質問主意書

第40回国会(常会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質四〇第二号
  昭和三十七年三月十三日

内閣総理大臣 池田 勇人      


       参議院議長 松野 鶴平 殿

参議院議員東隆君提出北海道拓殖銀行の樺太引揚げ預金者に対する預金払戻し回避に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員東隆君提出北海道拓殖銀行の樺太引揚げ預金者に対する預金払戻し回避に関する再質問に対する答弁書

一、連合国最高司令部からの覚書「金融取引ノ統制ニ関スル件」は単に外国為替取引の面だけでなく、金銀等の取引、日本在住者の在外財産又は外国居住者の国内財産の取引、その他日本国外との間の資金の移動を禁止する趣旨のものであつて、日本国内に居住する引揚者の外地所在金融機関に対する預金は同覚書によつてその払戻しを制限されたものと解すべきである。
 また、預金の便宜代払制度は、銀行等資金運用令(国家総動員法に基づく勅令)に基づく大蔵大臣の命令により実施したのであるが、上述の覚書によつて、引揚者の外地預金を内地所在金融機関が代払することは許されなくなつたので、同覚書を実施するための措置として、日本銀行をしてその取扱を停止せしめたのである。

二、昭和二十年大蔵省令第八八号による外地預金の支払制限が、昭和二十五年一月二十五日から、北海道拓殖銀行について一部免除されたのは一般金融機関の将来における在外債務の支払措置を見越して、特に樺太引揚者の要請に応えたものと思われるが、本措置は同年六月三十日外国為替管理法の全面施行に伴つて、失効し、占領下の特殊事情等からその延長のための法的措置を採ることができなかつたので、そのまま廃止となつた。

三、北海道拓殖銀行が樺太関係預金の支払を停止したのは閉鎖機関に対する措置によつたものでなく、昭和二十年九月二十二日付連合国最高司令部の覚書「金融取引ノ統制ニ関スル件」に基づきとられた行政措置ならびに昭和二十年十月十五日「金、銀、有価証券等ノ輸出入等ニ関スル金融取引ノ取締等ニ関スル省令」(大蔵省令第八八号)によつたものである。

四、在外関係の早期処理については、政府としても種々努力したが、何分関係諸国との外交関係も正常化されていないので、日本政府のみで処理し得る情勢になく、実現は困難であつた。
 しかしながら、引揚者との関係については引揚者の情況等を考慮し、何らかの措置をとる必要が認められた等の事情により昭和二十八年に在外財産問題調査会を内閣に設置して検討せしめ、その答申に則つて、所要の法律改正を行ない、金融機関の在外資産、負債の処理を進めて、引揚者の預金払戻しを行なつた次第である。

五、北海道拓殖銀行樺太所在支店の預金についてはその帳簿書類が日本にないので、御質問の預金も不詳である。
 終戦直前の七月末の科目別預金残高については、本店に報告があつたが、これによれば総預金残高は二億一千七百万円であり、そのうち「日銀代理店預り金勘定」(国庫金)は百二十三万二千円であつた。