質問主意書

第68回国会(常会)

質問主意書


質問第四号

イオン交換膜製塩法に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十七年六月三日

塩出 啓典      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   イオン交換膜製塩法に関する質問主意書

 政府は、「塩業の整備及び近代化の促進に関する臨時措置法」に基づき従来の塩田を全面的に廃止し、イオン交換膜による製塩にきりかえようとしている。その理由は、イオン交換膜による製塩の方がコストが安いためであり、イオン交換膜による製塩法に移ることによりトン当り一万二千五百円であつた収納価格を七千円程度まで下げようとするものである。
 塩の価格が、このように政府によつて下げられるため、従来の塩田業者は採算があわないため廃業せざるをえず、一方政府としては廃業する業者に「塩業整理交付金」を支給して廃業を円滑に行なわせようとしている。
 第六十七回国会において提出した質問主意書においても述べたとおり、イオン交換膜法による塩が、人体に害があるのではないかとの疑問が出され、イオン交換膜による製塩法への全面的移行に反対する動きがあつたにもかかわらず、政府は、これらの意見を無視し、動物実験も行なうことなくイオン交換膜による製塩法への移行を強行していることはまことにいかんである。
 イオン交換膜法による塩は、風味などの点においても従来の塩田による塩とちがいがあるといわれている。したがつて、イオン交換膜法による塩を選ぶか、塩田式製塩による塩を選ぶかの選択は国民一人一人の判断にまかせられるべきである。しかるに、政府の施策はこの選択の自由を国民から奪い、欲しない人達にまでイオン交換膜による塩を押しつけようとしていることは民主主義に反するものである。
 イオン交換膜法にきりかえる理由は、製造コストを下げるためであるが、国民一人あたりの年間使用量は、工業用を含めても十キログラム程度で、トン当り三万円としても年間三百円である。したがつて少しぐらい値段が高くても、従来の塩田式による塩がほしい人には、その塩を購入できるようにするのが当然である。
 戦後二十七年を経過し、国民の要望も量より質を求める時代にはいつているといえる。主食である米でさえ自主流通米制度が生まれ、消費者米価に対する物統令適用も廃止されている。このような時代に塩に対する政府の施策は時代逆行といわざるをえない。
 また、イオン交換膜による製塩法は、製造工程上の理由から、海水に硫酸を加えており、そのため製塩工場から排出される海水による公害問題も憂慮されている。
 一方、イオン交換膜法への移行に伴い従来の塩田は全面的に廃止されるが、たとえば愛媛県伯方島のような離島にとつて唯一の企業ともいうべき塩田を廃止することは、離島振興、過疎対策の上からも好ましくない。
 政府としては、以上述べた諸点を考慮し、次の対策をたてるべきであると思うが、それに対する政府の責任ある見解を求める。

一、塩に関する専売制のあり方について抜本的に検討すべきではないか。

二、従来の塩田による塩を欲する人には、その塩を供給できる体制にすべきではないか。

三、そのためには希望するものには、従来の塩田式製塩を許可し、そこで生産された塩は、イオン交換膜法による塩の場合とはことなつた価格(生産コストに見合う価格)で売るようにしてはどうか。

  右質問する。