現状である。
 このため政府においても、現在、関係省庁を集めた水銀対策推進会議を開き、有機水銀、PCBを含めた対策を協議しているが、いまだに有効な措置が具体化しないため、事態は一向に改善されていないのが現状といえよう。
 政府は、この点を強く認識し、国民の不安、漁民の怒りを解消するために、抜本的な対策を早急に実施すべきである。
 よつて、次の諸点について政府の見解を明らかにされたい。

一、水銀汚染対策について

 政府は本年の六月、水銀等汚染対策推進会議を開き、水銀等対策として、(1)全国的規模で水質、底質、魚介類の環境調査を実施する(2)水俣湾、八代海、有明海、徳山地先、新居浜地先、水島地先、氷見地先、魚津地先、酒田港内の沿岸に立地する水銀関係工場の点検を急ぎ、汚染源についての統一見解を出す等の事項を決定している。
 また、同じく六月に、通産省は水銀を触媒として使用した工場に、水銀の使用量などを報告させている。
 しかしながら、これらは水銀を使用している工場のごく一部に過ぎないのではないかと思われる。
 このため、水銀がどれだけ生産され、どのように使用されているのか、はなはだ不明といわざるを得ない。国民の不安を解消するために、政府は早急に水銀の生産、使用状況を公表し、水銀汚染に対する万全の措置を講ずべきであると考える。
 よつて、次の諸点について政府の回答を求める。
1 水銀の生産、輸入状況について
(イ) 水銀の生産地及び生産工場名
(ロ) 年度別水銀生産量
(ハ) 年度別水銀輸入量と輸入先
2 水銀の使用状況について
(イ) 水銀の使用工場名
(ロ) 水銀使用製品
    ・消費者用製品名とその製造業者
    ・生産工程で触媒等として使用している工場名と生産品名
(ハ) 水銀の在庫量とその保管場所

二、PCB汚染対策について

 PCB汚染は今や世界的な問題であり、一九六六年以降スエーデン各地の魚類をはじめ、世界各地の魚類や鳥類の体内からPCBが検出され、地球全体がPCBによつて汚染されているといつても過言ではない。
 なかでもわが国では一九六八年に発生したカネミ油症事件をはじめとして、琵琶湖等では高濃度の汚染魚が検出されるなど、外国とは比較にならないほどその汚染は著しいといえよう。
 現在のところ、PCBの使用は原則として禁止され、PCB使用製品は一部回収されつつあるとはいうものの、まだ国民生活にとつて必需品である家庭電化製品に使われているものは回収されておらず、また、国民の多数においては現在使用している製品の中にPCBが入つていることすら知らない場合も決して少なくないのが現状である。
 もし、政府がPCBの回収に万全を期するというのであれば、まず次の諸点を国民に公表し、PCB使用製品をなんらかの形で規制するような措置を講ずべきであると考える。
 よつて、次の諸点について政府の回答を求める。
1 製造業者別PCB使用製品名及びその生産量(家庭用製品は詳細に)
2 家庭用製品に使用されているPCB量
3 回収したPCB製品の保管状況及びその処分方法

  右質問する。