質問主意書

第40回国会(常会)

質問主意書


質問第一号

中央卸売市場法改正に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十七年二月十二日

北村 暢      


       参議院議長 松野 鶴平 殿



   中央卸売市場法改正に関する質問主意書

 中央卸売市場法の立法趣旨は、自然発生的な在来の生鮮食料品卸売市場を整備統合し、その施設の近代化と機構を合理化して流通の円滑を期し、公正明朗な取引方法による適正価格の形成を第一義とし、その投機的人為操作を排除し、市場の健全経営を推進し、もつて生産、消費両層の福利増進を期するにあるは論をまたないところであるが、現実の市場の実態は左に記述するごとく遺憾ながら、この立法趣旨にはなはだしく相反する様相を露呈している。
 すなわち小数巨大水産会社は、市場の卸売人の直営あるいはこれを系列化して、自社品の優先有利な販売態勢を強く推進して市場の独占支配の傾向はますます顕著である。その一例をここにあげれば、大洋漁業株式会社は東京に大都魚類株式会社、名古屋に大東魚類株式会社、京都に大京魚類株式会社、大阪に大阪魚市場株式会社、神戸に神港魚類株式会社、福岡に福岡中央魚市場株式会社、鹿児島に大洋水産株式会社、仙台に仙都魚類株式会社、札幌に高橋水産株式会社等全国十九都市中央卸売市場中、実に九都市に直営あるいはその系列卸売人を持ち、なおかつ全国地方卸売市場卸売人多数をその傘下におさめている。かくのごとき状況下において果して不偏不党の公正なセリ売が期待できるかどうか、中央卸売市場が営利追及の具に供せられていると断ぜざるを得ない。従つて一般生産者は不利な条件下の取引を余儀なくされて、公正なるべきセリ原則ははなはだしく歪曲され、市場の生命ともいうべき公正価格の形成機能は麻痺しつつある。
 沿岸漁民の窮乏が漁場の遠洋化、漁業の機械化に伴うその巨大資本性あるいはまた干拓、埋立、工場汚水等による魚資源の枯渇に加えて、かくのごとく流通段階における巨大資本の水産会社による圧力によつても相当影響されている事態について、政府の善処を強く要請してやまない。
 政府は過去数度にわたり中央卸売市場法の改正をしたが、いづれも枝葉末節の面についてのみで、市場法の根本精神に照応して本来の公益性を具現せしめるような有効適切な基本対策が忘却されていることは遺憾至極である。
 政府は次の各項について明確な所信を表明されたい。

一、政府は中央卸売市場の公共性にかんがみて、巨大水産会社の中央卸売市場(地方市場についても同じ)の独占私有化の傾向について対策を講じる意志ありや。

二、現行卸売人の株式会社制度に対しその資本構成を規制してこれを特殊法人化し、単にその株式取得のみによる卸売人の経営主体の移動防止方について検討すべきではないか。

三、水産加工品の急速な増大にもかかわらず、現行市場制度が障害となりせつかくの市場施設の利用度がこれに伴わない市場の現実にかんがみて、政府はこの際、加工品、定価品については、仲買人にも門戸を開放して、その直扱いの方途を講じることが、現時点においてまた、将来に対しても適切な措置であると思うがどうか。(勿論卸売人の取扱は現行のまま)

四、政府は、かの市場調査会の答申の主意を尊重して卸売人に対する課税特別措置を講じてその健全経営を助長し資本蓄積を促進して、市場信用の高度化をはかり、もつて生産者の負託に対して遺憾なからしめるよう配慮すべきではないか。