質問主意書

第47回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質四七第一号
  昭和三十九年十二月八日

内閣総理大臣 佐藤 榮作      


       参議院議長 重宗 雄三 殿

参議院議員渡辺勘吉君提出昭和四十年度東北開発事業計画に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員渡辺勘吉君提出昭和四十年度東北開発事業計画に関する質問に対する答弁書

一、国土調査については、従前より国土調査法(昭和二十六年法律第百八十号)に基づき実施されてきたが、その緊急性にかんがみ、計画的な実施をはかるために、国土調査促進特別措置法(昭和三十七年法律第百四十三号)に基づく国土調査事業十カ年計画を昭和三十八年五月十日に閣議決定し、現在この計画に沿つて、地籍調査、土地分類調査等の事業を推進し、土地利用の効率化に資することとしており昭和三十八年度以降順調に実施されている。
 また、東北地方は比較的地下資源に恵まれているため、探鉱開発のための調査を積極的に推進する方針であり、現在地質調査所において秋田県北鹿地区を中心として基礎的な地質調査を行なう一方、この調査に基づき金属鉱物探鉱促進事業団においてボーリングによる調査を行なつており、また石油、天然ガスについても地質調査所が秋田、山形、新潟県について埋蔵基礎調査を実施している。

二、(1) 国土開発縦貫自動車道については、前国会において予定路線の決定した東北縦貫自動車道等五路線のうちとくに緊急を要する区間については、できるだけ早く建設に着手し得るよう検討をすすめたいと考えている。

(2) 国鉄は、昭和三十六年度を初年度とする第二次五カ年計画において、幹線輸送の強化に重点をおき、その一環として東北本線の複線化、電化を進めてきたが、目下第三次長期計画を検討中で第二次五カ年計画にひき続き幹線輸送強化に重点をおき、全国主要幹線の複線化、電化を進める方針であり、東北地方においては計画期間中に東北本線の残余区間と羽越本線については全線複線化・電化、奥羽本線、磐越西線等の複線化を実施する予定である。

(3) 東北地方の道路、港湾、河川改修事業等については、それぞれ重点を明確ならしめ、事業の効率的促進をはかる方針である。
 道路整備事業については、旧一級国道を中心に、その他地域開発の根幹となる主要路線に重点をおいて、大幅な事業費の増大をはかる等それぞれ計画に基づいて実施することとしており、港湾整備については、拠点性の強い地域の港湾を中心に事業の促進をはかる方針である。
 また河川改修事業については、東北地方の河川の特性にかんがみ、水害の多発する地域の河川および農業構造改善事業等地域の総合開発のため緊急に改修を要する河川等に重点をおき、極力事業の促進をはかる方針である。

三、(1) 農業地域において農業近代化のための施設を重点的かつ有機的に整備することは、地域の農業近代化を促進するうえに必須の方策であり、この観点からも昭和三十八年度および三十九年度に「農業経済圏設定調査」を実施し、農業の主産地形成の現状およびこれに対応する広域農業近代化施設の現状と問題点について調査を行なうこととし、とくに東北地方については各県とも調査を実施している。
 今後は、この調査結果にもとづき、広域的観点に立つて農業近代化施設の整備の実施について、早急に具体的な検討を進める方針である。

(2) 経済審議会農林漁業分科会報告に提案されているいわゆる農業振興地域の構想について、農業経済圏の構想にも関連があるので、慎重に検討する方針である。

(3) 農業金融については逐年融資枠の拡大をはかる等その充実改善につとめてきたが、農業近代化に対応する農業金融の緊要性にかんがみ、低利長期資金の円滑な供給について、一層の充実をはかる方針であるが、北海道東北開発公庫に農業金融を行なわせることについては、同公庫の性格上困難である。

四、(1) 東北開発株式会社は東北開発三法の精神に基づき地域開発の責務を果すべく努力してきたが、昭和三十八年度末累積欠損金約三十六億円を計上するにいたつた。
 その赤字原因は経済情勢等の変化にもよるが、同社の支出に占める人件費、金利、償却費の割合がきわめて高く、また直営事業部門のうち構造的に斜陽化しつつある業種を含んでいる等のためである。
 上述の赤字原因を解消し、将来の飛躍的発展を期するため五カ年計画を作成し、企業合理化を推進するとともに中核事業部門であるセメント事業、ハード・ボード事業については、積極的に拡充強化をはかり、また化工事業部門についても、将来有機合成部門ヘ転換できるよう各種の合理化を行なつている。
 一方金利、償却負担の軽減をはかるため政府出資(昭和三十九年度十二億円払込済)を行ない、会社の体質改善と発展的基盤の強化に努力している。
 したがつてこの計画に即して、所期の目的を達成することといたす方針である。

(2) 東北開発株式会社は計画に基づく再建を軌道にのせることが当面の急務であつて、再建の確実な見通しなしに新規事業を実施させるべきではないと考えている。
 同社の企業基盤が脆弱のまま新規事業に手をつけてゆくことは、経営基盤をますます弱めるばかりでなく、当該新規事業の発展を期待することも困難であると考えるからである。
 将来再建の成果があがり、企業基盤が確立されれば新規事業を推進させる意向である。

(3) 本年四月会社経営の衝にあたる役員を一新し、あらたに有能な民間出身者を任命した。目下社内人事を刷新し、新理事を中心として社内一丸となり、会社再建に努力している。

五、むつ製鉄株式会社は昭和三十八年四月三菱グループとの合弁で発足した。爾来、数次にわたり、実施計画案の作成が行なわれたが、いずれの案も企業採算を得ることが困難で三菱グループの了解も得られず、成果を得るにいたらなかつた。
 昭和三十九年十一月十六日にいたり、三菱グループより企業提携を辞退したい旨の申し入れが東北開発株式会社になされた。
 経済企画庁においては、かかる事態にたいし、東北開発株式会社三菱グループなど関係方面とも打ち合せの上、本事業の今後の取扱いについてできるだけ早く、結論を得るべく努力している段階である。

六、岩手セメント工場の煙害の原因はシャフト・キルンによるものであるが、レポール二号の新設当初、一時的に粉じんを放出したことが加わり、問題化したものである。
 現在ではレポール二号による粉じんの放出はなくなり、シャフト・キルンによる煙害防止についても集じん装置を早急にとりつけるべく、目下技術的検討を加えており、早々に着工に入る予定である。
 なお、地元被害については東北開発株式会社において、日下円満解決が行なわれるよう努力している。

七、(1) 地域開発の拠点である新産業部市等について必要な工業用地等の計画的な配置造成を推進して、思惑的な地価高騰に対処するよう指導するとともに、地方公共団体の用地取得造成に対する起債措置、公共用地取得の効率化、宅地取得に関する先買制度等諸般の措置を通じて総合的な地価対策を実施してゆく方針である。

(2) 地方公共団体が低開発地域工業開発地区、産炭地振興地域または新産業都市の区域内に企業を誘致した場合は、一定の条件に応じて不動産取得税、固定資産税について税の減免を認めており、これに伴う地方公共団体の減収額については一定の基準により地方交付税の算定を通じて補てん措置を講じている。

(3) 電力料金は、電気事業の健全な発達と需用家の利益を確保するため、契約種別ごとの原価に基づき、公平に算定することとなつているので、地域開発のためとくに政策料金を設定することは困難であると考える。