質問主意書

第61回国会(常会)

質問主意書


質問第六号

財政経済に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十四年七月十日

鈴木 一弘      


       参議院議長 重宗 雄三 殿



   財政経済に関する質問主意書

一、「経済社会発展計画」の再検討進捗状況について「経済社会発展計画」はいうまでもなく現内閣の中期の経済運営の指針をなすものである。
 昭和四十二年度に発足して二カ年にして、その計画数字が無意味なものになつたことは周知の通りである。政府も本年四月からその改定作業に入つているが、その改定作業の進捗状況、今日までに明らかになつた主要な問題点、再検討終了の時期を明らかにされたい。

二、財政運営について

 政府は本年六月十日の閣議において生産者米価据置きを決めると同時に稲作対策事業費二百二十五億円の支出を決定したと伝えられる。
 生産者米価据置きの件にも種々問題があるが、ここでは財政運営の上から、稲作対策事業費について次の事項について伺いたい。
1 二百二十五億円の算出根拠はどうなのか。
2 伝えられる所では市町村に供出米の実績に応じて配分し市町村から直接供米農家に支出されるというがその補助対策、補助目的等の詳細な内訳はどうなつているか。
3 二百二十五億円の財源は補助金から支出するのか、それとも一般財源から新規に廻すのか、その財源対策はどうなのか。
4 二百二十五億円の具体的な支出方法について、もし、補助金の性格とすればこの種補助金は、予算補助だと了解するのであるが予算補助であれば補助金支出の前提条件として国会の予算審議を済ませておくことが、絶対の要件だと考えられる。
 しかりとすれば、四十四年度予算の補正が必要となる。補正予算の国会提出時期を明確にしてもらいたい。

三、国際通貨の動向とわが国への影響について

 昨年来の海外金利の異常高の傾向は強まりこそすれ弱まる可能性は現在までのところ、ほとんどみられない。さらにフラン、ポンド、マルクの欧州通貨を中心に多国間の平価調整の可能性もとりざたされている。さらにまたドル強化をねらいとした米国の国際収支改善策も効果は予期したほど上つていない。わが国をとりまく国際通貨体制は、内に大きな変動要因をはらみながらも、目下のところ小康状態を保つているというのが現状だと考えられる。そこで、国民の通貨不安を芟除するための次の諸点について質問する。
1 政府は、最近の国際通貨の動向をどのように把握しているのか。
2 欧州通貨を中心とした平価調整の動静とわが国への影響をどうみているか。
3 基軸通貨の動向は色々と取沙汰されているがどう把握しているのか、また、それによるとわが国への影響と対策は如何。
4 海外高金利の持続をどうみているか、これがわが国に及ぼす影響とくに長短資本取引への影響をどうみているか。
 今後、公定歩合の引上げなり、輸出課徴金利などの創設なりを行なう危険性はあるのかないのか、行なうとすればどういう時期か。行なわないとすればその理由はどうか。
5 SDRの年内発動の公算が強まつてきたが、他方西独総選挙後にマルク、フラン等平価調整が再燃する可能性もある。
 このように国際通貨問題は、最近流動性問題から調整問題に移つてきてまた変動レート制が提唱されている。しかし仮りに平価再調整が首尾よく行なわれ、レート変動幅が拡大されるようになつても、果して国際通貨不安の根本問題である信認問題――金の処理問題は解決されるか。
 現在、小康を保つていることに安んじてよいか。
 アメリカの国際収支の赤字融資に利用されるおそれのあるSDR支持だけでよいか。
 また、固定レー卜制を維持する必要はないか。
6 多角的な平価再調整の機運が出てきた場合国際収支の構造的黒字国ともくされ、外貨準備も三十億ドルを越えたわが国の円の切り上げが問題とされると思われるが、これにどう対処するか。
7 世界的な高金利化によつて円シフトが生じ外貨準備が減少する可能性がある。他方、依然好調のわが国の国際収支もアメリカの景気後退から来年一~三月には赤字に転ずることも予想されている。しかるに外貨準備の積み増しと構造的黒字国化のため、アメリカから中期債の購入と東南アジア援助の肩代りの要請強化の公算が大である。この際わが国はいかなる外貨政策をとるべきか。また、金の二重価格制下にいかなる金準備政策をとるつもりか。
8 わが国はSDR配分の基礎になるIMFのクォータ増額を要請していると伝えられるが、その際、先進国中もつともきびしいわが国の為替管理の緩和を要求されるおそれはないか。これに対していかなる準備をしているか。

四、金融政策について

1 世界的高金利による内外金利差が拡大したことに伴い、高金利の外貨金融を低金利の円金融に切り替えるいわゆる円シフト政策が本年四月から為替銀行に対し実施されたがそれについて次の事柄を承りたい。
(イ) 現在までの円シフトの実績並びに今後の方針
(ロ) 海外金利の異常高が続いているため商社、メーカー等にも円シフト政策拡大の声があるが、これらに拡大する考えの有無並びに理由
(ハ) 円シフト政策と今後のわが国の為替、外貨政策の在り方
2 つぎに、企業の合併、大型化が進み、また設備投資もますます大規模化の傾向にあるため、資金調達機関としての銀行の大型化、合併の要請も強い。今年初めの三菱、第一両銀行の合併が不成功に終つた如く、銀行合併は他の業界に比し困難を伴なうようにみられる。政府の金融再編成の構想とその方法について伺いたい。
3 さらに、外貨攻勢とも重なつて、金融機関の過保護を改め、従来の預金高競争を是正し、真の企業間競争を活発にすべきであると言われている。その手始めに金利の自由化を早急に実施すべきであると思うが、政府の考え方と方針を質したい。その際の預金者保護はどう考えているか方針を承りたい。
4 さらに金融の効率化をはかるために長短期金融市場の育成、オーバーローンの解消をする必要があるが、それに対していかなる対策を考えているか承りたい。またその際の中小企業金融へのしわよせをどう緩和するか政府の考えを承りたい。

五、景気動向について

 最近の国内経済動向は生産、出荷、卸売物価等いずれも強含みに推移し、設備投資意欲が盛んで開発銀行、通産省等七機関が調査発表したところでも対前年二〇%を超える見通しとなつており、政府の経済見通しの一六・三%を大きく上回ることは間違いないと思われる。四十四年度の景気上昇の主柱の役割は設備投資が果すことになる見通しである。最近の強気の設備投資は輸出需要を織り込んでたてられているが、わが国の最大の輸出先である米国経済の若干のスローダウン、鉄鋼、繊維品等の輸入制限の強化、また事故車問題の海外への反響等々を考えると四十四年度の設備投資は慎重に進める必要も考えられる。
 政府は、現在までの景気動向をどう把握しているか、政府の四十四年度経済見通しが最適の経済運営の指標であるならば、これと遊離するおそれがある各項目に対し、修正するか、指標通りに押えるか、どのような考えをもつているか質問する。

六、最近の国内経済の動向について

 物価問題についてお伺いしたい。消費者物価は今年に入つてからも根強い上昇傾向をたどつている。そして五月からの国鉄運賃の値上げ、春闘の大幅ベースアップ等の物価上昇促進の要因も増えている。さらにまた、タクシー、私鉄運賃の値上げ要請も一段と強まつてくる等、消費者物価の安定は容易でないと考えられる。
 佐藤内閣のもとでも既に「物価問題懇談会」の提案、「物価安定推進会議」の提言などがなされ、物価安定のためにとるべき手段、方法は出尽くした感がある。後は政府が勇断をもつて実行に移すか否かが残された問題である。
 政府は五月末「物価安定政策会議」を発足させたようであるが、四十四年度の物価安定の具体的な政策、対策を承知したい。
 さらにまた、政府見通しの五・〇%の消費者物価上昇率に抑えることについての具体的な今後の見通しについて伺いたい。