質問主意書

第61回国会(常会)

質問主意書


質問第三号

東京教育大学移転問題にかかわる学園紛争に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十四年六月十八日

小林 武      


       参議院議長 重宗 雄三 殿



   東京教育大学移転問題にかかわる学園紛争に関する質問主意書

一、東京教育大学は、研究学園都市移転問題をめぐる紛争のために今日にいたるもなお不正常な状態が続いている。こうした事態を生みだした原因は、学内世論を無視した大学当局の強硬な態度にあると思われるが、同時に筑波研究学園都市の建設をいそぎ、大学に移転の早急な決定を迫つた文部省当局にも大きな責任があると考えざるを得ない。従つて、この際既定方針にもとづく教育大学の移転計画の推進をみあわせ、教育大学の紛争解決に全力をそそぐべきではないか。明解なる御所見をお伺いしたい。

二、教育大学当局は、昭和四十二年六月十日の評議会決定は移転の最終決定ではなく、たんに筑波に土地を確保するという決定であつて、従つて移転を中止することもありうると再三にわたつて公式に表明しているが、政府は四十二年九月五日の閣議において教育大学の移転の決定を行なつている。これは大学側の正式決定をまたずに政府が一方的に決定を行なつたものと考えられるが、この点に関する文部省の見解を伺いたい。また、四十四年六月十六日付の毎日新聞の記事によると、佐藤首相は「既設大学の移転によらない全く新しい大学を新設し、それを中心に学園都市を造成する構想を固めた」とされているが、この構想は従来の教育大学の筑波移転を再検討するという意味であるのかどうか。

三、第二点に関連して、教育大学の内部にはなお移転計画を断念せず、新大学構想にきりかえられてもなお実質的には教育大学の移転という内容のものとしたいという動きがあるようにきいているが、新大学にきりかえる場合、これと教育大学との関係はどのようなものとするつもりであるのか、文部大臣の見解を伺いたい。

四、文部省内に筑波研究学園都市に関する省内研究会が置かれているときくが、この研究会の性格、構成、現在までの作業経過および教育大学、とくに同大学内のマスター・プラン委員会との関係について、詳細かつ具体的な資料を提出していただきたい。また、四十三年三月に文部省名で出された研究学園都市構想は、当該時点において大学の構成等に関して、教育大学の要望を十分くみいれて作成されたと考えるかどうか。また、同基本計画をふまえて行なわれてきた省内研究会は、具体的にどのような構想をうちだしているのか、資料をそえて明らかにして欲しい。

五、教育大学においては、本年二月末の機動隊導入以来、約四カ月にわたつてロックアウトが続けられ、学長事務取扱のいわゆる「非常大権」のもとに、学生の入構制限、教職員に対する差別がおこなわれ、一部学生による再封鎖を防止するという名目のもとに、他の国立大学に類例をみない形での集会の自由、表現の自由がきびしく制限されている。これらは憲法や教育基本法の重大な侵害であつて、同大学学長事務取扱は速やかにロックアウトを解除して学生を自由に入構させる措置をとるべきであると考えるが、この点について文部大臣の明確なる答弁を伺いたい。また、このような学長への極度の権限集中は今回の「大学の運営に関する臨時措置法案」のなかにも規定されているところであるが、それが紛争の解決には何ら役立たず、かえつて紛争を深化させるものであることは、教育大学の現状をみても明白である。教育大学の現状は「臨時措置法案」が有害無益であることを事実をもつて証明している。政府はこうした性格の法案について再検討する意思はないのかどうかはつきりした見解を伺いたい。