質問主意書

第59回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四号

内閣参質五九第四号
  昭和四十三年八月十日

内閣総理大臣 佐藤 榮作      


       参議院議長 重宗 雄三 殿

参議院議員小笠原貞子君提出交通事故で親を失つたこどもを守るための緊急対策についての質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小笠原貞子君提出交通事故で親を失つたこどもを守るための緊急対策についての質問に対する答弁書

一、交通事故による被害者の救済対策に資することを目的として、現在、都道府県、都道府県教育委員会及び国立大学の協力のもとに、全国の国・公・私立の小・中学校及び特殊教育学校小・中学部に就学中の児童及び生徒について「陸上における交通事故により親等を失つた児童及び生徒に関する調査」を実施中であり、その集計は、おおむね本年十月末に完了する予定である。
 なお、調査項目は、児童・生徒の学年、氏名、性別、住所、陸上における交通事故により死亡した親等の交通事故による死亡年月、児童・生徒からみた続柄、氏名、現在の保護者の児童・生徒からみた続柄、氏名、年齢、生活状況である。

二、昭和四十二年七月以降、全都道府県に交通事故相談所を設け、専門の相談員、顧問弁護士等をおいて、交通事故被害者に関する損害賠償確保の問題、遺族に対する社会保障制度適用の問題、その他交通事故に係る問題について相談に応ずるとともに、必要に応じ関係援護機関へのあつせんを行なつているが、今後とも、これら相談所の充実強化を図つてまいりたい。なお、六大都市をはじめ一部主要都市においても、同様の交通事故相談所が設置されているが、今後、すべての市町村に、交通事故相談の窓口を設置するように指導いたしたい。
 また、児童相談所及び福祉事務所に設けられている家庭児童相談室においては、児童福祉の立場から、交通事故により親を失つた児童を含め、児童に関する各般の問題について相談に応じ、助言、指導を行なうとともに、必要な福祉の措置を講じているところであるが、今後とも、その充実、強化を図つてまいりたい。

三、交通事故により親を失つた児童を含め遺児に対しては、その状況に応じ、児童福祉法、母子福祉法等により必要な福祉の措置を講じているところである。
 児童扶養手当、母子年金、遺児年金等については、従来からその額の引上げ等の改善を図つており、今後ともその改善に努力いたしたい。
 なお、生活保護制度では、児童扶養手当等を収入と認定するが同時に手当等を受けた世帯では、生活保護上の通常の最低生活費に手当等に見合う額を加算して支給することとしているので、実質的に一般世帯との均衡が図られている。
 また児童の教育の問題については、交通事故で親を失つた場合を含め経済的理由によつて就学困難と認められる学齢児童・生徒の保護者に対しては、市町村は必要な援助を与えなければならないこととされており、この市町村の行なう援助に対して、国は、従来からいわゆる就学援助法、学校給食法、学校保健法、日本学校安全会法等に基づき、学用品費、修学旅行費、通学費、通学用品費、給食費、医療費、学校安全会掛金等に要する経費について補助を行なつており、今後も補助額の増大によつてこれらの就学援助の充実に努めたい。
 このほか、生活保護法に基づき、教育扶助として、義務教育に伴つて必要な教科書その他の学用品等の扶助を行なつており、扶助額については逐年改善を図つているところであるが、今後ともその充実に努めたい。
 なお、日本育英会が行なつている国の育英奨学事業は、優秀な資質を有しながら家庭の経済的理由により就学困難な者に学資を貸与することにより、将来有為な人材を育成することを目的としており、これらの要件に該当する者であれば奨学生として採用し、学資を貸与するたてまえをとつているので、交通事故により親を失つた子弟についても現在の事業の範囲内において該当者の救済をはかつていきたい。

四、被害者又はその遺族の受ける自動車損害賠償責任保険による保険金については、所得税及び相続税は課されず(所得税法第九条第一項第二十一号、相続税法第三条第一項第一号)、かつ、当該保険金は、税金その他いつさいの債務について差押えもすることができないものとされている(自動車損害賠償保障法第十八条)から、被害者及びその遺族の権利は、十分保護されているものと考える。

五、自動車損害賠償責任保険の事業の主体をどうするかについては、自動車損害賠償保障法制定当時種々検討の結果、長年の経験と広い営業網を持つ保険会社に元受業務を取り扱わせることとし、さらに国がこれを再保険することにより、本制度に対する国の責任を明確にすることとしたものである。
 また、保険金額は、昨年八月一日に改訂され、現在、死亡の場合三百万円となつているが、損害賠償額の推移、保険料の負担力を考慮しつつその改訂について検討を進めているところである。

六、交通事故により、親あるいは扶養者を失つた児童に対する養育、教育、生活保障のための措置としては、これら児童の実態に応じ、前記各種施策の充実強化をはかることによつて対処してまいりたい。