質問主意書

第26回国会(常会)

答弁書


答弁書第一二号

内閣参質第一二号
  昭和三十二年五月七日

内閣総理大臣 岸 信介      


       参議院議長 松野 鶴平 殿

参議院議員鈴木一君提出八丈島中ノ郷における強制土地買収に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員鈴木一君提出八丈島中ノ郷における強制土地買収に関する再質問に対する答弁書

一、質問二及び三について

 既に、この問題については、前回の質問主意書に対する答弁書においても明らかにしたととろでありますが、零細な耕地を補うため本件土地その他切替畑及び山林が薪炭林等として利用されていることは御指摘のとおりであります。しかしながら、このような形態自体が農家経営上合理的なものであるとは考えられませんので、これを開拓し、優艮な農地とするため、本件の買収が行われたわけであつて、同地域の農家経営の安定に資する所大きいものと考えております。したがつて、薪炭林、採草地、桑園等として切替畑、山林等がどの程度保有されるべきかということを一般的に申すべきものではないと考えます。
 なお、前回にお答えいたしましたとおり、未墾地買収は、農地法第三章第一節の諸規定にしたがい、自作農を創設し、また経営を安定させ、もつて公共の福祉を増進させるため開発して農地とすることが適当な土地等に対して、国土資源の利用に関する総合的見地から行われるべきものでありますから、この諸規定自体憲法上の問題は生じませんが、既存の自作農家の経営を破壊してまで買収を行うことは農地法の規定にも違反することとなりますので、御指摘の関係農民の提起に係る訴願書は、現在東京都において買収処分庁である東京都知事の弁明書を準備中であり、まだ農林大臣においてこれを審議するに至つておりませんが、この訴願の裁決に当つて慎重に検討いたしたい所存であります。

二、質問四及び五について

 買収された土地の傾斜度、土質、気象条件等及びこれに対する被買収者の農業経営上の依存度については、東京都においてたびたび現地に係員を派遣して実態調査を行つた上で本件の買収処分が行われたものであつて、法令に違反する点はないものとして買収したものと思料いたしますが、その結果についてはいずれ農林大臣の訴願の裁決に際して、更に検討を加えたいと考えております。

三、質問六及び七について

 地区開拓計画は、買収した土地を売り渡すために土地配分計画の基礎として樹立されるものでありますが、前記の訴願が提起中でもあり、目下検討中ではありますが、まだたてられるに至つておりません。
 しかし、現在のところ、企画の概要としては、入植者一五戸、その耕地とすべきもの一戸当り平均約一町歩その他をあわせて約一町六反を予定して、おおむねその地方において専業農家として成り立つよう配慮し、また地元の増反者七〇戸を予定し、それぞれその農業経営を安定しうる程度の面積を配分してその平均がおよそ七反歩となるよう予定いたしております。
 いずれにしても、このようにして従来の切替畑による粗放的農業を切り替え、道路等の施設を設けてこれを熟地とし、もつて農業を現在より高度な段階に進めたいと考える次第であります。

四、質問八について

 隣接部落の末吉においても、昭和二十五年三月及び同二十六年三月に旧自作農創設特別措置法の規定によつて未墾地を買収し、同二十七年三月及び同年七月にこれを農民に売り渡したのでありますが、同地域は、自然的条件においても気温が低く、立木が密性する等本件の買収地に劣る上、当初別の計画による都道の完成を見込んで酪農を導入したところ、農産物の唯一の搬出路である都道の完成が遅れているため、現在必ずしも良好な成績を挙げえない状態にありますが、本件の地域にあつては、地区のほぼ中央を都道が貫通しており、立地条件も良好であると考えられますので、必ず所期の成果を挙げうるものと信ずる次第であります。

五、質問一について

 この問題については、前回お答えいたしましたとおりでありまして、更に右に述べたところを御参考になれば御了解いただけるものと考えますので、重ねてここに申し述べることは省略いたします。