質問主意書

第67回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二号

米軍用地問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十六年十二月二十一日

神沢 浄      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   米軍用地問題に関する質問主意書

 本年一〇月二四日付の読売新聞朝刊は、「政府は、本土のすべての米軍基地(百十基地)について、年内に地主との間の土地提供契約を新しく結び直す方針を決め、防衛施設庁を中心に作業をいそいでいる。昭和二七年四月、旧行政協定に基づき米軍に基地を提供するため地主との間に結んだ賃貸借契約が、民法六百四条(賃借権の存続期間)によつて、二十年後の来年四月で失効するとの解釈が政府部内で確定したためである。」と報じている。
 この報道は、つぎに示す政府見解および大審院判例に照してみても正確なものであると考える。
(1) 佐藤内閣総理大臣の名において、「演習場のうち、国有地以外の土地については、国は従前から土地所有者との間に賃貸借契約を締結しているが、借上の目的は米軍の使用に供することにあるので、その期限は米軍が使用している期間を通じての不確定期限と解するのが妥当であり、当初の契約は引続き有効なものと考えている。
 形式的に年年契約をおこなつているのは、予算会計上の制約ならびに借料改訂の必要に基づく措置であり、」と述べた。(昭和四十年五月四日付、内閣参質四八第五号答弁書)
(2) 旧行政協定から地位協定への切り替えと賃貸借契約との関係については、「特ニ現実ノ使用者デアル米軍ノ施設区域ノ使用形態ハ地位協定デ律サレルガ、関係規定ハ旧行政協定ト同一趣旨デアリマスノデ、現賃貸借契約ノモトニ新安保条約上ノ米軍ニ土地使用ヲ許スコトハ、契約ノ目的、内容ニ違反スルモノデナク」(昭和三五年八月一日付、調達庁長官発忍草区長宛回答)と述べ、右契約の継続性を確認した。
(3) 大審院は、二〇年を超えることが予想されるような不確定期限付の賃貸借契約については、その成立は認定することができるが、その存続期間は民法六百四条により二〇年に短縮される旨判示し、確立した判例となつている〔明治四五年三月一日・二民判決・明治四四年(オ)第二百九十二号、大審院民事判決録第一八輯二二七頁。大正九年九月十日・一民判決・大正九年(オ)第百号、大審院民事判決録第二六輯一二四七頁。大審院大正九年十一月十一日・二民判決・大正九年(オ)第六百五十号、大審院民事判決録第二六輯一六九七頁〕。
 なお、これらの判決にみられる「地上存在ノ建物ノ朽廃」のように到来することだけは確実であるが、何時到来するかは不確実な事実の発生に法律行為の効力の消滅をかからしめる附款は、不確定期限である(我妻栄「新訂民法総則」四一九頁)。また、この判決は、建物所有を目的とする賃貸借契約に関するものであるから、借地法制定後は、借地法が適用される契約については妥当しないが、その地の賃貸借契約には妥当する。
 以上のべたところから明らかであるように、前記読売新聞の報道は、政府見解に立つ限り、法律論として当然の帰結を示したものと考えるので、次の事項について質問する。

一、前記「昭和四十年五月四日付、内閣参質四八第五号答弁書」において述べられている「国と土地所有者との間の賃貸借契約」の始期、すなわち不確定期限付賃貸借契約の効力発生時期は、昭和二七年四月二八日と考えるが、政府見解はどうか。

二、右期日でないとすれば、何月何日か。また、その理由は何か。