質問主意書

第70回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五号

水産加工団地の排水処理に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十七年十一月十三日

峯山 昭範      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   水産加工団地の排水処理に関する質問主意書

 公害防止と自然環境の保護は、現在最も緊急かつ重要な社会的、政治的課題であり、国民ひとしくその解決を強く要望しているところである。政府は、さきに環境庁を設置し、公害防止、自然環境保全行政の推進にあたつているが、公害の拡散、自然環境の破壊はあとを絶たないところである。これに対する国の責任は極めて重大であり、適切な措置を積極的に取り上げ、強力に推進しなければならない。また一般国民のなかには、公害防止、自然環境保護のために、自ら立ち上つてその推進にあたつている者も数多い。国はこのような国民に対しては、その目的を十分達し得るように協力し、援助を与える責務があることはいうまでもない。
 宮城県塩釜市は、古くから漁港として栄え、それとともに自然的派生として水産加工業が発展し、塩釜市の基幹産業を成している。反面塩釜市は悪臭の強い町としても知られている。このため公害防止が世論化し、公害対策基本法も制定されるに及んで、市の要請に応じて、水産加工業者は悪臭から市民を守り、住みよい町をつくり、また松島湾の水質保全のために立ち上つたのである。水産加工業は漁港の生成発展過程として振興した業種であり、家庭工業的な中小企業者であり、工場はいずれも職住一体をなしており、個々の立場で要請される汚水処理施設を設置することは町政的にも困難であるため、市内に散在する二百六十余の業者が一ヶ所に集まり、工場の集約的団地化を図り、汚水公害防止のための共同処理施設を設置し、汚水を共同処理することによつて、宮城県の定めた水質基準以下にして放流しようとしたのである。しかし、いずれも零細業者であり、工場移転公害防止施設建設のためには資力が乏しいため、市及び公害防止事業団と協議の結果、事業団が施設を建設し、市が四億五千万円で譲り受けたのである。しかしこの施設は、事業団が設計にあたり、調査の不十分、設計のミス等により、排水処理施設は完成の時より機能不全となり、この施設は公害防止施設ではなく公害発生施設であると悪評され、水産加工業者が公害から市民を守ろうとした計画は当初より挫折したのである。零細企業の多い水産加工業では、公害防止施設の設置は、団地化を前提とする共同利用施設の設置によつてはじめて可能となるといつてよい。塩釜市の水産加工団地は全国に魁けて行なわれたものであり、これが成功するか否かは全国各地において重大な関心が示されており、今後のあり方の指針をなすものである。よつてこれらの問題について以下の諸点を質問する。

一、塩釜市の水産加工団地の排水処理施設は、完成の時期において既に機能不全をきたし、その機能回復は不可能と断定されている。これは本施設の建設にあたつた公害防止事業団が、本装置の設計にあたつて行なつた排水調査に誤りがあつたのに基づくもので、公害防止事業団のミスであり、その責任は全面的に事業団が負うべきものである。本施設の費用は二年間据置き、年六分、十八年で事業団に償還することになつているが、この費用及びその改善に要した費用は当然事業団で負担すべきものである。

二、塩釜市の水産加工団地は、水産加工業にかかる公害防止を図るため、全国に魁けて建設されたもので、その成果は全国各地の注視の的になつており、今後この種の公害防止対策について極めて重要な指針をなすものである。これは国の公害防止事業の一つの試験的な役割を果すものである。従つて政府は、塩釜市の加工団地建設を国の事業として実施すべきものとすべきではないか。また公害防止事業団が建設した排水処理施設の機能不全のため、処理技術の開発を図るため、四十六年度よりテストプラントの建設を図り、四十七年度に完成している。しかし、このテストプラントの経費が一日約十万円の薬品代を要し、その他維持管理費を含めて年間一億円の費用を要する。塩釜市は排水処理施設の改善、ベト処理及び償還金等により莫大な経費及び負債を生じ、財政的にも行き詰まりをきたしており、またテストプラント建設の経緯よりみても、国の公害防止研究の一環としてその研究費、施設費全額を国の負担において実施すべきものと思うがどうか。

三、テストプラント稼動のランニングコストはどの程度か、明細に説明されたい。またこれより回収される油分、フイッシュソリューブルが良質で流通性があり、商品化され、コストダウンされることが期待されているが、果して回収される有効成分が商品価値があるかどうか。その見通しを明確にするとともに商品価値が得られない場合はいかに措置するか。

四、水産加工排水処理の資料は世界的にも乏しく、わが国でもまだ開発されていないと思うが、各国及びわが国の現状はどうか。塩釜市はこの難解な問題に取り組み、経済的にも精神的にも大きな犠牲を払うに至つている。国の研究開発が進んでいないことが地元に犠牲を強いていることになつている。国が全力をあげて研究開発を行ない、これに基づいて国が指導をしていかなくてはならないものと思うが、政府は、この研究開発にどのように取り組んでいく方針か具体的に説明されたい。

五、公害防止施設の設置費用は、原則的には企業者が負担し、これに対し、国の助成も行なわれることになつているが、大企業については事業者が行なうことは当然である。しかし塩釜の如く中小企業者が行なう公害防止の施設の整備については、公害対策基本法第二十四条によつても特別な配慮をしなければならないことになつている。塩釜の場合は、国が行なうべき公共的な公害防止施設が完備しておれば、中小企業者にこれ程の犠牲を強いることもなかつたのではないか。第二十四条の規定はいかに生かされて運用されてきているか。また中小企業者については公害防止と一方においてその企業の発展を考慮し、単に助成のみでなく、より積極的な施策が必要と思うが、政府はいかなる方針のもとに具体的にどのような施策をとる考えか。

六、水産加工品に対する需要は増加の一途を辿つている。現在、水産物産地流通加工センター形成事業が行なわれているが、対象地域数も少なく予算的にも貧弱である。政府は画期的な水産加工業振興対策を樹立、実施すべきと思うが、具体的にいかなる対策をもち実施していく方針か明らかにされたい。また、それとともに公害防止対策をどのように実施していく方針かあわせて明らかにされたい。