質問主意書

第61回国会(常会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質六一第三号
  昭和四十四年六月二十四日

内閣総理大臣 佐藤 榮作      


       参議院議長 重宗 雄三 殿

参議院議員小林武君提出東京教育大学移転問題にかかわる学園紛争に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小林武君提出東京教育大学移転問題にかかわる学園紛争に関する質問に対する答弁書

一 東京教育大学は、敷地狭隘なため移転問題を検討する小委員会を昭和三十七年七月から学内に設けて検討していたが、たまたま昭和三十八年九月十日研究・学園都市の建設は筑波地区に行なうとの閣議了解がなされたので、東京教育大学においては「大学の将来計画委員会」を設け筑波地区への移転のぜひを検討してきた。その後、昭和四十二年七月十三日学長から文部大臣あて「総合大学として発展することを期し、条件つきで筑波に土地を希望する。」旨依頼があつた。このように東京教育大学は、自主的判断に基づいて研究・学園都市に土地を希望したものであり、政府としては大学の正式な申し出に基づいて移転を推進しているものである。
  なお、移転問題は東京教育大学の紛争のきつかけとはなつたが、必ずしもこれのみが紛争の原因ではないと思われるので、一応別個の問題としてその解決にあたる所存である。

二 昭和四十二年九月五日の閣議了解に「移転を予定する機関」として東京教育大学があげられているのは、筑波地区に土地を希望する旨の同大学の正式な意思表示に基づいて予定したものであり、この閣議了解以降東京教育大学から以前と異なる意思表示はない。
  また、新聞に報ぜられた総理大臣の発言は、東京教育大学の移転を否定するものではなく、「大学紛争の現状にかんがみ既設大学の移転とは別に新しい場所に新しい大学をつくることもあつてよい。」という趣旨の感想を述べたものである。

三 東京教育大学の移転をどのような方法で行なうかについては、なお検討中であり結論はでていない。

四 別添の資料のとおり文部省内において、昭和四十年度以降必要な調査研究を行なうため準備をすすめてきたが、最近では、大学紛争等のため正式な会合は中断し今日に至つている。
  なお、この会合は東京教育大学のマスタープラン委員会とは関係がない。
  また、昭和四十三年三月の研究資料は、日本都市計画学会に、学園都市にふさわしい大学像の研究を依頼した結果をそのまままとめたものであつて、移転予定機関を直接にその対象として調査研究したものではなく、省内においても未検討のものである。

五 東京教育大学においては、学長事務取扱いの告示をもつて、体育学部を除く各学部の構内への学生の立入りを原則として禁止する措置をとつているが、これは封鎖解除後における学内の混乱の再発を防止し,授業を再開するために必要な措置であり、このような措置を学長が取ることは、非常な事態に処する学長の責任遂行上認められてしかるべきものと考える。
  また、現在国会に提案中の「大学の運営に関する臨時措置法」案においては、大学紛争の収拾および大学の運営の改善に関する措置を迅速かつ適切に決定し、および執行するため必要があると認められるときは、学長は評議会にはかり、他の機関の権限の一部をみずから行なうものとすることができる旨の規定が設けられているが、これは、最近の大学紛争の実態にかんがみ、このような緊急事態の場合には、事態の変化に即応する適宜の措置をとることが必要であると考えられるからであり、このような仕組を活用することにより紛争の収拾が促進されることを期待しているものである。

別添

   学園都市に関する調査研究の実施について

     昭和四十三年五月十日
     事務次官裁定
     (沿革)昭和四十三年六月二十五日一部改正

一 目 的
  研究・学園都市建設推進本部(昭和三十九年十二月二十五日閣議決定)の審議と併行して研究・学園都市に移転し、または新設される教育・研究機関(以下「教育・研究機関」という。)の建設および研究・学園都市における教育文化施設計画等の諸問題について調査研究を行なう。

二 調査・研究の事項
 (一) 教育・研究機関の建設の基本問題
  (イ) 教育・研究機関の組織・規模について
  (ロ) 教育・研究機関の運営および相互関連について
  (ハ) 教育・研究機関と研究・学園都市ならびに首都との関連について
  (ニ) 研究・学園都市内の私学団地計画について
  (ホ) 学生教職員の生活について
  (ヘ) 教育・研究機関の建設の促進について
  (ト) その他
 (二) 教育・研究機関の建設の施設基本計画
  (イ) 教育・研究施設について
  (ロ) 学生の課外活動施設について
  (ハ) 学生・教職員の居住、レクリエーション施設について
  (ニ) 施設の共同利用について
  (ホ) 施設の社会的利用について
 (三) 研究・学園都市における都市施設としての教育・文化施設の計画
  (イ) 総合計画について
  (ロ) 学校教育施設について
  (ハ) 社会教育・文化施設について
  (ニ) 体育施設について
 (四) その他

三 実施方法
 つぎに掲げる本省関係者ならびに部外の学識経験者および関係官公庁の協力を得て、月一回程度の会合を開いて総括的事項について調査研究を行なうとともに、特別な事項については上記以外の本省関係者および部外者の協力をも得て、必要に応じて会合を開き専門的事項について調査研究を行なう。
 調査研究にあたる部外の協力者および本省関係者
 部外の協力者
  (学識経験者)
   東洋大学教授(都市社会学) 磯 村 英 一
   東京芸術大学長       小 塚 新 一 郎
   東京大学教授(教育学)   清 水 義 弘
   東京大学教授(都市工学)  高 山 英 華
   東京大学教授(土木工学)  八十島 義之助
   東京大学教授(建築学)   吉 武 泰 水
  (関係官公庁)
   首都圏整備委員会事務局長
   日本住宅公団理事(研究・学園都市担当)
   茨城県教育委員会教育長
   茨城県開発部長
  本省関係
   大臣官房審議官
   総務課長
   会計課長
   初等中等教育局審議官
   大学学術局審議官
   社会教育局審議官
   体育局審議官
   管理局長
   振興課長
   教育施設部長
   技術参事官
   計画課長
   文化庁文化部長
   文化庁文化財保護部長

四 実施期間
  昭和四十三年五月から昭和四十五年三月までとする。

五 庶務
  この調査研究の庶務は、管理局教育施設部計画課において処理する。