質問主意書

第58回国会(常会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質五八第二号
  昭和四十三年四月二十六日

内閣総理大臣 佐藤 榮作      


       参議院議長 重宗 雄三 殿

参議院議員黒柳明君提出青森県三戸郡倉石村における原野入会権をめぐる紛争事件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員黒柳明君提出青森県三戸郡倉石村における原野入会権をめぐる紛争事件に関する質問に対する答弁書

一、(1) 最高裁判所昭和三十四年(オ)第六五〇号上告事件主文第一項をいかに解釈するか、について述べる。
 民法は、入会権については、その地方の慣習に従うほか、共有の性質を有するものについては、共有に関する規定を適用し(同法第二六三条)、然らざるものについては、地役権に関する規定を準用する(同法第二九四条)としているが、元来、入会権とは土地の総有又は他人の土地に対する収益権の準総有と解するのが学説、判例の一致した見解である。
 したがつて、入会権の存否について紛争が生じた場合の入会権存在の確認を求める訴は、権利者全員が共同してのみ提起しうる固有必要的共同訴訟であることについても異論をみない。
 従つて、入会権の存在確認の訴は、入会権者全員が原告として訴えなければならないことはいうまでもないのであつて、標記判決によれば、本件訴訟は、入会権者と主張されている部落民全員によつて提起されたものではなく、その一部の者によつてなされたものであると認定されているのであるから、第一、第二審判決のごとく「請求を棄却する。」旨の本案判決をなすべきでなく、入会権の存否を判断するまでもなく、当事者適格の欠欠を理由に訴を却下するのが至当であつて、標記判決主文第一項もその趣旨によるものであると解する。つぎに、
(2) 本件原野の所有権及び入会権につきいかなる見解を有しているか、について述べる。
 本件原野の所有権の主体及び入会権の存否については、種々紛議を生じ、最終審まで争われた事案であり、その後も青森地方裁判所八戸支部に再度訴が提起されている由聞き及んでいる。したがつて質問の事項については、政府の見解を表明すべきものではなく、すべからく裁判によつて確定せらるべきものと考える。

二、宮城県警察においては、青森県警察からの依頼にもとづき、塩釜警察署員および古川警察署員が高橋兵輔らについて売買契約の内容等の調査を実施したのであるが執ような調査を行なつたことはなく、また高橋兵輔に対して売買契約の解除を迫つたこともない。
 この調査は、犯罪の予防上の必要から行なつたものであつて山林立木売買に干渉したものではない。したがつてご指摘のように警察法第二条第二項に違反するものではなく、また刑法第一九三条に該当するものではないと思料する。

三、昭和四十二年九月三日、立木伐採現場に臨場したのは五戸警察署長以下八名である。服装は、けん銃を着装した制服の常装であつたが、現場が森林内であるため事故防止上ヘルメットを着用したものであつて、特に武装したものではない。
 トランジスターメガホンを使用したが、これは伐採機の騒音等で肉声では聞き取りにくかつたからである。「この立木を切れば逮捕する。」などと言つたことはない。
 及川貴示の指示によつて、伐採が中止されたのち、及川および伐採作業員五名に対して倉石警察官駐在所まで出頭を求めたが、応じなかつたので、伐採現場から約一〇〇メートル離れた草原で、これらの者を森林法違反の疑いで取り調べたものである。取り調べは午前十一時ごろ開始し午後三時ごろまでにおおむね終了したが、そのころから雨が降り出したので、取り調べ未了であつた及川ほか一名に倉石警察官駐在所まで、任意出頭を求めて取り調べを継続し、午後四時ごろ終了した。
 弁護士二名を取り調べたことはない。また、取り調べの現場を警察官が包囲したことはない。
 五戸警察署長らの行為は、警察法に定める警察の責務として行なつたものである。