質問主意書

第38回国会(常会)

質問主意書


質問第一号

北海道拓殖銀行の樺太引揚げ預金者に対する預金払戻し回避に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十六年五月十八日

東 隆      


       参議院議長 松野 鶴平 殿



   北海道拓殖銀行の樺太引揚げ預金者に対する預金払戻し回避に関する質問主意書

 昭和二十年八月十五日の終戦以来、樺太在住者の引き揚げが行なわれたが、この際北海道拓殖銀行在樺太各支店等に預金していた引揚者が、本邦内の同行本、支店において預金の払い戻しを請求したが、同行は正当な理由もないのに、これを回避若しくは拒否して引き揚げ預金者の生活を極度に困窮化せしめていることは銀行経営及び金融政策上極めて遺憾である。

一、終戦直後連合国最高司令官より北海道拓殖銀行は在外資産閉鎖機関として指定されていなかつたのであるから、預金の払い戻しには応じなければならないのであつて、これの回避や拒否を講ずることは不当であり、社会正義に反するものである。

二、北海道拓殖銀行は本件について、昭和二十年九月二十七日付蔵外為第一五一号大蔵省外資局長名による外国為替取引停止に関する通牒に基づき、昭和二十年十月二日以後正当性をもつとしているが、本通牒は外国為替業務について、その時の事情からして不安であるから一応予測により通牒したものと思われるが、閉鎖機関でない北海道拓殖銀行と樺太からの一般引揚げ預金者との関係は、外国為替業務に準ずるものとは解釈されないのである。

三、前記通牒は本件に適用解釈されないものであるが、北海道拓殖銀行がその間一時的に誤解釈をしたにしても、この通牒には、さしあたり一千円の範囲内で支払うことを認めているが、これすらの払い戻しをも回避あるいは拒否をしたことは引揚者のため極めて遺憾であり、善良なる債務管理とは微塵をも認められないのである。

四、また、かりに昭和二十年十月二日以後それが正当性をもつとしても、終戦直後よりその間の払い戻し請求には応じなければならなかつたはずであるが、これにも応じてはいない。従つて前記同様善良なる債務管理に反するばかりでなく、自己の利益のため債権者の犠牲を強要したとすら解釈されるのである。本件の如き場合の資産閉鎖が合法的と見られるのは、昭和二十一年八月十五日公布法律第六号金融機関経理応急措置法による新、旧勘定の設定に伴う以外はないはずである。

五、本件に関連して去る三月二十七日の参議院予算委員会第四分科会の席上、本議員が大蔵省銀行局長石野信一君に質したところ、昭和二十年七月末日における北海道拓殖銀行の預金債務は約二億一千七百二十九万円で、昭和二十九年以後の支払額が二億六百五十三万円との説明があつた。しかるにこの支払額については、北海道拓殖銀行が特定の団体、会社、個人等に対し、不当な金品の贈与をなしているとの疑いが持たれ、経理の公開を要求する声が近時とみに増大して来ているが、監督官庁等をして精密なる検査を行なわしめ、結果を公表すべきである。
 以上を総じて北海道拓殖銀行は、銀行法第二十三条に違反の疑いがあると思われるので右の諸点につき十分調査の上回答されたい。