質問主意書

第71回国会(特別会)

質問主意書


質問第五号

大牟田市における通称爆発赤痢に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十八年四月十八日

黒柳 明      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   大牟田市における通称爆発赤痢に関する質問主意書

 昭和十二年九月二十五日大牟田市に起きた爆発赤痢事件に関する野辺地慶三氏の報告に疑点がある。政府は野辺地報告に基づいて、現在結論を有すると思われるが、次の諸点について政府の見解を明示されたい。

一、野辺地報告書には、サイホン管工事を中止していたため、危険状態が数カ月持続せられていて、その間不幸にも水道による赤痢流行の世界的記録が惹起されたと記されているがこれは事実か。又中止年月は昭和十二年二月よりとなつているが事実か。

二、厚生省の記録では、水道水の菌混入の個所を定める参考事実として、九月二十五日熊本市城東小学校児童一八九名が遠足の際、正午頃、四ツ山配水池で水道水を飲用し、四九名の赤痢患者と、一三名の保菌者を出したと記録されているが、
(イ) これは事実か。
(ロ) 事実とすれば、常に第三源井水を飲用していた清里村小学校児童は、何故発病しなかつたのか、その理由をどう考えるか。
(ハ) 熊本県報告書(熊本医会誌一四巻四号細谷一雄氏の報告)には、城東小学校児童の病状が記されているが学籍簿の出席及び欠席状況と一致していない。この不合理についてどう考えるか。

三、潜伏時間の不合理について
(イ) 福岡県報告書(福岡県衛生課の報告)では三八時間、熊本県報告書では平均九一時間と記されているが、福岡県報告書では、九月二十三日午後十時の給水だけが大惨事の原因となつているのは何故か。
(ロ) 城東校児童が九月二十五日正午頃、大牟田水道水を飲用し九一時間後の二十九日発病とされているが、これが事実とすれば大牟田市民も二十四、五、六、七日と水道水を飲用しているので患者の発生数が野辺地報告書や厚生省の記録とは違つてくると思われるがどうか。
(ハ) 戸籍受付簿や黒木郁夫氏の文献を調査した結果、潜伏時間とは無関係に、数刻にして死亡者を出しているが、これをどう考えるか。
(ニ) 爆発的な大牟田に比較して城東校児童が非常に軽かつたと記されているが、この矛盾の理由は何か。

四、菌種について
 水道水からは菌は検出されていないのに、患者からは異つた種類の赤痢菌が発見されている。そのため菌種が統一されていない。又福岡県報告書では、菌種を発表していないにも拘らず内務省は駒込B異型Iと発表したが、この不合理は何故か。

五、第三源井水は、水温一九度、水質は日本一を誇つている。流動する清水中では赤痢菌は繁殖しない。かりに厚生省の記録が正しいならば、どのような条件で赤痢菌が繁殖し、想像に絶する罹患者を生む結果になつたか、説明されたい。

六、厚生省の記録では、完全に役に立たないように記録されている濾過機が現在も使用されているが、これはどう説明するか。

七、政府は、豊富な資料(裁判記録、県や市の議会議事録・公文書・戸籍受付簿、学籍簿や学校新聞、医学会の文献、当時の新聞等)を無視し、国会においてあらゆる資料を調べたと答弁したのは、何故か。

八、三井三池染料工場の爆発事故と戸籍受付簿の関連
(イ) 政府は、豊富な資料を無視し、一部の患者台帳のみをもとにして、昨年三月水道原因説を発表したが、疫学的見地から、大牟田市における九月二十六日より二十九日までの戸籍受付簿による死亡者の確認を何故しないのか。又死亡者の分布図を確認しない理由は何か。
(ロ) 本籍と現住所が一致している死亡者の死亡場所が、三井三池染料工業所の周囲にある事実をどう考えるか。黒木郁夫氏によれば工場の周囲に罹患者が多く、四ツ山配水池の近くには罹患者が少ないと明記しているが、この事実を確認してどう考えるか。

  右質問する。