質問主意書

第48回国会(常会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質四八第七号
  昭和四十年五月二十八日

内閣総理大臣 佐藤 榮作      


       参議院議長 重宗 雄三 殿

参議院議員須藤五郎君提出国立療養所岡山県長島愛生園における医療行政に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員須藤五郎君提出国立療養所岡山県長島愛生園における医療行政に関する質問に対する答弁書

一 長島愛生園における医師の充足状況は御指摘のとおりであり、その充足率は国立らい療養所の全国平均を、下廻つているが、必要な診療業務を確保するため定員上の勤務医師のほか、非常勤医師並びに大学及び国立病院等に勤務する医師の応援措置も行なつている現状である。
 らい療養所の医師充足については、医学専門領域におけるらい疾患の特殊性と、らい療養所の立地条件等の諸要素を反映して近時一般的傾向として医師の確保が困難な実情にあることは否めないところとなつている。
 したがつて、これらについては、今後とも引き続き鋭意努力を重ねる所存であるが、特に国立療養所全体の組織を通じ相互に医師の派遣診療を行ない、また、大学及び他の医療機関からの専門医の派遣等の施策により診療、技術の援助体制を強力に推進している。

二 長島愛生園に対する昭和四十年度医薬品等購入費予算の示達にあたつては、特殊薬品(治らい薬)を除き、一般薬については、昭和三十九年度における診療額の実績を基礎として算出したものであつて、概ね年間必要額は確保され得るものと思われる。
 しかしながら、新薬の登場、患者の疾病構成の変化、医師の治療方針等によつて若干の変動があることも考えられるので、不足をきたすような場合には、年度内において調整措置を講ずる方針である。
 なお、治らい薬については、最近における使用実績をもつて所要額を決定し、中央において現物配付することとしており、この面についても特に支障をきたすことはないものと考えている。

三 従来、不自由患者の付添介助は患者作業により軽症患者が行なつてきたものであるが、施設管理上及び不自由者の増加、作業患者の減少等のため昭和三十五年度より五カ年計画をもつて、職員による付添介助に切り替える方針のもとに昭和三十九年度までに二五〇名の増員措置を講じたところである。
 しかしながら、付添介助の必要な患者はなお相当数に及ぶ実情にもあつたので、昭和三十八年度において専門医師による不自由度判定委員会を組織して対象者の実態把握をすすめ、この結果を基礎として昭和四十年度においてはとりあえず七五名の増員を行ない、職員による付添切り替えの促進を図つたものである。
 長島愛生園についてもこの方針にそつて、本年度は特別重度不自由者以外の者についても各施設との均衡を考慮し、補導員による介助に切り替える計画である。

四 らい療養所における患者慰安金及び不自由患者慰安金については、生活保護法における日用品費と同列に比較することには問題があり、らい療養所入所患者については本来的にはその生活基盤としての最低保障施策は別途経営費予算によつて現物保障の建前により相当部分が確保されているものである。
 なお、現状における経営費予算のうち、患者生活物品費及び被服及び寝具費等の患者日用品関係経費については昭和三十九年度において大幅の引き上げを行なつたが、これらの点については今後ともその引上げについては努力いたしてまいりたい所存である。

五 国立らい療養所における患者食糧費の予算単価は一般食については前年度一二六円を本年度一四〇円に、また、特別食については一五八円六〇銭を一六九円にそれぞれ引き上げを行なつたが、更に実際の給食業務にあたつては購入技術の改善を図るとともに、患者の症状、嗜好等に適合し得るよう十分検討のうえ対処いたしてまいりたい所存であり、これによつて療養上必要な栄養量の確保はでき得るものと思われる。

六 らい療養所における患者作業については、その歴史的沿革において相互扶助の精神とらい患者の療養生活上の特殊性により所内における軽易な作業については、軽症患者の作業に依存する建前をとり今日に至つているものであつて、これら作業に従事した患者に対しては、その他の患者との処遇の均衡を図る見地から国は、これに作業賞与金として作業内容に応じ一定額を支給しているものである。
 この措置は本来、労働に対する報酬とはおのずから性質を異にするものであるが、その額については、一般社会情勢も勘案して努力いたしたい。
 なお、従来の患者作業のうち特に不自由者の付添介助については、らい医学の進展と、患者の年令及び不自由度の推移等の事情もあり、職員により行なう方向で対処していることは前述のとおりである。