質問主意書

第34回国会(常会)

質問主意書


質問第三号

小学校社会科六学年指導要領に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十五年四月三十日

加瀬 完      


       参議院議長 松野 鶴平 殿



   小学校社会科六学年指導要領に関する質問主意書

一、指導の目標について

1 目標1の示す「今日の政治の基本的なしくみや考え方」が正しいという立場をとられるのか。
2 目標2の示す「わが国の政治のしかたや国民生活の時代の特色を具体的に理解させる」とは、時代の特色を無条件に正しいものとして是認させることではないと思うがどうか。
3 目標3の示す「わが国が世界の国々から孤立しては存在できないことに気づかせる」ためには、日清、日露の戦争の正当性のみを強調してよろしいか。
 日本の帝国主義に対する反省は全然取り扱われなくてよいか。
4 目標4の「世界の平和や人類の福祉に貢献しなければならないわが国の立場について考えさせる」とのことであるが、このためには、自民族や自分の国のみの行動や考え方を強調し、是認する態度が、まず反省さるべきであると思うが、教材のとりあげ方がそうなつていないではないか。

二、指導の内容について

1 日本国憲法の精神について「国家の理想、天皇の地位、国民としての権利義務」とされているが、説明が簡単すぎはしないか。
2 こういう材料のとり方では、社会科の目的としている「自他の人格の尊重、民主的社会人としての考え方を深める」ための反省材が少なくなり、自国が万邦無比の国柄的な考え方におち入る怖れが生ずるではないか。
3 都の文化は何を基盤にして花咲いたか。田舎はなぜ非文化的環境を余儀なくされていたか。これらの問題に少しもふれなくてよいのか。
4 日清、日露、対韓、対支外交等は、もつと反省の面をとりあげるべきではないか。
 時代史の正しい認識というが、正しいかもしれぬが、これまた逆の反面しかみていないことになりはしないか。
5 対中国、対ソ連等の古い時代における国際関係についての記述も、新しい善隣友好を示す「目標3」を無考慮に記載することはさけるべきではないか。
6 「内容11」の示すところと、日清日露の評価とにはくいちがいがあるのではないか。
7 憲法の取扱いを平明にするということは、説明を簡略にするということではないはずである。しかし、事実は、平明ということで扱い方が粗略にされてはいないか。