質問主意書

第69回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四号

当面の緊急な政治課題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十七年七月十二日

鈴木 強      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   当面の緊急な政治課題に関する質問主意書

一、田中内閣は、日中国交正常化について具体的にどら対処するのか、不明確である。
 他国と異なり、日本は中国に対して帝国主義的侵略を行ない、中国に対し甚大な損害を与えた歴史的事実の上に立ち最小限、(1)中華人民共和国は中国の唯一の正統政府であり、(2)台湾は中国の一部であり、(3)日華条約は廃棄すべきであるとの日中国交回復三原則を基本に日中国交の回復を進めるべきだと考えるが、政府の具体的な国交回復の方策を明らかにせよ。

二、南北朝鮮統一に関する七月四日の共同声明は、画期的なできごとであり、今後のアジア情勢に大きな影響を与えるものである。政府はこの急速に転回する情勢を前に、いかなる基本的な外交姿勢で臨もうとしているのか。長い間、植民地支配を行ない朝鮮人民を圧迫してきた国として、また戦後は朝鮮の民族統一を阻害してきたアメリカに追随し多大の迷惑をかけた日本政府は、韓国駐留米軍の撤退、国連における朝鮮民主主義人民共和国に対する非難決議の取消しを要求し、日韓条約を廃棄し、朝鮮民主主義人民共和国を正式に承認し、その国連加盟を積極的に支持すべきであると考えるが、政府の態度を明らかにされたい。

三、ベトナム爆撃に使用されている米軍B52爆撃機の沖縄基地への飛来は、祖国復帰後間もない沖縄県民の不安を増大させている。これに対して田中首相は「困る困るといつておれば、来なくなるよ」と放言しているが、これは極めて不誠実、無責任な発言であり、許すことはできない。また外務省の態度も相変らず対米追随の姿勢を示している。
 今後、政府は理由の如何を問わず沖縄を含む日本の基地にB52を一切飛来させず、さらにベトナム戦争のために日本の基地を一切使用させないことを明確に表明するとともに、このことを米政府に対して厳重に申し入れるべきである。また前佐藤内閣は事前協議制の再検討を行なうと約束しておきながら、それすら放置していることは、甚しく怠慢である。これらの諸点につき、国民の不安を解くために明確な回答を求める。

四、最近の集中豪雨は、各地に甚大な被害をもたらし、多数の死傷者を続出せしめ、日本列島そのものが、激甚災害となつている。しかるに自民党と政府は、総裁選と派閥抗争に明けくれてこの重大な事態を認識せず緊急かつ応急対策すらとつていないのは甚だ遺憾である。とくに田中首相は、拡大しつつある災害をよそにゴルフに興じ、国会の要請にも応じないという態度は、国民無視もはなはだしい。一刻も早く災害に対する適切な緊急措置をとるべきではないか。

五、四十七年度産米に対する米価の決定も緊急の課題である。米価問題については当然、食管制度堅持の原則に立つて、生産者米価は、農家の生産費と所得補償方式による生産者米価を、また消費者米価は諸物価高騰の折からこれを据置くという二重米価方式をとるべきである。
 この観点から、政府は生産者米価をいかなる原則でどれだけ引き上げ、消費者米価をどのように措置しようとしているのか、またそれらの正式決定の時期はいつ行なうのか具体的に回答されたい。

六、田中首相は、組閣完了後、直ちに国会を通じて内閣としての所信表明を進んで行なうべきであるにもかかわらず、これを行なわないばかりでなく、野党各党が一致した要求に対してもこれを拒否した。のみならず、当面の山積する諸問題に対する緊急質問の要求にすら応ぜず、緊急を要する国民的課題に対応することを怠りながら、他の場においては、国会解散問題にまで発言を行なつているがこれは甚しい国会軽視であり断じて容認できない。また、自民党の総裁選挙をめぐつて、国民的批判を浴び、自民党総務会でも問題となつたいわめる黒い霧問題は、自民党政府の腐敗した金権主義の本質を暴露したものである。
 田中首相は、自民党総裁として、これら政治不信の重要な要因となつている諸問題について国民に対して明確な態度を表明すべきであるがどうか。これらの問題と関連して公正な選挙を行ない政治の浄化をはかるため、政治資金規正法の抜本的な改正を早急にはかるべきであるがどうか。
 自民党の多数議席は、最近の国民世論でも明らかなように正しく主権者の意思を反映していない虚構の勢力であり、同時に佐藤内閣から田中内閣へと政権タライ回しを行なつて自民党内閣の延命策をはかつていることは、主権者たる国民の意思を甚しく蹂躙するものである。したがつて、国民の公正な審判を仰ぎ、正しい国会の構成をつくるため早急に国会を解散して総選挙を行なうべきではないか。

  右質問する。