質問主意書

第34回国会(常会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質三四第三号
  昭和三十五年五月十日

内閣総理大臣 岸 信介      


       参議院議長 松野 鶴平 殿

参議院議員加瀬完君提出小学校社会科六学年指導要領に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加瀬完君提出小学校社会科六学年指導要領に関する質問に対する答弁書

第一

1 この目標1は、「正しいか正しくないか」ではなく、現実に、日本国民の生活に対して密接不可分の関係をもつ現代の政治の理念とその組織の大すじを客観的に理解させようとするものである。
2 わが国の歴史に現われた各時代の特色を理解させるということは、その時代の特色が、正しいとか正しくないとかいうこととは別箇の問題と考える。
3 この目標3は、たとえば交通、通信、報道機関の異常な発達、その他各種の条件のため、国際社会の諸関係が非常に緊密化した今日では、わが国もとうてい世界から孤立しては存在しえなくなつていることに気づかせる、という趣旨であつて、日清、日露の戦争についての指導とは関係がない。
 なお、日清、日露の戦争については、内容(8)の記述で明らかなように、日本の近代史の歩みの中で欠くことのできない重要な歴史的事実として扱うように考えているのであり、日清、日露戦争の正当性を強調するとか、不当性を強調するとかいうような立場はとつていない。
 また、帝国主義云々の問題は、当時の歴史的諸条件をじゆうぶん解明したうえで論ぜらるべき問題であり、小学校の段階では児童の能力からみて取り扱うべき内容ではない。
4 六年の歴史学習は、日本の歴史を中心に行なうようになつているが、これは児童の発達段階や中学校までが義務教育である点などを考慮してのことである。しかし、独善的、排他的な歴史教育に陥るような教材のとりあげ方はしていない。

第二

1 小学校では、児童の発達段階からみて、日本国憲法の根本精神や要点を理解させるように考えたものであり、説明が簡単すぎるとは考えない。
2 日本国憲法の根本精神や要点を理解させるものであつて、御指摘のようなおそれは生じないと考える。
3 奈良・平安時代の都の文化が、大陸文化の影響を受けて花咲き、朝廷や貴族によつて日本独特の文化として発展したことが、この時代の大きな特色であり、これを理解させることが重要であると考える。
4 日清、日露の戦争とか、対韓、対支の関係については、わが国の近代史の歩みの中で欠くことのできない歴史的事実として扱うように考えているのであり、そのことの正当性を強調するとか、不当性を強調するというような立場はとつていない。
5 御質問の趣旨を明確にしにくいが、目標3の趣旨については一の3にお答えしたところである。
6 内容(11)は、原子力時代といわれる今日、われわれは世界の平和についてどう考えねばならないかという問題を取り上げたものであつて、一の3で述べた日清、日露戦争の取り扱いは歴史的事実の説明であつて、両者矛盾するものではない。
7 平明に取り扱うということは、憲法の根本精神や要点を平易なことばでわかりやすく指導されたいということである。決して粗略な指導でよいという意味ではない。