質問主意書

第47回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質四七第二号
  昭和三十九年十二月十八日

内閣総理大臣 佐藤 榮作      


       参議院議長 重宗 雄三 殿

参議院議員木村禧八郎君提出物価政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議院木村禧八郎君提出物価政策に関する質問に対する答弁書

一(1) 政府としては、これまで物価の安定を図るための具体策を定めてこれを実施してきており、昭和三十八年七月には、「生鮮食料品流通改善対策要綱」を、また、本年一月には物価問題懇談会の意見をきいて「当面行なうべき物価安定のための具体策」を定めた。
 これらの具体策は、担当各省それぞれの立場で鋭意実施に移しているところであり、また、「当面行なうべき物価安定のための具体策」については経済企画庁が各省の実施状況報告を随時求め、これを経済関係閣僚懇談会に報告してその実施の推進と確保を図つている。

(2) その実施状況は、次のとおりである。

ア 輸入政策
 消費物資の供給の安定を図るため、炉油、LPG、たら及びにしんの卵、レモン、抗生物質等消費物資の輸入自由化を実施するとともに、消費物資についての輸入枠の拡大、輸入方式の改善等、消費物資の輸入の円滑化を図つた。

イ 低生活性部門の生産性向上対策
(ア) 農林漁業については、生産基盤の整備開発、試験研究の拡充強化、技術普及体制の整備拡充を図るとともに、構造改善のための諸施策を強力に推進している。
(イ) 中小企業については、設備の近代化、事業の共同化等のため設備近代化資金、高度化資金を拡充するとともに、設備近代化資金貸付対象業種、中小企業近代化促進法の指定業種に消費関連業種を優先的に指定し、その重点的効率的な運用を図つている。

ウ 流通機構の近代化促進
 卸商団地の造成、共同仕入事業の促進等流通経路の整備を推進するとともに、中小企業によるスーパーマーケット、寄り合い百貨店設立の促進等小売店の経営の近代化の諸施策を実施している。
 特に生鮮食料品の流通の改善を図るため、次の措置をとつている。
(ア) 卸売段階については、卸売人の手数料の引下げ等を行なつたほか、上場単位の引上げ、上場単位の明確化、せりの共同化など売買取引の合理化を進めており、また、東京大阪等を中心に中央卸売市場の施設の整備拡充を進めるとともに、新潟市および大阪東部の市場を開設した。なお東京都食肉中央卸売市場の開設については、東京都において関係者と協議を進めているが、近く最終的な結論を出すべき段階に至つている。
(イ) 小売段階については、生鮮食料品総合小売市場の設置を推進するため、第四十六回国会に提出し継続審査となつた「食料品総合小売市場管理会法案」の早期成立を期するとともに、標準品小売店の拡充、牛乳共同保管施設および食肉食鶏共同処理施設の設置の推進を図つている。このほか冷凍魚の消費普及を図つている。
(ウ) 生産および出荷の段階については、野菜指定産地推進事業、野菜生産安定事業等の推進、畜産物の出荷施設、水産物の冷蔵施設の整備などにより、出荷の安定化と計画化を図つている。また、生鮮水産物について通い容器の普及など包装の合理化を図るとともに、輸送の円滑化を推進している。
 以上のほか、豚肉について関税を弾力的に軽減または免除できる制度を設けるなど、輸入制限の行なわれている生鮮食料品についてその消費者価格が著しく上昇する場合に、弾力的に輸入を行ないうるような措置を講じた。

エ 競争条件の整備
 違法なカルテルに対する取締りの強化、独禁法適用除外カルテルの慎重な処理等独禁法制の運用を厳にするとともに、価格が硬直的な商品についての実態調査を推進している。

オ 公共料金
 値上げ風潮を断ち切るため、政府が規制する価格・料金については、本年一杯据え置くこととし、これを実施している。その例外措置については経済関係閣僚懇談会に附議して慎重に処理している。

(3) 物価対策、殊に構造対策のようなものは、その効果は徐々に現われて来る性質のものであるから、これらの対策の効果を、現在具体的に述べることは困難であるが、物価安定のためには、このような政策を地道に着々と進めていくことが必要と考える。

二(1) 国民生活の安定向上を図るためには、物価の安定が緊急且つ重要な課題である。政府としては、本年一月二十四日の閣議において「当面行なうべき物価安定のための具体策」を定め、関係各省の有機的連携の下に、これを鋭意実施しているところである。
(2) 公正取引委員会の機構と機能の拡充については、本年四月一日より審査部の増員を図るとともに、不公正な取引方法の取締りを強化するため、七月一日より従来の大阪、名古屋および福岡に加えて、新たに札幌に地方事務所を開設した。

三(1) 最近の消費者物価の上昇は、夏の干ばつ、台風被害、例年より早い秋冷等によつて野菜の作柄が不良であつたこと等による野菜価格の急騰が主因であつて、現に、野菜の出廻り期に入つた十一月の東京の消費者物価は下落している。
 政府としては、生鮮食料品の価格の安定を図るため、去る十一月二十日に「当面の生鮮食料品等の価格安定対策」を経済関係閣僚懇談会において定め、これを実施に移している。

(2) 消費者物価の上昇は、基本的には、わが国経済の近代化に伴なう構造的要因に根ざすものであるから、今後の物価動向には十分注意しなければならないものと考えている。
 物価の安定のためには、経済の成長をすみやかに安定基調にのせることがまず基本的に重要であり、同時に、低生産性部門の近代化、流通機構の合理化、労働力の流動化促進等の構造対策を進めまた、公正な価格形成のための競争条件を整備して価格が適正に決められるようにしていくことが必要である。この方針の下に、さらに適切な具体策を実施していく。
 また、公共料金については据置措置の期限が切れた後も一斉に値上げするようなことはせず、事案ごとに経営の実体、合理化の余地、物価に及ぼす影響等を総合的に勘案して慎重に処理していく。